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ある男の話
*この物語はフィクションです。
アイドルだった。
それなりに有名な、それなりにファンのついたアイドルだった。
別に一生それで食っていこうなんて思っていたわけじゃない。それなりに稼いでそれなりに幸せに引退する。
……はずだった。
「無実が証明された今! 伝えたいことはありますか!?」
「ファンの人に一言!」
「今の心境を!」
建物から出れば待ってましたとばかりに雪崩れ込んでくる人とカメラとマイク。
何時からだろう、人の顔が塗り潰された様に黒く見えるようになったのは。
何時からだろう、カメラが恐ろしくなったのは。
__何時から、何時から、何時から。
____死にたいと思うようになったのは。