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【第12部まで完結】骸鬼王と、幸福の花嫁たち  作者: 雨宮ソウスケ
第9部 『百年乙女―天照紅炎―』

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第二章 お妃バトルロイヤル2①

 ――正妃(ナンバーズ)

 それは数字を持つ妃たち。ホマレが何となく名付けた呼び名なのだが、いつの間にか近衛隊や強欲都市(グリード)に残る《久遠平原(クオンヘイム)》の中では定着しつつあった。

 西の魔都の覇者。強欲都市の王(グリード・キング)隷者(ドナー)たち。

 それが彼女たちなのである。


(ダーリンって大物だったなあ)


 と、ホマレは思う。

 現時点で『壱』から『漆』まで数えられる妃たちは今、少し遅れている一名を除いて全員この訓練場に集まっていた。

 意識してではないと思うが、三つのグループに分かれているように見える。

 ビーズクッションに騎乗しながら、その一人一人をホマレは改めて分析する。


(まずは一つ目のグループ)


 中央辺りに立つ壱妃。エルナ=フォスターからだ。

 右房のみ長いショートボブの銀髪に、宝石のように輝く紫色の瞳。

 その容姿通り彼女は日本人ではない。北欧系の血を引く少女だった。

 妃たちの(リーダー)ではあるが、年齢は非常に若く十五歳の少女である。

 ただし、


(……ぐぬぬ)


 そのプロポーションは実に年齢離れしていた。その上、スタイルがよく分かる学校指定とかいうラバー製の黒いボディースーツを纏っている。

 女の子が大好きなホマレとしては眼福でもあるが、やはり格差は感じてしまう。


(エルちゃんの性格はしっかりもの。何だかんだでダーリンに信頼されてるし、リーダーシップもある子。見る分には眼福だけど、やっぱりエルちゃんはホマレの大きな壁だなあ)


 少し嘆息しつつ、視線を次の妃に移す。

 弐妃・杜ノ宮かなたである。

 肩にかからない程度の黒い髪に、無表情の美麗な顔立ち。スタイルにおいてはエルナ相手でもそうは劣らない美しい少女だ。 

 エルナと同級生であるらしい彼女は、同じく学校指定の戦闘服(ボディースーツ)を着ていた。


(かなちゃんはエルちゃんのサポート役。性格はクールっ子。けど、淡々としているようでこの子が一番ダーリンに可愛がってもらっているような気がする。たぶん正妃(ナンバーズ)の中でも一、二を争うぐらいの甘え上手と見たね)


 女の子に関するホマレの眼力は凄かった。

 かなたが表面には決して出さない部分も見抜いていた。


(そんで次は刀歌ちゃん。桜華ちゃんのお弟子ちゃん)


 ホマレは、かなたの隣に立つ人物に目を向けた。

 参妃・御影刀歌。凛々しい双眸に、長い黒髪をポニーテールにした少女だ。

 エルナにも匹敵するスタイルの上には、やはり学校指定の戦闘服(ボディースーツ)を纏っている。


(やっぱり桜華ちゃんによく似てるなあ。本当に姉妹みたいだ)


 二人の年齢差は凄まじいのだが、ホマレでなくともそう思うだろう。


(グへへ、けど、この子もホマレの好みだしね。仲良くなれないかなあ。グへへ)


 と、じゅるりと口元から音を鳴らすホマレ。

 隣に立つ葵が「……ホマレさん?」と怪訝な顔を彼女に向けていた。


(ともあれ刀歌ちゃんは見た目通りサムライっ子だね。ただ、生粋の戦士タイプの桜華ちゃんとは違って、ちょっとワンコっぽいかな。この子も甘え上手と見た!)


 以上、ここまでがJKグループだ。


(さて。次は)


 涎をゴシゴシと拭いて、ホマレは気分を改める。

 ここからは派閥という訳ではないが、少し世代が変わる。

 肆妃たちである。

 まずは肆妃『月姫』・蓬莱月子。

 ふわりとした淡い金髪に、アイスブルーの瞳。温和な微笑みが印象的な彼女は、欧米の血を引く日本人とのハーフだ。その影響も著しいのか、中等部一年でありながら、スタイルはエルナたちに近いものがある。今は上下一体のスパッツの上に白いTシャツを着ていた。ダンスレッスン用のような私服の衣装だ。


「YES!」


 唐突にホマレは叫んだ。葵はもちろん、茜の方もビクっと肩を震わせた。


(月子ちゃんは性格も見た目も、もう完全な天使っ子だね! 凄くいい子だよ! 無茶くちゃ甘やかしたい!)


