17.聖女ちゃんの騙されてた事を知る
「アルフ!」
「あっ、ナタリーもこの馬車だったんだね」
学園を通ってくれる予約制の乗り合い馬車へと向かえば、同じ様に大荷物を持ったアルフを見つけて隣へ並ぶ。
まだ学園を出る前なので互いに制服だが見慣れたものだと
「なんだかさ、たった一ヵ月離れただけなのに、久々だよね」
「え!?わたしと離れてたの、そんな寂しかった!?」
「いや、里帰りの話。そしてクラス一緒だし。離れてはないよね?寧ろ家にいた時より視線を…いや、なんでもない」
何を言いかけたのかな?と思いながら「わかる〜」なんて可愛く頷き返す。
入学式からひと月。里帰り用に作られた一週間の休暇は早過ぎるとは思うけれど、いつも至れり尽くせりだったのに、学園へと来て色々と自分でやらなければいけなくなった貴族の皆さんが一旦リセットする為に必要な休暇らしい。
「わたしたちは比較的自分達でやってきていたんだなぁって学園に来て知ったわ」
「そうだね。お互いの両親が支え合って来たからね。執事やメイドに頼るのは最低限だったからね」
「『領地を持つ人間が、朝起きれないなんぞはもってのほかだ!!朝起きた直後に軽快に攻撃が避けられる程度ならなきゃならない!』って朝からお父様の攻撃避けなくていいのは寧ろ寮に感謝よね!」
ニッコリと笑って言えば、アルフがドン引きした顔をして、
「うん。うちはそんな事してないけどね。一声掛けてメイドが起こしてくれる」
「…え!!?」
「いや…僕の方がびっくりしてる。ナタリーのお父様そんなことするの」
「アルフもやってるからって」
「……一度もした事ないな…」
「……とりあえず帰ったらお父様と一戦交えるわ」
「ナタリーのお父様…騎士団長と同等の…いや、まぁいいや。頑張って!」
「一発は入れてくるわね」
頑張るっと笑顔で言えば、そうだね…と遠い目された気がする。
それもこれもお父様のせいだ!!!と心に炎が灯る。今度ばかりは肉体強化魔法使ってやろうかしら!!!?
そんな事を思いつつ馬車が見えて、これから丸々一日以上アルフと共に馬車に乗れる喜びに頬が緩んだとき、
どぉごおぉぉぉ
おおおぉおぉぉんっっ!!!
黒いモヤと共に女子寮の方で爆発が起きた!?
嘶く馬を御者が宥めて止まれば、慌てて待っていたみんなが乗り込んで行く。
アルフもその勢いに飲まれて荷物を置いたまま中へと乗せられ…
「ナタリー君もっ!!」
「友達のクレープが心配なの!!!アルフは先に行って!荷物、後から持って行ってあげるから!!」
「ばかっ!そんなの…」
人が乗り込み御者さんも慌てて出発しようと馬に鞭を入れる。
「ナタリー駄目だっっ!!!」
「大丈夫!!!」
そう言って馬車に背を向けて寮へとわたしは走り出した。
区切りもあり短くてすみません!次回はまたいつもの量に戻ります。