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生と罪  作者: 無射/ぶえき
22/33

二ブルに到着

 白夜は二ブルへと続く道を歩きながら、拓海と明日香との会話に付き合っていた。


「そういえば、白夜さんって日本人ですよね?」

「そうだ」

「ああ、やっぱり! 私達も日本人なんですよ!」

「ああ、名前でなんとなく分かった」


 この世界での一般的な名前は、日本人っぽい名前がほとんどないので、日本人の名前というのは、聞くとなんとなく分かるようになっている。


「こっちに来る前も、僕と明日香は友達だったので、僕と明日香は長い付き合いなんですよ。それなのに、僕の扱いが酷いと思いません?」


 拓海がぼやく。


「それはあんたの自業自得でしょうが」

「まあ、仲が良い証拠だと思うぞ」


 白夜と哲也と恵理も、恵理の扱いを見れば分かる通り、結構雑な感じになっていた。

 これは、長い間一緒にいないとできない、仲の良い証である。


「白夜さんって、ランクどれくらいなんですか? 私達は昨日話した通りランクⅢなんですけど」

「俺はランクⅨだ」

「「高っ!?」」

「ラ、ランクⅨって、日本人で他にいるんですか?」

「さあな。俺がなれるんだったら、他にもいるとは思うが」


 実際、白夜は日本人初のランクⅨだった。

 だが、それは別に、白夜が最強という訳ではない。

 二ブルには、ジ・アースという組織がある。この組織には、日本人が一万人も加入している訳で、団体の目的はモンスターの討伐ではない。

 つまり、白夜ほどモンスター討伐を定期的に行なっている日本人がいなかったため、実質的に、白夜が一番早くランクを上げていたのだ。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 その後、白夜達は特に危険な目に合うこともなく、二ブルへと到着した。


「白夜さーん! お元気でー!」

「コラ、拓海! そんな大声で叫ばないで! バカみたいでしょ!?」

「な!? またバカって言った!? そういう方がバカなんだぞ!」


 白夜は、最後まで元気だった二人に向かって、軽く手を振った。


「二人共元気でな」

「あ、はい! 白夜さんもお元気で!」

「…… 明日香だって大きな声で言ってるじゃないか……」


 白夜は二人に別れを告げると、ギルドの方へと向かって歩きだした。


「白夜さん、かっこよかったなぁ……」


 白夜と別れた明日香は、自分の頬を両手で支えて、惚けるように呟いた。


「明日香、まさか惚れたの?」


 拓海はそれを見て、呆れたような目をした。


「え!? あ、そうかも……」

「明日香には絶対合わないと思うよ、白夜さんは」


 拓海のその一言により、明日香は不機嫌になる。


「なんでよ?」

「だってあの人、一人でランクⅨになっている人だよ? 絶対にいつも危ない目に合ってるんだって。そんなの、明日香は耐えられる?」


 それを聞いて、明日香は想像を膨らませた。


「ああ…… ちょっと微妙かも……」

「ほらやっぱり」

「ぐぬぬ……なら強くなって、白夜さんも守れるようになればいいのよ! そうと決まれば拓海! 今日から頑張るわよ!」

「え、ええ!? 白夜さんを越すとか、絶対無理だって!?」

「無理とか言わない! ほら、早く!」

「うわっ、ちょ!? そんなに引っ張るなよ〜!!」


 こうして二人はまずは武器を揃えるため、武器屋へと向かったのだった。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


「依頼達成お疲れ様です、びゃ、白夜さん。そ、それで、その剣が作ってもらった物ですか?」


 リナは、白夜と目を合わせられず、噛み噛みになりながら迎えた。


「ああ、いい鍛冶屋がいたからな」


 白夜はそれを不思議に思ったが、特に反応することはなかった。


「へ、へぇ〜、よく作ってもらえましたね。ドワーフは人間嫌いで有名なのに」

「クエスト報酬の代わりってことで作らせた」

「ああ、なるほど。だから昨日、ドワーフが報酬金を回収しに来るっていう連絡が来てたんですね」

「そういうことだ」


 この時、リナは赤面していた。なぜかというと、先日に友達の受付嬢と話した、白夜対策が問題である。

 リナが自分の顔をパタパタと仰いでいると、流石に不審に思った白夜が疑問を口にした。


「熱でもあるのか?」

「い、いえ! 私は元気ですよ! あはは! た、ただ、ちょっと暑いな〜、なんて……」


 リナは、ギルドの制服の一番上のボタンを外した。


(こうすれば男の人は…… って、私のバカ! 一体何やってるの!? これじゃあまるで誘ってるみたいじゃない!?)


 リナの葛藤も虚しく、白夜は首を傾げた。


「?…… まあ、今日は晴れてるからな。風邪には気をつけろよ」

「あ、ハイ。アリガトウゴザイマス」

(ビャクヤさんが天然でよかったぁ〜…… って、それってよかったことなのかな? もしかして私、魅力ないんじゃ……)


 リナは一人で落ち込み始めた。

 赤面したり落ち込んだり、感情変化が激しく分かりやすかったが、白夜は特に気にすることはなく、次の依頼を探すため、掲示板のある場所に移動した。


「あれ? もしかして、白夜さんですか?」


 討伐クエストがなく、何をするか悩んでいると、突然後ろから、丁寧な口調で声をかけられた。

 白夜が、声の主を確認するために後ろを振り向くと、そこには長い黒髪を一つ結びにした少女が立っていた。


「……」


 白夜は、少女と目を合わせると、黙り込んでしまった。

 少女はそれを気にせず、目の前にいる少年が白夜だと確信して、笑顔になった。



「やっぱり! 私のこと覚えてますか?」

「………… 誰だ?」


 だが白夜は、少女が誰だか全く分かっていなかった。

 そんな白夜の様子を見て、自分が忘れられているショックを若干隠せずに、少女は自己紹介をした。


「あはは…… ええと、櫻井美鈴です。ほら、ボスラプトルの時の……」


 そう言われて、白夜は手を顎に当てて考え込む。


「…… ああ」

「思い出していただけましたか?」

「加入クエストの時の」

「そうです! 忘れられてるかもって、少しヒヤヒヤしましたよ」


 少女は、呆れたような笑みを浮かべた。


「すまん。見かけもしなかったからな」

「確かに、二人とも二ブルで働いているのに、全然会いませんでしたね。せっかくなので、お茶とかどうです?」

「別に構わんぞ」

「よかった。それならオススメのお店があるんです。行きましょう?」


 白夜は美鈴に連れられ、ギルドを後にした。

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