20.聖女ちゃん守る!
「おはよう姉様」
「おはよ…トウド」
早起きして大急ぎで着替えて弟の部屋へと行けば、扉を開けて出て来た……なんだか可愛いフリルのついたワンピース型の寝巻きを着た実弟の姿にある意味クラリとする。
「トウド…その格好は?」
「ん?この寝巻きのことかな?この前に母様が準備してくれました。あ、大丈夫、ちゃんと下にズボンも穿いてるし…」
「あのね、捲らなくていいか…」
「おはようございます」
後ろからの声にトウドを部屋に蹴り入れそのままわたしも中へと入り、鍵を掛ける。
「おはようございますブルーノ様。わたくし達姉弟共々まだお見せできる状態では御座いませんわ。…それにしても朝早くから、こちらはプライベートエリアですわよ?」
ウフフと笑って時間を稼ぎつつ、蹴り入れた為に腰を打ち付け転んだトウドに早く着替えろと視線を送る。ちょっと不満そうな顔をしながらも、衣装部屋へと向かったのにホッと息を吐いた。
「息子さんに用だと言えば、お父様が場所を教えて下さいました」
「男同士ですものねぇ〜、そうですかぁ〜………クソ親父………ゴホンッ、あ〜でも弟もまだ着替え中でして、少々お待ち下さいますか?寝巻きのままではブルーノ様に失礼になってしまいますわぁ」
てゆーか朝早すぎない!?まだモーニングも食卓に並ぶ前よ!?まさかと思うけど本当にトウドを聖女と思ってる?!
………10歳のトウドでは変なことはしないとは思ったけれど念の為早起きして先回り出来て良かった!
でもどこからどうなってわたしが聖女だとバレるか分かったものではない。
鍵は掛けてあるけど念の為両手で抑えて扉は開かない様にしていると、衣裳室が開いた音がして振り向けば……たしかにズボンは履いてるけど、妙にフリフリの付いた可愛い弟。
『リテイク!似合うけど、もっと雄々しい格好して来なさい!』
必死で口パクで伝えれば、
『そんなの騎士団の服くらいしかない!』
そんな絶望的な言葉が返って来た。
「そういえばナタリーさんはトウドさんと髪色が違うのですね。もしかしてどちらか染めてらっしゃるとか?」
「いいえ、わたくしは父に似たらしく、弟は母に似ただけですわ。両親共にお会いいたしましたでしょう?」
初日から歓迎の意味で両親が揃い、父は『まさかブルーノ様はナタリーを嫁に…!?』とかあり得ない勘違いしたのを蹴り飛ばせば、お母様は『やはりナタリーが学園統一とかしようとして監視なのでは…!?』と、青くなっていた。その後に呟く言葉がいやにリアルで詳しく聞いたら若かりし頃のお父様がやりかけて、蹴り飛ばして止めたのがお母様らしい。この親ありてわたし有り……。
『姉様これでいい?』
昨日と同じ少しブカっとした騎士服に妥協をして頷けば、嬉しそうに笑う顔はまるで聖女…に見えちゃ駄目なのよ!!!
『トウド!お願いだから今日だけでいいからピシッとして。貴方が思う男の子!!ってイメージで宜しく!!』
『なんかわからないけど分かったよ!任せて!』
騎士の服装をして胸に手を当てて、珍しくも引き締まった顔でそう言った弟を信じることにした。




