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神隠しに遭ったら、異世界に居ました。  作者: 神無月夕
第十二章 竜騎士帝国ドラグネス
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第九十六話 ゲヘナホール探索/前編

 レイリィンはタニアの後ろにへばりついて、口頭で道案内をしていた。目的地は、魔動列車を隠している街外れの倉庫である。

 見た目が十四、五歳程度のレイリィンは、町娘の普段着と何ら変わらぬ安価な衣服に身を包んでいた。その外見からでは、とても【救国の五人】と呼ばれる英雄には思えないし、ましてやラクシャーサの影の支配者とも思えなかった。風格もなければ、威厳も感じない格好だ。もう少し着飾ればいいのに、と煌夜は思ったが、本人的には服装に頓着も興味もないらしい。


「――そういえば、レイリィンよ。念のために云うておくが、安易に獣化するでないぞ? 妾の許可がなければ、人化を解くのは禁止じゃ」

「え? どうしてさ? ボク、人化状態じゃ、戦闘力が低くなるから役立たずだよ?」

「嘘を吐くな。その状態でも、充分以上に闘えるじゃろぅ? まあ、どちらにしろ、汝は戦闘に参加することはないようにせよ」


 戦闘のドサクサで煌夜を危険に晒しかねない、と小さく続ける。その呟きを聞いたか聞いていないかは分からないが、そう、と残念そうにレイリィンが耳をペタンと下げていた。

 人化状態で弱化していると自己主張しているが、弱化していても恐らくディドに匹敵する程度には強いだろう。反抗さえされなければ、同行者としては心強い存在になる。


「にゃぁ、レイリィン。ほんとに、こっちに魔動列車があるにゃ?」

「あ、うん、安心してください、タニア様。このまま進んで行けば、ラクシャーサ守備隊専用の魔動列車があって、シールレーヌ行きの貨物便は待機させてるよ」


 振り返ったタニアに、レイリィンが力強く頷いた。タニアとマユミに対しては、レイリィンは敬意を払った喋り方をする。

 なんでもレイリィンの中では、王位継承権を放棄している放蕩娘のタニアの方が格上の存在であり、身分も上等であるらしい。ちなみに、次点が剣神会『雪』の号を持つ剣仙マユミで、レイリィンより格下の存在認定されているのが、煌夜とヤンフィであるようだ。


「そっちです」


 指差してタニアを誘導するレイリィンに、ヤンフィ、マユミは文句も言わず歩き続ける。

 今回、古の街シールレーヌに向かう為に、飛竜便ではなく魔動列車を使うことに決めていた。レイリィン曰く、その方が圧倒的に速いらしい。

 しかし、魔動列車の存在は秘匿されており、ラクシャーサの住民もシールレーヌの住民も誰もその存在を知らないそうだ。しかも、守備隊専用と言うだけあって、レイリィンの許可がなければ利用も出来ないとのことだ。

 そんな魔動列車だが、レイリィンはすぐに用意出来るとのことだったので、ヤンフィたちはそれを信じて秘匿された発着場に向かっている。

 

「……あ、人化、なさってらっしゃる……のですね――いえ、失礼いたしました。お待ちしておりました、レイリィン様、タニア様」


 外壁で覆われた巨大な倉庫のような建物の前で、バニーガール姿のウサミミ女性、レムランが深々とお辞儀をして迎えてくれた。レムランはレイリィンの姿を見た瞬間、眼を大きく見開いて仰天していたが、すぐさま頭を振って真顔になっていた。


