3 Hちゃん
「やってしまった……っ!」
罰ゲームがあった日の放課後、思い立ったが吉日が如く、すぐに手紙を書いて下駄箱に投下していた。
もちろん告白するために、体育館裏への呼び出しだ。
放課後は一直線に帰ると聞いていたので、朝早くを指定した。
正直勢いでやってしまったので、今になってすごく恥ずかしくなっていた私は、顔が赤くなるのをごまかすために、ひたすらに走りまくった。
幸い私は陸上部。
走るのには事欠かない。
――でも、いきなり呼び出しはまずかったかな……あ、体育館裏って何かよくないイメージあるけど大丈夫かな……それにいくらなんでも朝早くは鹿島くんに迷惑だったかな……しかも時間書いてなかった気がする……ミスった……。
ともかく不安が頭をよぎるよぎる。
しかしやってしまったものは仕方ない。
覚悟を決めるしかない。
ということでまだまだ走ります。
大会での成績を期待されてるのもあるので言い訳は立つから走ります。
「――さん、櫻井さん!」
「ぅえあい!」
と、走る前に声をかけられてしまった。
「な、何でしょう!」
声をかけてきていたのは女子陸上部の部長。
その部長は妙に呆れた顔をしていた。
「何でしょう、じゃないわよ。何回声かけたと思ってるの? 今日は一段と集中力が高いのは分かったけど、もう少し周りに目を向けなさい?」
「は、はい」
どうやら何回も声をかけられていたらしい。
でも部長、違うのです。
集中なんてほとんどしてません。
周りに目を向けて無いどころか、周り(一人)にしか目を向けてませんでした。
「まあ最近スランプ気味だったみたいだから、それから脱却できてうれしいのは分かるけど、とにかくそろそろ上がりなさい。明日から朝練が始まるんだから」
「あ、わかりました」
確かに気を紛らわせるためにたくさん走った。
おかげで最近伸び悩んでたことも忘れていた。
これもある種、鹿島くんのお蔭だろうか。
とりあえずこのまま続けたら明日の朝練は大変だろう。
止めてくれた部長に感謝しなければ。
――………………?
「……朝練?」
――あれ、これ、朝練してたら、まにあわ……。
「ぶ、ぶちょーっ! 少し待ってもらっていいですか!!」
翌朝、私はかなり早起きをしていた。
部長には朝のうちに用事があることを伝え、少し早めに朝練を始めて、途中から他の部員と合流して、少し早めに朝練を抜けるということにしてもらった。
用事があるのであれば朝練は休んでもいいとは言われたけれども、なんとなく気が済まなかったので、朝練には参加した。
その分、かなりギリギリになってしまったけど。
「っはぁ……はぁ、はぁ……間に合った……鹿島くんは……まだ来てない、よかった……」
呼び出しておいて後から来るとは失礼すぎるので、どうしても先についておきたかった。
なので朝練を終えたままシャワーも浴びずに急いでここまで来た。
――告白が終わったらシャワーを浴びよう、うん。
「………………え、まって、私こんな汗だくで、化粧だってしてないのに、そのまま告白するの……?」
息を整えつつ冷静になると、今の私は告白をする人の格好じゃないのではないかと思い始めた。
今の私は、汗だくの体操着、朝練直後だからもちろんすっぴん、加えて急いで来過ぎて髪もボサボサ。
詰んだ。
「まってまだ何か手があるはず、どうしよ……そう、鞄の中を確かめるの。化粧品はロッカーだからないし………………ん、これなんだっけ……っこれは…………」
――よし、これでいこう。これしかない。




