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生と罪  作者: 無射/ぶえき
17/33

人嫌いのドワーフたち

 白夜は三日かけて歩き、ムッチャ村の到着。入り口の門まで来ていた。


「誰だ貴様!」

「討伐者だ」

「何のために来た!」

「討伐依頼を達成しに来た」


 白夜は現在、ドワーフの門番トリオに絡まれている。

 ドワーフは人族が嫌いなのだ。そのため、身元の分からない人間を村の中に入れることは、決してない。


「証拠はあるのか!」

「ほら、これだ」


 白夜は、ポーチの中から受注書を取り出し、門番に見せた。

 門番はそれをチラッと確認すると、後ろにいた仲間に合図をして、「入れ」と言って、白夜を村の中に入れた。


「今からお前を村長の元へ連れて行く。変な真似はするなよ?」

「はいはい」


 ドワーフは茶色い皮膚に、小さい身長、肉付きのいい体をしている。

 白夜は何もするなと言われたので、適当にドワーフの観察をしながら歩いていた。

 道行くドワーフに白い目で見られたり、家の中から覗いていた子供に、「あんなもの見てはいけません!」と言うように、その子の母親がカーテンを閉めたりと、嫌われ方が尋常じゃないのだということを理解した。


「一体過去に何したらこうなるんだよ……」

「お前に答える気はない」


 挙句には、呟いた独り言にさえ毒を吐かれる始末であり、白夜は軽く肩をすくめた。

 木材で作られた、そこそこ良い家を何軒も通り抜け、村の中心部に来ると、一際大きな家があった。


「ここが村長の家だ。早く中に入れ」


 案内されたドワーフにそう言われたので、大人しく白夜は中に入った。

 家は中もほとんど木で造られていて、どこか日本の建築と似ているものがあった。それも普通の家ではなく、神社などの建物に近い。


「ほぅ、おぬしが依頼を引き受けた小僧か。人間どもに頼むのも怒りが湧いてくるというのに、よりにもよってこんな弱そうなのが来るとは、ギルドも末期よの」


 白夜を迎えたのは、ドワーフの中でも一際小柄な、皮肉ばかりを言ってそうな爺だった。


「……」

「どうした? 黙り込みおって? 反論する口もないか?」


 白夜は、面倒なジジィだと一瞬思ったが、すぐに気にしないようにした。なぜなら白夜は、目的を達成するためにここに来たからだ。


「モンスターはどこだ?」

「ふむ、そんなにモンスターと戦いたいかの?」


 ドワーフの村長は、皮肉を無視されてもまったく気にした様子もなく、膝まで伸びている顎髭に手を当てた。


「俺はそのためにここに来た。いや、もう一つあったな」

「そのもう一つとはなんじゃ?」

「職人のあんたらに武器を作って欲しい。アフェモラマンティスの羽でな」

「ふ、ふふふ、ふぉっふぉっふぉ! それは、我らドワーフが人間嫌いなのを知ってのセリフかの!?」


 白夜が二つ目の目的を口にすると、ドワーフの村長は腹を抱えて笑い始めた。


「そんなことはどうでもいい。モンスターを狩る代わりにやってもらうだけだ」

「それには報酬金を払うはずじゃが?」

「武器を作ってくれるのであれば、報酬金は必要ない」


 ドワーフの村長は、しばらく白夜の目を見つけていたが、やがて諦めたような一息ついた。


「はぁ…… おまえら、ここで一番の職人を呼んでくるのじゃ」

「「「「村長!?」」」」


 村長の周りにいた取り巻き四人は、まさか自分たちの村長が人間の言う事を聞くとは思っておらず、目を見開いた。


「こやつは絶対に折れんぞ。儂らが武器を作らなかったら、そのまま帰る気でいる」

「し、しかし……!」

「どうしようもないんじゃ。儂らがいくら強がっていても、この村が危険なのに変わりはないのじゃからな。まずは、村のことを考えるんじゃ。それに比べて武器の一つを作れなど、安いもんじゃい」


 白夜は、自分の考えを今の会話だけで理解した村長に、心の中で賞賛を送った。


「話が分かるようで助かる」

「ただし! これはモンスターを狩った後の話じゃ。やっぱり無理でしたなど通らんぞ」

「安心しろ。俺はランクⅨだ。並みのモンスターには負けん」

「ふ、やってみるがいいわ」

「言われなくてもそのつもりだ」


 村長の不敵な笑みを、白夜は軽く流した。

 その後、白夜は村長からブラットスパイダーのいる場所を聞き、日が暮れる前にその場所へ向かった。

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