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10.聖女ちゃん+−計算する



「ナタリーさん、謝ってきた?」

「謝ってきました」


教室へ帰って早々のアルフの問いに思わず敬語で返せば「そっか」と柔らかく笑って頷いてくれる。



「ナタリーさん緊張してる風だったのよ。わかるわ〜、だって先生ったら本当に綺麗だったものね」

「それはダリアンさんでしょ?」

「えへへ、バレた?」



貴族らしくないダリアンはなんだか親しみが持てて、思わず微笑みあって帰りの準備をする。



「ナタリーさん、ダリアンさんさようなら」

「あ、アルフさん待っててくれて有難う」

「いいよ、気にしないでね。謝れたならよかったよ」



優しく微笑んでくれるアルフに小さく手を振り見送れば、ダリアンが「私たちも帰ろう」と同じ寮へと誘ってくれた。



「ねぇねぇ知ってる?男子寮と女子寮の間に壁があるでしょ?でもどこかに抜け道があって、その先に四阿があってね、恋人達の…」

「大丈夫!!絶対行かないから!!!」

「いや…ロマンチックな話かと思って言ったんだけど…」


言われてそう言う意味だったのかと、思わず慌てて両手をバタバタと上下に振りつつ、



「確かに!ロマンティックよね!!どこから行くのかなぁ〜」


むしろ私にとってはイベントが起こる場所だと思い出し、行きたくないから聞きたいと思いながら視線を向ければなんだか半目をこちらを向けられて、


「奥の…森の方らしいけど、詳しくは恋人の居る人同士で口頭でこっそり伝わるらしくて、わからないのよ。それにナタリーは行く相手居ないでしょう?」

「いるかもしれないじゃない!?」

「アルフさんはただの幼馴染でしょ?」

「……うん」



幼馴染の言葉にグサリとささるが、顔には出さない様に頷いて答えれば、



「やっぱりナタリーの片想い?」

「……わかりやすい?」

「う〜ん。わかりやすいわね」



まだ学園に来てまだ数日なのに、2人に言われては本当にわかりやすいのだろう。



「でもなんか2人よそよそしく無い?」

「……実はね、学園で幼馴染です。仲良しです。なんてやってたらお互いに新しい友好関係の人を見つけ難くなってしまうでしょ?だから2人なら砕けて喋るけど、クラスとかでは少しだけ…ね。内緒よ?」

「なるほどね。領地もあるし学生のうちに色々と接点を作りたい…って感じかな?ナタリーも色々考えてるのね」



言われて頷きつつもちょっとだけ笑顔が固まる。


当然このご意見はアルフの意見です。



『ナタリーは人の顔とか覚えなさすぎる。学生のウチにちゃんと僕とは別の交友関係を作って、キチンとするんだよ?この先弟のトウドが領地を継ぐにしたって、姉がしっかりしてるに越した事はないんだからね』



幼い頃に思い出した記憶のために体を鍛えることや反射神経を育てることに必死で、地元の子供達を教える中等部学園では同級生との交流よりも、午前の授業が終わり次第、お家でご飯を食べて騎士団に行くか、裏山で魔力の修行に励んでいた為、友達という友達はアルフと近所の幼馴染のみ。


アルフの言う事はごもっとも過ぎて頷いたが、クレープにしろダリアンさんにしろ、年頃の女の子と話すのはやっぱりなんだか楽しくて顔が綻ぶ。


「でもナタリー、前に王子様と話してたじゃない?『やっぱり長身美形カッコいいなーー』とかならなかった?」

「ならないわ!!それにわたしは赤髪は苦手で…、子供の頃山でレッドウルフに襲われて以来、赤いものに拒否反応が……」



慌てて言うとダリアンが真っ青な顔で固まった事と後ろからのオーラを感じて言葉尻を慌てて変える。



「それに王子様にはあんなに美人でスタイルもいいシャルティエ先輩もいるじゃない!?あーーーんなにお似合いのお嬢様、他にいらっしゃらないわよ。わたしなんかが憧れの一つも持ったら失礼に値するくらい、シャルティエ様は素敵じゃない!!」



「まぁナタリー、そんなに褒めて頂きありがたいわ」



想像通りのその声に、いま気がつきました〜張りに振り向いて、



「シャルティエ様!いらっしゃらないところでお噂してしまい申し訳ございません!」

「ふふふ、気にしなくていいわ。わたくしナタリーのことは気に入っておりますもの。…でもね」



笑う様に細めた目が薄らと開きながら、その背には何故か黒いオーラが立ち上がり、



「あのお方を魔獣のレッドウルフと比べるのは些か感心致しませんわ」

「も、申し訳ございません!!」


ペコリと頭を下げれば、

「まぁ、聞かなかったことにして差し上げるわ」

と、また笑って取り巻きと共に去っていった。




「……怖かった…」

「ごめんねナタリー。わたし変なこと言ったから…」

「でも、王子の件はマイナスだけど、シャルティエ様を褒めてたし…私、プラマイゼロじゃない?」



ダリアンはもう見えなくなったシャルティエ様の方に視線を向けて…



「あの雰囲気だと、王子様をレッドウルフで−10、シャルティエ様の褒めで+9ってとこじゃない?」

「それは俗にいうマイナスなのでは??」

「ドンマイ!!」



きやすい会話に苦笑いを浮かべれば、ダリアンも笑ってくれて…そのままなんとなく2人で笑いながら寮へと帰った。





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― 新着の感想 ―
[良い点] ダリアンさん、なかなかシビアな採点w ナタリー、計算早い! [一言] うわぁ、あっぶなっ! 黒ひ◯危機一髪みたいになるとこですわ!
[一言] やっぱり赤青緑の三原色はお邪魔虫として聖女ちゃんに塩対応されるんだろうか
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