「用意ありがとう。もう、出発出来る?」

「はい、すぐにでも――あ、それと一つご報告が」

「うん、何?」

「ええ、シールレーヌで活動している同胞からの情報ですが――」


 レムランがレイリィンの耳元で何やら囁いた。それを聞いて、ふーん、と興味なさそうに頷いていた。


「何ぞ、問題でもあったのかのぅ?」

「うん? 問題はないよ。準備出来てるから、急ごう?」


 ヤンフィが何気なく訊ねると、レイリィンは平然と首を横に振っている。共有するほどの情報でもないようだ。問題ないのであれば興味もないので、それ以上追求はしなかった。


「はい。それでは、こちらにどうぞ。いまは位相をズラしておりますので、ご注意を」


 レムランは倉庫の扉をあけ放ち、スッとその場に跪いた。それを横目に、レイリィンが先行して倉庫の中に入っていった。

 付いてこい、と背中で語っている。少し不遜な態度だが、文句は言わずに従った。


「――おい、レイリィン。ここ、罠じゃにゃいかにゃ?」

「ボクがどうして、タニア様に罠を仕掛けないといけないのですか? そんなことをする意味も、必要もないですよ?」


 倉庫の中は真っ暗で、天井は高く見渡す限り何もなかった。遅れて入ってきたタニアは、キョロキョロと辺りを見渡しながら、殺気を滲ませた声でレイリィンに質問する。

 ふむ、とヤンフィも辺りを見渡して、何もないことを確認した。確かにこれでは、罠を疑っても仕方ないだろう。魔力が異様に希薄な空間だった。


「ここは、さっき入った【異界】とやらと同じ匂いがするな――空間を歪めているのか?」


 カツカツと何もない倉庫内を歩き回るマユミがそんな声を上げる。ヤンフィは静かに、感心の吐息を漏らしていた。まさにその通りだったからだ。

 どうやらこの倉庫自体が、レイリィンの時空魔術により別次元と繋がっているようだ。

 実際、倉庫内に入ってようやく理解出来たが、漂う魔力の波動はレイリィンが放つ魔力波動と合致していた。


「マユミ・ヨウリュウ様のお察し通りですね。いま、位相を合わせるよ」


 パチリ、と壁のボタンを押す。すると途端、真っ暗な倉庫に緑色の光が飛び交い、ぐにゃりと空間が歪んだ。次の瞬間、倉庫内に巨大な魔動列車の姿が現れる。


(……うぉい、凄いな……軍用倉庫みたいだ……)

(――軍用倉庫、か?)


 倉庫内の光景を見て、煌夜が心の中で驚きの声を漏らす。それに首を傾げながら、ヤンフィも物珍し気に辺りを見渡した。


「おお? これは【陸戦魔動艇りくせんまどうてい】か? 山岳地域で暮らす【アグディ族】が開発した魔動列車の下位互換の乗り物だろ? 私は初めて見るな」


 明るくなった倉庫内には、ところどころに大型車両のような乗り物と、バイクみたいな乗り物が置かれており、中央にはドンと三両の魔動列車が鎮座している。

 そんな中で、マユミはサイドカーが付いたバイクみたいな乗り物を興味深げに触っていた。それが陸戦魔動艇なのだろう。


「随分と珍しい乗り物が多くあるようじゃのぅ? ふむ……ここからシールレーヌに、魔動列車で移動出来るのかのぅ? 魔動列車も整備しとるのではないのか?」


 倉庫内を見ると、魔動列車が出れるような出入口がなかった。倉庫に保管しているように見える。しかも魔動列車の周囲では、ローブ姿の魔術師風の人間が五人おり、忙しなく整備点検をしている様子だった。傍目から見ると、今すぐ出発など到底できるようには思えない。

 そんなヤンフィの疑問に、レイリィンは答えず、慌てた様子で現れたバニーガール姿のレムランに向き直った。


「シールレーヌ往復分、魔力充填出来てるよね?」

「不足はない、はずです――いますぐにでも、出発できるよう点検も終わっています。念のため、最終確認中ですが、特段問題ないようです」


 レムランはローブ姿の魔術師たちを一瞥してから、レイリィンにそう宣言した。その発言に、ローブ姿の魔術師たちがハッとする。慌てて魔動列車から離れると、一斉にその場で跪いた。


「じゃあ、乗ろうか。こっちだよ」


 レイリィンが我が物顔で魔動列車の先頭車両に乗り込んだ。それに続いて、タニアが警戒しながら乗り込み、ヤンフィ、マユミと続いた。

 車両の中は、以前乗った魔動列車のような部屋タイプではなかった。物置を思わせるだだっ広い部屋に、ベッドが二つと毛布が積んであるだけという殺風景なものだった。


「これ、誰が運転するにゃ?」

「自動、ですよ――魔力さえ供給すれば、別次元に繋がったレールを通って、シールレーヌに到着できるんですよ。ただし、物理的な距離は短縮出来ないので、相応の時間は掛かっちゃうのが難点だけど。なので、しばらくお付き合いください、タニア様」

