2.聖女ちゃん偽装する!
入学式当日、用意された制服は紫色の襟の大きなセーラー服に赤いリボン。襟とスカートに入った2本の白いラインも可愛くて、最後に襟へ学園の校章を付けてから思わず鏡の前でくるくると回ってしまった。
そんな制服へと袖を通して、ふわふわと広がる腰まである長い髪をそのままに、私は会場前でこれから提出物と魔力判定を行い中へと入る。
その際に判定石を触り、眩しいほどに光り輝くことで私の聖女は確定をするのだが…、
「はい。風魔法ね。入学おめでとう。怪我は大丈夫?」
「はい、大丈夫です!ありがとうございます♡」
判定石に触れる時にふれる右手は包帯を巻き、その中に小さな魔石を入れておき、そこを当てて偽装は完璧。
教師であろう真っ直ぐな茶色の髪をした女性に、風魔法に丸をされて、思わず弾む足を抑えていれば見知った顔を見付けて思わず笑顔で駆け寄る。
「アルフ!!」
「ナタリー。…良かった、やっぱり知らない場所で友達が居るって安心するね」
「友達…っ!」
可愛い笑顔で言われた言葉がグサリと胸に刺さりながらも、ニッコリと負けじと笑顔を返す。
耳にかからない程度に切り揃えられた黒に近いほど濃い青みのある髪と瞳に158cmのわたしとあまり変わらない身長。そしてなにより16歳にしては少し可愛い過ぎやしませんか!!?そう思えるほどの可愛く尊いスーパー可愛いクリッとしたお目目の幼馴染の笑顔を向けられ続けて、私のHPは減少と回復を繰り返した。…ちなみに可愛いを3回入れたのはめっちゃ大切な事だからです。
そして男の子の制服は紫のベストにスラックス。中は白いワイシャツに赤いタイが似合い過ぎるぅぅ!!好きっっ!!!
そんな可愛すぎるアルフは領地を共に収める伯爵家の長男だ。
同じ領地を相談しながら発展させてきた仲良し伯爵家族。
不思議な関係だが、もう10代に渡り平和に仲良く過ごしている。領民達も今では二人の領主が居ることで、留守も無く、侵略等の時も協力しアイデア満載で守り続けられて、日々平和に過ごしている。
そんで9つの頃、お父様達が言ったよね。
「今代は折角同い年の子供が居るんだ。アルフとナタリーを結婚させたら両家の絆がより深まるんじゃないか」と。
淡い恋心、いや既に濃い恋心を抱いていた私は喜んで頷こうとした瞬間、
「いやぁそれはちょっと…」
苦笑いで返す同じく9つのアルフの言葉に〝ビシッッッ〟と、長年続いた両家の絆にヒビが入る音が聞こえた気がしたけれど、流石はお父様。なんとか堪えてアルフに問うた。
「アルフ、うちのナタリーに不満が?まぁ、多少はお転婆だが…」
「いえいえ!ナタリーは可愛いです!!でも僕は取り柄もないし…ナタリーみたいな素敵な子にはきっともっと素敵な人が現れて、僕なんて忘れられてしまうでしょう?」
困った様に頭を掻くアルフに、お父様はご満悦の様で「そうかそうか」と、楽しそうに笑いを返すと、
「そうかお前達は15になったら王都へと学びに出るしな!そこで互いに見染めた相手が居なかったら卒業後に2人の祝言を挙げよう。どうだ?!」
アルフはやっぱり困った様に笑って「はい」と、妥協したようだった。
で・今、改めて「友達」と言われた。しかーーし、それでも諦めきれない乙女心!!!前世のゲームの知識はあっても、前世を生きた記憶はほぼ無い私にとって、これは初恋。そしてこの魔のドS集団に巻き込まれそうな今の心のオアシス。アルフに嫌われたら生きていけない。むしろアルフに死なれたなら、それこそ生きていけない!!
「痛…イタタタタタタ…」
「ナタリーどうしたの??」
「緊張してお腹痛くなってきちゃった…、ちょっとお水貰ってくるね」
「ナタリーが!?道端の毒のある果物食べても平気だったのに!?」
えぇ、「美味しいよ」ってオススメしてアルフを三日三晩苦しめた過去は心から詫びているので忘れて欲しい。
「私だって女の子だもの。緊張くらいするわよ」
「そっか…ごめんね…騎士団の練習に飛び入りして強面の団長さんに怒られても全く懲りないナタリーがそんな事くらいでお腹痛めると思わなくて…ついていこうか?」
「…だ、大丈夫よ。一人で行ける…」
本当に胃が痛くなりそうになりながらも引き攣る笑顔で告げると、
「そっか、トイレなら僕ついていけないか…いってらっしゃい。出してスッキリしたら大丈夫かな?気をつけてね」
「お、お薬飲むだけだもの!!」
好きな男の子に言われる言葉では無いと、涙を浮かべて言えば、「わかったよ。内緒だね」なんて、ニコニコと手を振られた。
それはレディに対する扱いじゃない気がするよぉぉぉぉぉぉ!!?
7話までは毎日更新!
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