 と、素直に思う。

 ただこの天使っ子も可愛いだけではない。侮れない子なのだ。

 恐らく、かなた、刀歌に並ぶ、妃の中の三大甘え上手だとホマレは分析している。


(月子ちゃんも幼くても女だもんね。けど、幼いと言えば……)


 ホマレは視線を月子の隣に向けた。

 そこにいるのは月子の親友。支流のようにツインテールを作り、毛先に行くほどオレンジ色になる赤い髪を持つ少女だ。 

 月子と同じ衣装を纏った子で、年齢も同じく十二歳。

 ただし、圧倒的に美麗な顔つきはともかく、スタイルは年齢通りだ。 

 勝気そうなあの子は、今は月子と楽しそうに喋っている。

 肆妃『星姫』・火緋神燦である。


(燦ちゃんか……)


 ホマレは「ムムム」と呻いた。

 燦も極上レベルの美少女だ。女の子が大好きなホマレとしては嫌う理由はない。

 しかし、燦はホマレにとって厄介だった。


(おのれ真正ロリめ!)


 なにせ、自分とキャラが被っているのである。


(しかも燦ちゃんって小悪魔タイプだし! 天然でメスガキ属性持ってるし!)


 あの子は、きっと無茶くちゃダーリンに迷惑をかけているのだろう。

 そしていつの日かダーリンに分からさせ(・・・・・)られるのだ。


(ぬうう。まさに定番だよ。けど、しょせん真正は真正。モラルが凄く高いダーリンのことも考えればそれはまだまだ先のこと。合法たるホマレは違うのだよ)


 と、自分の優位性に慎ましい胸を張る。

 ――くしゅん。

 燦がくしゃみをした。

 この二人がJCグループだった。


(さて。残る正妃(ナンバーズ)は二人……)


 ホマレは最後のグループに視線を向けた。

 本当は残り三人だが、一人は遅刻しているようでまだ不在だ。なので残りは二人だ。


(……むむむ)


 一人は特に脅威だった。

 ホマレと属性が真逆の妃だからだ。

 年の頃は十九歳ほど。肩辺りまで伸ばした白銀の乱れ(ザンバラ)髪に、どこか眠たそうな琥珀色の瞳。ベルトが多数装着された黒い拘束衣の上に派手な着物を羽織っていた。

 今はしゃがんで隠れているが、そのプロポーションは圧倒的だ。おっぱいなど妃たちの中でも最も大きい。メロンかとツッコみたくなる。ホマレと全く逆の属性だった。

 陸妃・天堂院六炉である。


(ムロちゃん……燦ちゃんとこの火緋神家と並ぶ天堂院家の次女かあ……)


 まさに名家中の名家の娘だった。


(凄いね。ダーリンは。あの二家からそれぞれ直系のお嫁さんを取って来るなんて)


 普通はとても出来ない。

 強欲都市の王(グリード・キング)の名は伊達ではないということだ。


(ムロちゃんはおっとりした天然タイプだね。あのメロンは是非ともホマレも堪能してみたいよ。けど、ムロちゃんに限らず正妃(ナンバーズ)は、燦ちゃん以外は全員プロポーションがいいなあ。やっぱりダーリンは大きいのが好みかあ……)


 と、少し気落ちするが、ホマレは自分の頬を叩いて自身を奮い立たせた。

 不利なのは事実かも知れないが、今のホマレには野望があるのだ。


(――そう!)


 ホマレは最後の妃に目をやった。

 しゃがむ六炉の隣で両腕を組んで佇んでいる人物である。

 年の頃は十八ほど。肩までぐらいの黒髪を持つ凛々しく綺麗な女性だった。 

 身に纏うのは、ハイネックの黒い長袖Tシャツに、レディースの白いデニムパンツ。胸元には水晶の首飾りをかけていた。この家で暮らすようになってから彼女が好んで着る私服である。ホマレは土下座してまで「私服にはどうか再び中華服(チャイナドレス)を!」と真摯にお願いしたのだが、残念ながら聞き入れてはもらえなかった。

 とは言え、いかなる服を着ても、彼女の魅惑のスタイルは隠せない。


 ホマレの最推し。

 漆妃・久遠桜華である。


(桜華ちゃあああああん! 今日も綺麗だよおおォ!)


 と、内心で声援を贈る。

 ホマレは、彼女のためだけにこの場にいたと言っても過言ではない。

 個人的な思惑も多々あったが、彼女のために尽くしていたのだ。

 ただ、色々とありすぎて、今や目的が大きく変わってしまったが。


(けど、むしろこの変更は好都合だよ!)


 ホマレは新たな野望を抱く。


(グフフ。ホマレは絶対にランクアップするよ! そして桜華ちゃんと一緒に熱い夜を! 桜華ちゃん! 一緒にダーリンに愛されようね!)


 ホマレは、キラキラと瞳を輝かせてそんなことを思う。

 同時に、じゅるりと涎も垂らしていた。

 葵と茜が不気味がるように覗き込んでいることにも気付かない。

 いずれにせよ、これでホマレの分析は終わりだ。

 そうして、


「………?」


 桜華が眉をひそめる。


「? どうかしたの? 桜華?」


 あごを上げてそう尋ねる六炉に、


「……いや。何故か寒気が?」


 ぶるっと。

 身震いして小首を傾げる桜華だった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 二つのメロンでエクシーズ召喚!顕れろNo.
[一言] おっぱい星人の異名は欲しいままだな。
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