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骸鬼王と、幸福の花嫁たち【第13部更新中!】  作者: 雨宮ソウスケ
第13部

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第三章 サバイバーズ①

「お館さま」


 とある城の謁見の間にて。

 白いドレス姿の、髪を下ろした金髪の美女がそう声を掛けてきた。

 その隣には、勝気そうな眼差しの栗色の髪の美女もいた。彼女は赤いドレスを纏っている。

 二人とも人ではない。金髪の美女は名付き我霊の一人、《屍山喰らい(デスイーター)》のエリーゼ。赤いドレスの美女は番い魔(バディ)と呼ばれる未知の存在へと変貌した元引導師(ボーダー)のルビィだ。

 二人とも玉座に座る彼――餓者髑髏の妻である。


「いよいよですわね」エリーゼは頬に片手を当てた。


「遂に三千神楽が始まりました。私としてはすぐにでもあの女と雌雄を決したいところではありますが……」


「ふふ。すまない(ソーリー)。エリー」


 玉座に座ったまま、餓者髑髏は謝罪する。


「まずは(ルール)の周知からだよ。でなければ公平(フェア)ではない」


 餓者髑髏は双眸を細める。


「これはUにしても、魂母前にしても同意見だよ。面白味が欠けるからね」


「お館さま!」


 そこでルビィが餓者髑髏の膝の上に飛び乗った。


「まず参入したばかりの引導師(ボーダー)どもに、この世界について知る時間を与えてやるというお考えは承知しています。けれど、ルビィは動いてもよいでしょうか?」


 ルビィは自分の胸元に片手を当てた。


「何故ならルビィは《覚醒者(ネクスト)》の一人なのですから」


「ああ。それは構わないさ」


 天を突く髭をさすりながら餓者髑髏は快諾する。


「エリーの役割は『救世主(メシア)』だったからダメだが、ルビィやジェイは《覚醒者(ネクスト)》だ。久遠君を筆頭に引導師(ボーダー)と戦うのはまだ許可できないが、彼らの相手ならOKさ」


 それに、と続けて笑みを浮かべる。


「ある程度は仕方がないこととはいえ、いささか吾輩たちの舞台に相応しくない者たちもいるようだ。彼らには少々仕置きも必要だろう」


 ルビィの頭を撫でつつ、そう告げる。ルビィは少女のような満面の笑みを見せた。


「承知いたしました!」


 そう告げて、餓者髑髏の膝の上から降りて優雅な一礼をする。


「お姉さま!」


 次いで、エリーゼの方を見やり、


「それではルビィはさらに舞台を整えて参ります!」


「ええ。任せたわ」


 少し苦笑を浮かべつつも、エリーゼはそう返した。

 ルビィはエリーゼにも一礼して、謁見の間を後にした。

 残されたのは魔性の夫婦だ。


「さて」餓者髑髏はあごに手をやった。


「この世界には久遠君もしばしの間は情報収集に専念することだろう。ただ、ルビィにはああ言ったが、もう一つ考えられる例外(イレギュラー)があるな。そう。もう一組の主演(メイン)とも呼べる彼らから動くケースだが……」


 そこで愉しげに笑みを零す。


「それもまた構わないか。予期できぬ事態も一興(ファンタスティック)。そういった真実のリアリティこそが物語(ストーリー)を輝かせるのだからな」



       ◆



 銀城虎之助とは何者なのか。

 彼を言い表すのならば『偏屈な技術者』だ。

 元々彼は小さな自動車の修理工場を経営していた。ほぼワンマンでだ。

 その腕前は素晴らしく、知る人ぞ知るといった名技術者だった。

 さらに彼は様々な分野の専門知識にも精通していた。茉莉たちの拠点であるタワーマンションの自家発電設備の改良、防衛システムなどを構築したのも彼の手腕だ。銀城はこのタワーマンションの管理者であり、技術開発班のリーダーだった。


(……少し遅れたな)


 銀城は白衣に手を突っ込みつつ、サンダルをぺたぺた鳴らして廊下を進む。

 目指す場所は最上階のミーティングルームだ。

 銀城の年齢は今年で六十二歳になる。やせた頬に白髪も目立つ。どこかネコの耳を思わせる奇妙な癖毛も特徴的だった。高齢であるため、背中はやや曲がっているが、足取りはしっかりとしている。老人というよりも、頑固おやじという印象の人物だ。