「……実際に、シールレーヌまではどれくらい掛かるのかのぅ?」

「八時間もあれば、到着出来るよ――さあ、もう出発するけど、いい?」


 マユミが乗り込んだの確認してから、レイリィンが問い掛けた。すると、返事を待たずに、魔動列車が駆動音を鳴らし始めた。正面の窓に映るのは外の景色ではなく、倉庫内の薄暗い空間だが、ここからどうやって出発するのだろうか。


「倉庫からどうやって出るにゃ? 壁をぶっ壊していくにゃか?」

「そんなことない、です。ちょっと、待ってて」


 レイリィンは言いながら、その全身から重苦しい魔力を放った。呼応するように、外の景色が再び暗闇に覆われた。時空魔術を重ね掛けで展開しているようだ。凄まじい魔術精度である。


「魔動列車が動くぞ――総員退避、魔術結界解除!」


 レムランの叫び声が外から響いた瞬間、不思議な浮遊感と共に魔動列車が唸りを上げて動き出す。


「……なるほどのぅ」


 ヤンフィが感心した声を上げた。桃源と同じ原理か、と内心で納得する。空間を取り込んで、自らの魔術領域に変換している。


「タニア様。シールレーヌ到着まで、こちらでお休みしてて。ボクは――ねぇ、人化を解いちゃ駄目?」

「駄目じゃ。我慢せよ」

「そうにゃ。駄目にゃ――あちしより、ボスが休んでにゃ」


 レイリィンが残念そうに肩を落とす。それを横目に、空いているベッドを指差すタニアに従って、ヤンフィが素直に横になった。


「コウヤよ、身体を返す。しばし眠るが好い」


 煌夜の身体でベッドに寝た途端、ヤンフィの姿が中空に現れた。

 優雅な姿勢で椅子に座った状態のヤンフィを認識して、煌夜はプツリと意識を失った。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇



 ガコン、と魔動列車が大きく上下に揺れた。ベッドで寝ていた煌夜の身体は、一瞬だけ大きく浮き上がり、直後、思い切り床に転げ落ちてしまった。


「にゃ!? 大丈夫かにゃ、コウヤ!!」


 慌てた声で、柔らかい何かが煌夜の頭を掴む。意識が一気に覚醒して、何だ何だ、と辺りを見渡した。目の前にはタニアの豊満な胸があり、それがクッションになって、頭部を床に叩きつけるのは防げたらしい。ありがたいが、背中は痛かった。


「……いまのは何じゃ、レイリィンよ。空間が乱れたぞ?」

「着いたよ。タニア様、マユミ・ヨウリュウ様、少し揺れてしまってごめんなさい。空間を接続した時に、強い魔力波動にぶつかった――多分、サラの結界に当たっちゃったみたいだ」


 レイリィンが当然のように軽く言って、正面の窓を指差した。外の景色は暗くなっていたが、たくさんの建物が整然と並び建っている様が、栄えている街だと判る。


「ここがシールレーヌか? もうすっかり夜だが……すぐに【ゲヘナホール】に向かうのか?」


 レイリィンの話を信じると、どうやら【古の街シールレーヌ】に到着できたらしい。マユミが身を乗り出して、窓の外を見ながらヤンフィに問い掛けていた。

 煌夜が顔を上げると、半透明な状態でヤンフィが椅子に座して浮いていた。マユミが顔を向けると、タニアも同時に注目する。すると、レイリィンがキョトンとした顔で首を傾げた。


「向かわないの? ゲヘナホールの挑戦者用入口まで数分だよ? 充分、みんな休めたんじゃないの?」

「体力的な問題で問うておるのではない。リュウヤとサラはゲヘナホールを調査したくとも、人数が必要で調査出来ないのではなかったのか? 街のどこかで仲間を探しておるのではないのか?」


