21.聖女ちゃんとこへ集まる
「おはようございます、ブルーノ様」
「あぁおはようございます…トウドさん」
支度が終わり外を散歩されていたブルーノさんの元へ向かっての挨拶は、あれだけ注意したにも関わらず瞳を細めて可愛く笑うトウドを「失礼します」と、ブルーノ様の前から引っ張り遠ざけ注意する。
「ちょっとトウド!あれだけ男らしくと…」
「男らしくない?」
「むしろどのあたりがよ」
「……アルフ兄様の真似したんだけど…」
「男らしいわ」
わたしは完全同意と力一杯頷く。
「だってぼくには姉様の真似は難しいし…」
「なぜそこでわたしの名前が出るのかしら?」
「騎士団で一番かっこいいし。なら…頑張ってみようかな…『足りないのは努力と根性よ!手に入れたいなら死に物狂いで頑張りなさいっ!』……みたいな?」
「あ・ごめん。寄せちゃダメ。そっちに寄せたら更にダメなやつでしたわ…!うん、寄せるならアルフね!嫌なものは嫌、知らないものは知らないとハッキリ言うのよ?」
弟のわたしのイメージが見えれば、それは本物の仮面の聖女が言いそうな事で、隠したわたしのイメージがバレてしまいそうで慌ててアルフに置き換えてもらう。
「よくわからないけど、わかったよ。がんばるね?」
無垢な瞳のガッツポーズはあの傷跡が見えて、思わずその手を握る。
「傷跡…残ってるわね」
「姉様が気にする事ないよ。僕が勝手に落ちたんだ」
治せなかったことも、わたしが崖から下を覗き込んでたら、共に来ていたトウドが真似して落ちて、しかも聖女だとその時自覚したのに、未来を見て7割しか治さなかった……のは、色々わたしが悪かったと思える。
「骨折してたみたいだったのに翌日には痛みも引いて大した事なかったのだし、姉様が気にする必要ないよ。大丈夫。僕は女神様に見守られてるんだ!」
可愛い笑顔に苦笑いを返せば、もっと可愛い笑顔を返された。
「なんの……話だ?」
「いえ、大したことでは……」
振り向けばそこにはイーサック様。…の、ついでに向こうでブルーノ様と話してるのはフランツ王子!!!
「ぬっ、ぬわんで御二方までこちらに…!!?」
「…これは……聖女…か?」
わたしの質問を無視して翠髪のブルーノさんはトウドを見つめる。
「聖女では御座いませんわ!男です。れっきとした我が家の跡継ぎ、トウド・フォレスターですわ!!」
自分の一歩後ろに下げて紹介すれば、
「……そうか」
そう言ってあっという間に興味が削がれたのか、明後日の方向を見られた。
「おおニャタリー!元気だったか?怪我をしたと聞いたが大丈夫か?」
「いえ…いや、いいえ、大丈夫です。健康だけが取り柄でして…」
楽しそうに現れた、なぜこんなところに一国の王子がいらっしゃるのかとか、もうそーゆーのもなんでもアリな世界なのだと頭を痛める。
「ブルーノがわざわざニャタリーを送ったと言うからな!面白そうだから追ってみたが…いやぁ、見事な田舎だな!!」
「お褒めに預かり光栄です」
楽しそうに笑われて、なんだかイメージと違うなと思えば、
「こんな田舎で兵力も無さそうなのに国防を担うとは…この村の秘密はなんだ?」
そう言って探る様に目を細められた。
「秘密も何もございません。王家もご存知の通りの地の利でございます」
スカートを摘みいえば、なんだか面白く無さげに口の片方の端を上げて笑う。
「ところで、それは聖女か?」
「ですから違います!」
「そうか。たしかになんか小柄だしなぁ。俺は聖女対面したからこんなに小さくなかった事を知っているぞ!」
そう言って何故かドヤ顔でブルーノ様とイーサック様に視線を向ければ、2人はなんだかイラッとした顔をしたようだった。
うん。ちなみにわたしもおんなじ顔してたと思うのは気が付かれなかったと思いたい。
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