31.聖女ちゃん勉強がんばる
「え〜…以上で説明は終わる。以降はプリントを完成させたものは提出し次第終わりでいい。長い時間ご苦労様」
午前は各学年、そして午後は一年から三年が合同だった経済学は終わりが見えてきて、ホッと息を……吐けない!!!
「ニャタリー、教えてやろうか?」
「ナタリーさん、どこで詰まったんですか?」
「………ナタリー……頭を…抱えて…大丈夫か?」
なんっっで三原色トリオがいるの!!?
「い、意外でしたわ。先輩方なぜここに?」
ついでに言うなら他の赤点の3人は『家庭の事情』とやらでお休みらしい。祭り行ったなコンチクショウ!
「ニャタリーは知らんのか?経済学は三年は初日の一限目だったんだがなぁ、朝登校中に魔物が出て俺たちは遅刻して受けられなかったんだ」
やれやれと腕を組んで言う王子様に「大丈夫だったんですか!?」思わず慌てて聞けば頭をポンポンと撫でられる。
「心配ありがとうな。たまたまこの3人で居たところで現れたからな。まぁなんとか問題はなく倒せたさ」
「そうですか…」
知らなかったと、ついホッとすればイーサック先輩がフランツ先輩の手を退けて声をかけられる。
「ナタリーは…大丈夫か?」
「えっと……あっ!怪我ですか!?見ての通りもう大丈夫です。御礼も言わずにすみません!有難うございました」
「……いや、いい」
御礼を告げれば言葉少なく返されたそれに軽く頷いて、
「ニャタリー、一応…俺も王太子なんでな?一度くらい顔くらい見たらどうだ?」
「よぉっし!終わりでぇっす!!!」
さり気なく最初から顔を見上がる事はなく、必死でプリントを完成させていたわたしは両手で拳を作り上にあげると即座に机の上を片付けながら、
「今日だけ大目に見て下さい!フランツ王子の心の広さは存じておりますので!」
笑顔で言えば、「仕方ないな」とちょっぴり照れたドヤ顔の笑みを返される。チョロいなこの王子!国の行く末が心配だわ。
「皆様も早く終わらせてお祭りに……」
そこまで言ってこの国の重要な人達がおいそれと街には降りられないのだと気が付いて…
「えっと、すみません」
「何がだ?」
「…いえ。なんでも…、ではわたしは用がありますのでこれで!!」
荷物を纏めて先生の元へと走り出し、彼らには彼らの苦悩があるのだと、行けないからこそあんなにもゆっくりと会話をしていたのだと…………、わたし、辺境地区の住人で良かった!!!!と心から思うと、スッパリと切り替えて満面の笑みで先生にプリントを提出すると、寮に帰って大急ぎで着替えてお祭りへと急いだ。
*****
「お!ニャタリー!」
ズシャァァァァァ
顔面スライディングして転べば、笑うフランツ王子と、手を伸ばしてくれるブルーノさんと困った顔をしたイーサック先輩。
「ドウシテココニ??」
祭り会場のど真ん中の噴水広場。
ダリアンか、なんだったらアルフに会えたらいいなぁとウキウキやって来たところでの三原色トリオ。
「俺たち午前に再テストをやって終わってたんだ。一年は欠席が多いくニャタリーだけだと聞いて、怪我の具合でも聞きに行っただけでな」
「お気遣いありがとうございます…ところで皆様のようなお方が町に出ては驚かれるのでは?」
なんとか気分を立て直し聞けば「いや城下町を見て回るのも公務の一環だ」なんて笑われてしまう。
…立派な事言ってるようだけど、フランクフルトと綿菓子とお好み焼きを両手に持って、口元にソースをつけてしっかり満喫してらっしゃる。
「そうですか…それではわたくしはこれで」
「ニャタリーは祭りは初めてか?」
「えぇ、ですから早く回りたくて」
ニッコリと笑って向きを変えればいつの間にか開けた手でガッシリと肩を組まれ、満面の笑みで顔を覗かれると、
「よぉし!!なら今度はニャタリーを俺様達が案内してやろう!!!いいな?ブルーノ、イーサック!」
「はい。貴方が意見を聞いてくれるとは思いませんし」
「……べつに構わない…」
同意しなくていいし、わたしの意見は!!?
そんな涙目と心の叫びは誰にも届かなかった。




