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生と罪  作者: 無射/ぶえき
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ランクⅦ

 白夜がパーティを組んでから、一年が経ったある日。白夜は鍛冶屋に来ていた。


「おう、あんちゃん。何の武器が欲しいんだい?」


 白夜がここに来たのは他でもない、武器を買うためだ。

 防具の方は受付嬢にすぐに装備しろと言われたため、早めに買っていた。しかし、そのせいで、武器をいつまでも購入できなかったのだ。

 しかも、せっかく買うのなら良い武器がいいなと思っていたせいで、武器を買うお金が貯まるまで、時間がかかってしまったのだった。


「何か扱いやすい剣はありますか?」

「扱いやすい剣ねぇ……」


 鍛冶屋は立派なあごひげをさすりながら、奥の方へと剣を探しに行った。

 その間に白夜は、飾ってある剣を軽く見渡す。

 やはりモンスターを相手にするため、並んでいる商品は、大きな剣が多い。中には、斧の様な物まであった。

 白夜は、その中の一つである長剣を手に取ってみた。持ち上げて軽く振ってみるが、なんとなくコレジャナイ感があったため、元の場所に戻しておいた。

 白夜は、今まで汎用性の高い片手剣を使っていたため、大きめの剣はあまり合わなくなっていた。その証拠に、店内のロマン溢れる武器の数々が、あまり手に馴染まなかった。

 白夜が、少しガッカリした雰囲気を出し始めた頃、鍛冶屋のおっちゃんが戻ってきた。


「ほら、こん中から手に合うのはあるか?」


 おっちゃんが持って来たのは、片手剣サイズの剣の入った木箱だった。おそらく、白夜の持っている剣を見て、小さめの物を持って来てくれたのだろう。

 その箱の中には、鋼のナイフから、白夜がいつも使っているような片手剣、短剣など、様々な物が入っていた。

 そして白夜は、その中の一つに目を付けた。


「これは?」

「ん? それはグラディウスだな」


 見た目は、少しの小さめの片手剣で、刀身が曲線を描いている。

 白夜は、一目見て思ってしまった。カッコいいな、と。

 こうなってしまったら止まらない。これは男のサガだ。白夜の中の、中学二年生的な部分が、チラチラと顔を出し始めた。

 実際、見慣れた片手剣の中に、ロマン武器の様な見た目の剣があったのだ。これは疼かずにはいられないだろう。


「特徴とかってあります?」

「先が尖ってるから突きの性能が悪くないってのと、普通の片手剣よりも斬れ味が良いってことだな」

「買います」


 即答だった。

 見た目はロマン、性能も良し。これで買わずして、何が男か。

 予備として、二つを金貨五十枚で買い、腰に装着した。心なしか、強くなった様な気がした。

 他にも、剥ぎ取り用のナイフや、サブウェポンの短剣を買ってから鍛冶屋を出ると、その足でギルドへ向かった。


「あ、白夜さん、武器ってどんなの買ったんすか?」


 鍛冶屋から出て来たところを恵理に話しかけられ、白夜は少し浮ついた気分で、恵理に近づいた。


「グラディウスってやつ買ったんだ。少し小さめの片手剣」


 白夜は腰から鞘ごと剣を取り、恵理に見せた。


「へぇ〜、名前かっこいいっすね〜」

「お? わかるか?」

「そりゃ、わかるっすよ〜。その滑らかな曲線、なんかくびれみたいでエロいっすね…… ふへへ」

「お、おう、そうだな」


 唐突にニヤケ顔で頬を赤く染めて、エロい方面に走っていく恵理。

 白夜は、剣にエロさを感じている恵理に若干引きつつ、剣を腰に戻した。


「お、白夜、もう買い終えたのか?」

「ああ、早速試し斬りをしてみたいところだ」


 受付嬢とクエストについて相談していた哲也は、白夜を見つけて一度戻ってきた。


「今日からランクⅦっすからね! 楽しみっすね!」

「色々あるが、白夜は何がいい?」

「受付嬢さんオススメのクエストとかないのか?」

「わからん」

「なら、聞いてみるっすよ!」


 恵理は受付嬢の所まで走って行った。


「リナさん! 何かオススメのクエストってないんすか!?」

「オススメですか? うーん……」


 受付嬢は、カウンターの下辺りの依頼書を手で探り、そのいくつかを恵理に見せた。


「竜種の卵の運搬、竜の谷のマンドラゴラの採取、商人の護衛って…… 討伐クエストはないんすか?」

「今は入ってきてないですね」


 ランクⅦともなると、かなり強力なモンスターの討伐クエストが貼られることもある。だが、それは稀なことだ。

 なぜなら、危険度Ⅶ以上のモンスターが毎日討伐されるくらいの数生息していたら、とうの昔に人間は滅んでいただろう、と言われるくらいに強いからである。

 よって、危険な場所にある採取クエストなどが、必然的に多くなるのだ。


「うーん、白夜さん、どうするっすか?」

「商人の護衛が一番報酬良いし、これでいいんじゃないか?」

「危険度Ⅶの護衛依頼なんて珍しいっすね」

「通る道の近くに、アフェモラマンティスの巣があるみたいですよ」


 リナは横から口を出して、理由を説明した。

 アフェモラマンティスとは、カマキリのような見た目に、カゲロウのような薄い羽が八枚ついているモンスターである。その羽で飛ぶこともできれば、硬質化させて相手を切り裂くこともできる。

 竜種ではなく節足動物であり、巨大な昆虫網の生物である。

 危険度はⅧだが、この依頼は討伐クエストではないため、ランクⅦのクエストとして扱われている。


「それじゃ、この護衛依頼、受けます」


 白夜は説明を聞いて、報酬金が良いことを再度確認し、クエストを受けた。


「分かりました。白夜さん、あくまで死なないように、気をつけて行ってきてくださいね!」

「はいはい、分かりましたよ」


 一年経った今でも、白夜はリナに心配されていた。

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