 ヤンフィが至極もっともなことを質問した。レイリィンから色々と情報を共有された際、そんな事情を教えられていた。

 何でも、ゲヘナホールに封じられている【破滅の魔女】レーヌ・ラガム・フレスベランの部屋に辿り着くには、最低、三名以上の人間が必要であるらしい。三か所のスイッチに対して、同時のタイミングで魔力を流さないと次に進めない構造をしているそうだ。


「あ、それがね。レムランが出発する時に言ってたけど、ちょうど強そうな冒険者を見付けて同行することにしたらしいんだよ。だから、もう調査に向かってるんだ。実際に、ゲヘナホールに進入したのも確認してるよ」

「なるほどのぅ。あの時の連携はそれか――ならば、往くか。タニアたちは、どうじゃ?」

「あちしに異論にゃんかにゃいにゃ。けど、コウヤは大丈夫かにゃ? 寝起きにゃ」


 即答するタニアは、胸元の煌夜を覗き込んだ。煌夜は身体の調子を確かめてから、問題なさそうと強く頷いて見せた。まあ直前まで寝ていたので、疲れも何もないのだが――


「なぁ、レイリィン。いまお前、挑戦者用と言ったが、ゲヘナホールは未踏破ダンジョンで、入口は唯一、観光名所の大穴を落下することだったはず……それ以外に出入口があるなんて、私は初耳だが?」

「あまり知られてないらしいけど、ゲヘナホールは入口が二つあるんです。いまマユミ・ヨウリュウ様が仰った縦穴上から落ちて入るルートと、直通で試練に挑めるルート。ちなみに、どちらから入っても未踏ダンジョンであることに相違はないよ?」


 魔動列車の駆動音が完全に停止してから、レイリィンはサッサと外に出る。

 寝起きの煌夜は頭を振りながら、タニアの肩を借りて起き上がった。マユミはレイリィンの背中を見送ってからヤンフィに問うた。


「ヤンフィ様、このままレイリィンに従うで良いのか? 私も別にこのまますぐに挑戦でも構わないし、むしろ喜ばしいが――」

「――それの、にゃにが問題にゃ?」

「いや? 問題というよりも、罠を疑わなくて良いのか、と聞いてるだけさ」


 マユミが軽口をタニアに返す。それに呆れた顔を浮かべてから、ヤンフィは本来の姿を消して、煌夜の身体の主導権を奪った。


「罠なぞ考えずとも好い――そも、弟妹を捜すのを優先するのが、コウヤの選択じゃ。妾たちは全力でそれを達成する為に動くだけじゃ」


 ヤンフィは言って、タニアの腕を振り払って外に出た。にゃ、と元気よく頷き、タニアも後を追う。


「……コウヤよ。悪いが、弟妹に逢っても、妾が好いと云うまでは汝に身体の支配は返さん。それに危険じゃと感じたら、すぐさま逃げるからのぅ――」


 独り言のように呟き、ヤンフィはレイリィンから入手した眼鏡を掛けた。視界に文字と数字が浮かび上がり、強い魔力波動が漂っているのが視える。

 ちなみに、魔動列車が止まっているここは、シールレーヌの街中であるのは間違いないが、見渡す限り周辺に建物も何もない広場である。


「――それでレイリィンよ。どこに入口があるのじゃ?」


 見渡す限り、レイリィンが言う挑戦者用の入口は見当たらない。


「魔術で隠蔽されてるんだよ。いま開くから、待っててよ」


 マユミが魔動列車から降りてきたのを確認してから、レイリィンが右手を夜空に掲げた。その細い腕に蛇を模した腕輪が出現して、眩い光を放つ。次の瞬間、目の前の空間が縦に割れて、裂け目から薄明りを漏らす洞窟が顕現した。

