考え中
―500年前、異世界転生者にして最悪の魔王が誕生した。
その名を暴食ノ魔王。名前の通り何もかも食べ尽くしては物足りずまた食べ、食べたものを糧に力を増してはどんどん増幅し大きくなり軈ては国一つの大きさまで成長し続けた。
その場の生命体がなくなったら無機物までをも食べ始める。だがどんなに食べても嚙んでも裂いても咀嚼しても腹が満たされることは一生無い、常に餓死状態で苦しみ続け暴れては無数の触手を伸ばしては生命体を見つけ次第、黒紫色の大きな口を開いては一瞬で飲み込み長々とゆっくりと咀嚼をしては飲み込み、次の生命体を捕食しに行くのだった。
世界の人口がもの凄い速度で減少し、もう終わりが訪れると人々は思ったが急に止まったのだ。
先ほどまで生命体と無機物を食べ続けていた触手は、止まって暫くすると黒い霧となり突如姿を消したのだ。
人々は何が起こったのか分からないまま茫然と立ち尽くしたら、急に全身に刺さるような寒気を感じ始め不意に上を向いた瞬間、白くて冷たい何かが降って来たのだ。
白くて冷たい何かと言うと雪だ。この世界ではそもそも雪が降ることがない環境と言っていいほど気温が常に高いので人々は初めて見るものにただ驚いていた。
火事で熱くなっていた町や村や国は直ぐに冷え次に人々は温もりを求め始め家族とは関係ない人と抱き着き合い、互いの熱を分け与えながらも涙を流しあい安心しあったのだ。
多少互いの体が温もったら直ぐに復刻作業に取り組み、絶望の日から半年ほどかけて一部づつだが動き出した。
―10年後に、セルフォーラム帝国の北の方角に大きい活火山があるのだがそこは常に40度近く熱い場所だったのに山全体、あの白い雪に包まれていて山の上空には大きい風穴が空いていたのだ。
セルフォーラム帝国から派遣された探索部隊が中に入り、奥へ進むと驚愕の光景が眼前にあった。
10年前の絶望を引き起こした張本人、異世界転生者でありこの世に終焉をもたらした最悪の人物、暴食ノ魔王と世界の平和の為に戦い続けた男で英雄にして歴代の英雄達よりも一番貢献したことにより英雄の頂点に立った者として英雄王の称号を与えられた男、英雄王ホレストが向かい合っている状態でともに凍っていたのだった。
探索部隊の殆どがその光景に見とれていたのだ。
何故なら、二人とも綺麗な状態で凍っていたのと英雄王ホレストの心臓部から生えている透明のクリスタル内部に碧く光る球体から白い煙が出ていたのだ。探索部隊が連れてきていた犬の一匹が暴食ノ魔王に襲いかかった瞬間、一瞬で凍り地面に着いたその瞬間木っ端みじんに砕け散ったのだ。