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18.聖女ちゃん心で嘆く



「ナタリー…何故こちらのお方が?」

「わたしも…遠慮したのですが……」



我が家のエントランスでは青い顔のお父様とゲンナリと力尽きそうなわたし。

そしてその背後には未来の宰相様と言われていらっしゃるブルーノ様が御座せられる。



「お気になさらないで下さい。勇気あるお嬢様をお送りしただけです」



17か18歳とは思えない大人びた笑みで言われてわたし達親子の頬が引き攣る。



そう、あれは丸一日前のこと………





*****





「ナタリー駄目だっっ!!!」

「大丈夫!!!」




アルフへと言うと駆け出して女子寮に着けば寮の一階の窓を破る闇のバッタ。


しかしこの素のままで戦って見られる訳に行かないと、足を止めれば、破られた窓の中から恐怖に慄く女生徒が見える。



「逃げて!!」


わたしの声に我に帰ったのか我に帰った顔をして扉へ向かって駆け出すのが見えて、ホッと…一瞬とはいえ油断をしたのが不味かった。


気が付いた時には日が当たっていたはずのわたしの身の周りは暗くなり、見上げた時にはバッタが迫っていてなんとか横へと飛んで直撃は交わすものの肉体強化の間に合って居ない身体にバッタの強靭な脚が迫り、そのまま吹っ飛ばされて先程の女生徒が逃げた部屋の外壁へと吹っ飛ばされた。


背中を壁に強く打ち「カハァッ」と…多分吐血をしたのだろう。意識が朦朧として記憶が途絶えそうになった時、青い髪の人が魔力の弾をバッタに撃ち込んだのが見えた…気が……し…た……。








「ナタリー!ナタリー!!」

「…クレー…プ?」


聞き慣れた声に返事を返せば、目に涙を溜めたクレープがわたしを見下ろしている。



「良かったぁ〜クレープが…無事だったぁ〜…。わたし達の部屋の近くだったから…」

「成る程…だから貴女はそんな無茶を…」



ふと聞こえたその声に我に帰れば、自室ではなくここは入学式にお世話になった治療室。




「すみませ…んんんんんっ!!?」


肋骨でも折れているのか起きあがろうとすれば、激痛が走って、思わずそのまま後ろへ倒れて…、何故か肩口からスゥッと風が入る。


恐る恐るシーツを捲れば…、


「/&#/&→☆$€°○・×*!?」



声にならない声は仕方のないことで、胸の下着一枚で、あとは包帯を巻かれている。



「ナタリー落ち着いて?治療されただけよ」

「そうよね!うん、ごめん…っ」


深呼吸をして落ち着いて、とりあえずブルーノ先輩へ「助けて頂き有難う御座いました」そう横になったまま告げると、


「いいえ。気にしないでください。………何故か最近弱体化した様で僕でも追い払うことが出来ただけなので」



後半の悔しげに言うそれは独り言の様だが、つまりそれはこの前無理してでも聖杯を満たしたのが良い影響を与えたのだとホッとした。




「良かった。ナタリーさん、目が覚めましたか?」



カーテンが開き現れたのは、お久しぶりのユノ先生。白髪白衣に紫の瞳で柔らかく笑う姿はお美しい。



「先生…度々すみません…」

「大丈夫、私はこれがお仕事だからね。でも、気をつけるんだよ?女の子が怪我して、それこそ傷でも残ったら大変だ」

「…はい」


みんなが居なければ、聖魔法でチャチャーっと直してアルフの馬車を追いかけるのに…! …ん?アルフの馬車!?


「クレープ!私どのくらい寝てた!?」

「寝てた…っていうか、意識失ったのは半日くらいよ」



その半日は、確実に馬車に追い付けないことを物語って居て涙が浮かぶ。



「わたし…バッタ嫌いっ!!」

「わかります。私も虫は嫌いなので…」



深く頷く爬虫類好きの先生の同意は要らなくて、とにかくアルフとの馬車ラヴ帰省旅(途中の町で宿で一泊のドキラヴイベント希望)は、無くなったことは事実なのだと、しょんぼりと布団を被る。



「帰省予定でしたか?いくつか落ちていた荷物は学園に運んであるので…」

「早く帰って……お父様の顔を見たかっただけです」


そして一発入れたかっただけです。は、伏せておこう。



「成る程。ならば明日、ウチの馬車で送りましょう」

「いえ!結構です」


慌てて顔を出して言えば、



「その怪我では乗り合い馬車は辛いでしょう。貴女の勇気に感服したので、せめてそれくらいはさせて頂こう。では明日の9時に学園の前に馬車を送ります」

「いや、もうホントにいいです!!沢山食べてぐっすり眠ればあっと言う前に治っちゃいますから!!」



必死に告げればブルーノ様はイメージと違い可笑しそうにクスクスと笑って、



「骨にヒビが入っているのですよ?そんな事で治るなら、治療師も聖魔法使いもいりませんね」



そう言って扉を開けて楽しそうに去って行った。



「…え?聖魔法って骨をくっつけられないの?」

「そうですね。私は治療師と同等止血は出来ますが、骨折になると骨を構成するのは…大聖堂の長…くらいでしょうか?」

「な…成る程?」

「ですので、今回はブルーノ君に甘えてみてはいかがでしょうか?彼の家の早馬なら、直接行けば1日と掛からないと思いますよ」



9つの頃のミートミートポークを追い掛けた父に残された山で、死に物狂いで身に付けた骨折をくっつけるあの聖魔法は、そんなにも高度なものだったのだと知る。そして思い返しても「いやぁ!無事で良かった!流石俺の子だ!!」と、悪びれもせずに言ってた親父を殴りたい。何より帰って自然の中のアルフに会いたい。


ブルーノ様に頼るのは嫌だけれど、アルフの荷物も預かってる手前、早めに着くに越した事はないと頷けば「なら伝えておきますね」と、優しい顔でユノ先生は笑った。





*****



で・今。



「いやぁ〜こんな辺鄙なところまでわざわざ宰相様の息子殿に来て頂けるとは!うちの娘の為にわざわざすみません」

「いや、わたしは馬車だけかと思って…」

「僕が来てはいけませんでしたか?」


冷や汗と笑顔を浮かべて父娘で言えば、笑みなのにヒヤリとする声を返され、



「「いいえ滅相もございません!」」



王家付きの公爵家の息子様に、辺鄙な場所の伯爵家が何か不敬を買うわけにもいかず、親子で笑顔で大歓迎の振りをする。




……でも頼むから早く帰っておくれ〜!!!





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― 新着の感想 ―
[一言] ニャタリーは隙が多いねぇ、軽く小指でチョイ出来るくらい強くならないと いつまでも三原色に絡まれるぞ
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