 洞窟は内部に松明が灯された通路が伸びており、別空間に続いている。


「――これは、どういう、理屈じゃ?」

「にゃんにゃ、これ!? どこに繋がってるにゃ!?」


 ヤンフィは怪訝な顔でレイリィンを睨みつけて、タニアは驚愕の声を上げる。しかし、平然とした表情のまま、レイリィンは頷いた。


「この【挑戦者の証】を起動すると、挑戦者用の道が現れる仕組みなんだよ。【挑戦者の証】は、ボクを含めた【救国の五人】が持ってる――あと、ウィズ様も、かな」


 こっちだよ、と洞窟を指差しながら、レイリィンはサッサと入っていく。


「……【挑戦者の証】? 嗚呼、なるほどな。それが噂に聞く【世界蛇の鍵】か?」

「そだよ。マユミ・ヨウリュウ様は、よくご存じで」


 感心した響きの声でレイリィンが頷いた。タニアとヤンフィは首を傾げた。


「挑戦者の証? 世界蛇の鍵? にゃんだ、それ?」

「【世界蛇の鍵】――世界蛇の創設者が、一部の幹部の為に創ったとされる伝説の魔道具らしい。冠級の魔術が封じられた魔道具で、利用方法と具体的な効果は知らんが、世界蛇に関わりがある施設において扉を開く鍵、になると聞く。それがこのゲヘナホールの挑戦者の証、なのだろう?」

「――博識ですね、マユミ・ヨウリュウ様。その通りだよ。とりあえず進もう?」


 マユミの解説に頷くヤンフィたちを、レイリィンが手招きして催促する。

 それに応じて、タニア、ヤンフィ、マユミが洞窟に足を踏み入れた。途端、空間の裂け目は閉まり、洞窟の入口は岩で塞がれたように行き止まりになった。

 別段、閉じ込められたとも思わないが、こうなってしまうとどこから出入りすればよいのか。少しだけ煌夜は不安になった。


「出入口は、ボクがまた解放出来るから、何も心配しないで大丈夫だよ」


 レイリィンがそんなことを呟きながら、サッサと洞窟の奥へと歩き出した。

 洞窟の通路は、どこまでも真っ直ぐな一方通行で、等間隔に松明が並んでいた。松明には炎が灯っているが、よくよく見るとそれは、炎ではなく火に似た光の塊であり、燃えているのではなくただ揺らめいており、熱くもなかった。何らかの魔術によるものだと分かる。

 なんの変化もないただただ真っ直ぐと続く一本道を、レイリィンは散歩でもするかのような気軽さで歩き続けた。罠を警戒する素振りも、魔族が現れる気配もない。けれど、ジッと目を凝らしても先が見通せないほど長い通路には、かなりの不安感がある。


「拍子抜け過ぎるな……どういうことだ? ゲヘナホールは、噂じゃあ、Aランク相当の魔族が、群れで襲い掛かってくる洞窟じゃなかったのか? それともここから先に魔族部屋でもあるのか?」


 マユミが残念そうな声で辺りを見渡しながら言う。

 安全に進めるに越したことはないのだが、マユミとしてはガッカリらしい。その台詞に、戦闘狂(イカレ)にゃ、とタニアが吐き捨てていた。


「マユミ・ヨウリュウ様が仰っているのは、ここじゃなくて、縦穴から侵入した場合だね。そっちは第一の試練が魔族の巣になってるから……こっちの挑戦者用は、試練の部屋一つごとに門番が一体いる構造で、群れとかが現れるのは結構先ですよ」

「門番、ね。それは愉しみだな。やはりこちらからの方が、強い魔族が現れるのか?」

「ちょっと違うかな。結局、どっちの入口から入ろうとも、第二の試練から道が合流するんだよ。だから、第二の試練以降は、同じ門番を相手取ることになるよ。まあ、このメンバーじゃ、どっちにしろ余裕だと思うから、雑魚には違いない、けどね」


 テクテク、と歩きながら、興味なさそうに喋るレイリィンに、マユミがニンマリと嬉しそうにしていた。すると、ヤンフィが眉根を寄せて怪訝な表情を浮かべる。


「のぅ、レイリィンよ。そう云えば、破滅の魔女の調査とは、どのような調査なのじゃ? 破滅の魔女がゲヘナホールに封じられておる、とは聴いたが、封印された存在の何を調査するのじゃ?」


 厳しい表情で正面の闇を見据えたまま、ヤンフィがそんなことを問うた。言われてみれば確かに、具体的にどんなことを調査するつもりなのか、詳しい説明はないままだ。

 知ったところで何をするでもないが、魂だけで存在出来るレーヌ・ラガム・フレスベランを知っているヤンフィたちからすれば、迂闊に関わりたくはない思いもある。


「うん。封じられたレーヌ・ラガム・フレスベランの魂が流出していないか、外部存在と精神接続していないか、封印自体が弱まってないか、とか、そういう現状を調べるんだ。直近で封印の確認をしたのは、キリア様から聞いたところだと、二年前くらいにウィズ様が確認したのが最後だから、いまどうなってるのかも分からないけど」

