22.聖女ちゃん切り替える
「お父様!少し早いけどわたくし学園に帰りますね!」
「よし!とても寂しいがお友達も待ってるだろう!そうするといい!」
妙にトウドに優しいブルーノ様が怖くて、なにより弟が変な巻き込まれ方をされるのも嫌だし、ついでにお父様と何より田舎町のメイドたちでは、王子を筆頭のこの三人へ無礼がないかと、息のし方すら忘れそうな我が屋敷のことを鑑みて言えば、ガッツリ両親も乗ってくれた。いや、早く連れて帰れの本心だろうなぁ。
そしてそれを改めて王子たちの元へ行き告げれば、
「なんだニャタリーもう帰るのか?まだ休みはあるだろう」
「…学園で…怖い…思いした…。もう少し休むと…いい」
昨日来た割には我が家のティールームで如くゆっくり寛ぐ2人に『わたしだってそうしたい!』と叫びたいがそうは行かずに、
「あんなことがありましたので…同室の子も心配ですし、寮も壊れたなら移動しなきゃいけませんもの…」
「寮ならもう直ってるはずだぞ。魔導師らを派遣しておいたからな」
造作魔法なんぞ高度なことさせるくらいなら、この三人の誰が残って指示するなり、あの魔物をなんとかしといてよっ!…なんていうのはなんとかわたしの心にしまって置いて…、
「流石のお仕事の速さですわ!………ん?ところでシャルティエ様にはこちらに来られることをお伝えして来られたのですわよね?」
「わざわざ言う必要があるか」
今更ながらに聞けば、当然の様な返しは勘弁してもらいたいものだった。
「ありますわよね!?婚約者で御座いましょう!?」
「シャルティエとはまだ結婚をしたわけでもなし、この俺を縛ることは出来ん」
わたしが今すぐ縛り上げてレッドウルフの餌にしてやろうか!!
「ゴホンッ……、女の子は大切な方には小さなことでも教えて貰いたいものですわ」
内心の言葉はなんとか抑え、精一杯のぶりっ子で伝えれば王子が何か言いたげな顔を向けられて一応ヒロイン美少女のお願いくらい聞いてくれと都合のいいことを思えば、
「そっか、先に帰るんだね」
そんな小鳥の囀りすら上回る素敵な声が聞こえて来て勢いよく振り向く。
「アルフ!!」
「フランツ王子、イーサック様、この様な田舎町へとお越し頂き感謝いたします。ご挨拶が遅れ申し訳御座いません。フォレスター家と共に領土を治めております、キャンベル家嫡男アルフと申します」
お腹に手を当てて美しくお辞儀をするアルフに内心ではキャーキャーと騒ぎながらも、隣でスカートを摘み共にお辞儀をする。
「おお、アルフか。前にニャタリーと共に話したやつだな。成る程、ニャタリーとはそんな繋がりが」
「はい。今はまだ幼いですが弟のトウド殿と共に将来この地域を守っていきたいと思います」
さり気に振られた!?いいのよ!?トウドよりこのわたしと一緒に守りたいと言ってくれても。
「そうか。ここの地形は面白いな。また来た時は二人の両親とも防衛について話したいものだ」
「光栄の至りでございます」
深々とお辞儀を共にするが、さり気なく『また来た時』って言ったよ!?来なくていいのよ!?王様になる人は美人の婚約者を横にして、王城で堂々としていてちょうだい!!
そんな内心の動揺やら葛藤やらを見抜かれたのか、隣のアルフは頭を下げたまま横目で『黙って』と眼で言ってくる。いや、ちゃんと黙ってます。幼馴染が察しやすくて困ってます。
「頭を上げろ。ニャタリーが帰ると言うからな、俺たちもいつまでも居ても仕方がない。おい、ブルーノ帰るぞ」
いつの間にか扉の外にトウドに案内されてたブルーノ様が立っていた。いや、朝から10歳児に案内させないで頂戴よ。
「そうですね、私は長居させて頂きましたし…」
「ブルーノ様…帰るのですね…」
ぶりっ子したわたしより天然可愛いトウドに、みんなが目を奪われた気がしたので、大きく手をパンと鳴らして、
「来て頂いて有難う御座いましたですわ!では学園に向かう準備をしますので…ふふ、レディーは支度が掛かりますので…トウド、手伝ってくれる?」
「うん!姉様!」
ニコッと笑う弟の手を引いて、改めて扉の前でカーテシーをして部屋へと向かった。