 銀城は最上階の部屋へと到着した。

 扉を開けると、そこには銀城の仲間たちが集まっていた。

 銀城の知識を以てしてもまだ解明しきれていない未知の装備。機甲脚装(メタルブーツ)を扱う者たちだ。全員で五十人ほど。戦闘班に所属する彼らは各々適当な場所に座っていた。リーダーである木崎圭吾の姿もあれば、最年少の岩倉茉莉の姿もあった。


「全員集まってるか?」


 銀城の問いかけに圭吾が「ああ」と頷いた。


「全員に声をかけた。あんたで最後だ。虎先生」


「待たせて悪かったな。ガキども」


 銀城は口角を上げてそう告げた。それから全員に目をやり、


「聞いてると思うが、今日のミーティングは俺が主催だ」


 そう告げた。


「……虎先生」


 戦闘班の一人。二十代半ばの青年が声を上げた。


「率直に聞くが、バッドニュースか?」


「バッドニュースでもあり、グッドニュースでもあるな」


 銀城はそう答えると、机の上にあったリモコンを取り、プロジェクターを起動させた。

 天井のプロジェクターから、広い壁に映像が映し出される。

 どうやら上空からの映像のようだ。


「自律型ドローンの映像だ」


 と、銀城が説明する。通信が使用不可となって二年。ドローンもまた操縦不能であるのだが、銀城はAIを積むことで独立した情報収集を可能にしていた。

 各ドローンの判断で撮影し、映像データを回収する。

 従って、この映像もドローン自身の判断で撮影したモノだった。

 そこには灰色の隊服のような服を着た青年が二人映っていた。全員が注目していると、その二人がいきなり走り出した。飛ぶような速さだ。人間に出せる速度ではない。


「……《覚醒者(ネクスト)》」


 茉莉が不快気に眉をしかめて呟いた。銀城が「ああ」と頷いた。


「初めて確認した野郎どもだが、この身体能力は間違いねえだろうな。だが、それ以上に気になんのは、こいつらが見たこともねえ隊服を着てるってことだ」


「『髑髏(どくろ)(じょう)』。『(はく)雷宮(らいきゅう)』。『鏖魔(おうま)御殿(ごてん)』でもない相手ということか」


 圭吾のその呟きに、銀城は「ああ」と再び頷く。


「現在確認できている三大勢力。それらに属さない徒党を組む《覚醒者(ネクスト)》ってことだな」


「おい。虎先生。それのどこがグッドだよ。最悪のバッドニュースじゃねえか」


 最初に尋ねた青年が渋面を浮かべた。


「そうだな。俺もそう思ったよ。だが、俺のお利口なドローンちゃんは素晴らしいモンも見つけてくれたのさ」


 銀城がそう返すと、映像は森の上空を移すようになった。

 眼下には森の中を進む二人の《覚醒者(ネクスト)》。

 そして、その先にあるのは――。


「……え?」「おいおい」


 ざわざわと広い室内が騒がしくなる。

 いきなり大きな街が映し出されたからだ。

 迎撃を警戒してか、ドローンは一定の距離を保ちながらその街を旋回した。

 円状の城壁のような建造物に囲われた都市だ。その内縁部は古都を彷彿させる整えられた街並みだった。中央には大きな堀に囲われた荘厳な武家屋敷の姿も確認できる。

 街には明かりも灯っており、戦闘の後も全くない。多くの人が歩く姿が確認できた。街中を平然と歩くなど、大崩壊後の世界においてはあり得ない光景だった。


「何よ、あれ……」


 茉莉が唖然として呟くと、銀城は「分からねえ」とかぶりを振った。


「あの場所にあんな街はなかったはずだ。《覚醒者(ネクスト)》の異能による建築と考えられるな」


「おいおい。こんな短期間であんな規模の街を造り出す異能があるっていうのかよ」


 戦闘班の一人が目を見開いた。


「《覚醒者(ネクスト)》は何でもありだからな。あり得ない話じゃない。そもそも二カ月前に現れた髑髏城も唐突だっただろ」


 圭吾が腕を組んで独白した。

 二カ月前、ビル群の間に突如現れ、今も鎮座する巨城には誰もが驚愕したものだ。

 全員が沈黙していると、銀城が口を開いた。


「これがグッドニュースだ」


 一拍おいて、


「どんな異能なのかは分からねえ。だが、建造物の防衛性。何より農業が可能な立地条件。それが素晴らしい。だからガキども。俺は提案するぞ」


 銀城は鋭く双眸を細めた。

 そして、淡々とした声でこう提案するのであった。


「奴らにただ奪われ続けるのはもう止めだ。今度は俺たちが奪う。そう、俺たちでこの街を丸ごと強奪してやんだよ」








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