「……ほぉ? それでは、現時点ではそもそも封印されているかすら定かではない、と云うことかのぅ?」


 ヤンフィはどこか確信めいた口調で、レイリィンの顔を強く見詰める。レイリィンはその眼光にあっけらかんと頷き、そうだよ、と首を傾げた。


「じゃから、こんなにも濃厚な魔力が溢れておる――」


 ヤンフィの不穏な呟きは、突如、正面奥の暗闇から聞こえてきた獣の咆哮に掻き消された。正面奥には巨大な扉が待ち受けていた。


「――この魔力は、試練の門番が放つ魔力だよ」


 レイリィンが巨大な扉に手を触れた瞬間、壁越しに全員を威圧するほどの凄まじい咆哮と、強烈な音圧が襲い掛かってきた。嵐を思わせるほどの魔力の強風が吹き荒れた。


「やかましいにゃぁ。にゃにが居るにゃ?」

「魔力の強さから察するに、ただの魔族ではなく、魔貴族か?」


 ニヤリと口角を釣り上げるマユミとは裏腹に、タニアが鬱陶しそうに溜息を漏らしている。

 しかしヤンフィの懸念は別だった。正面の扉から感じる魔力とは異なる禍々しい魔力が、洞窟の奥からずっと、煌夜の身体に向けて放たれているのを感じる。


(……コウヤの魂に手を伸ばしておるような……なんとも、嫌な感覚じゃ……)


 ギギギ、と扉を開けるレイリィンを横目に、ヤンフィは内心で警戒を強めた。何が起こるのか、嫌な予感がある。


「――コイツが第一の試練の門番だね」


 扉を開けた先に居たのは、巨人の如き体躯をした赤黒い人型の魔族だった。

 鋭い犬歯、三本角を生やしてはちきれんばかりの筋肉を誇っている。全身から放つ魔力は暴風の如く、闘技場のような円形の広間を吹き荒れていた。

 ガァアア、と侵入者であるヤンフィたちを目にして、大声で威嚇をしていた。


「にゃんだ、キングゴブリンじゃにゃいか……」


 そんな威嚇を前に、タニアは溜息を漏らす。放たれている魔力は脅威だが、強敵ではない。


「――私が、相手するぞ」


 瞬間、目にも留まらぬ速さでマユミが飛び掛かっていた。それに応じるように右拳を振り上げたキングゴブリンだったが、動きが鈍すぎた。結果として、マユミの動きに反応出来ず、キングゴブリンの胴体は二つに分かれて、血飛沫をあげながら床に転がっていた。


「おっと、あっけないな……柔らかすぎる。本当にこれが、噂に名高いキングゴブリンか?」

「マユミ・ヨウリュウ様。申し訳ないですけど、キングゴブリンなんて魔族は、ただの雑魚だと思うよ」


 残念そうにキングゴブリンの肉片を見下ろすマユミに、レイリィンが呟いた。

 確かに、キングゴブリンは強力な個体に分類される魔族であり、個体によっては、魔貴族に匹敵する実力を秘めている。並の冒険者では手も足も出ないだろうし、討伐するとなれば、本来はパーティで挑むような化物だろう。しかし、相手が悪すぎる。

 レイリィンの指摘通り、マユミのみならず、タニアでもヤンフィでも、この程度の魔族は歯牙にも掛けない。それこそキングゴブリンの群れが現れたとしても余裕で倒せる。


「雑魚、なのか? 噂じゃキングゴブリンの皮膚は、竜種の鱗と互角だと聞いていたから、歯応えがあるモノと思っていたが、残念だ……この後の門番にでも、期待するか――」

「――その期待にも応えられないと思うよ、マユミ・ヨウリュウ様。第十の試練まで行っても、現れるのは下級の魔貴族ですから、手応えを求めるならば、諦めた方がいいです」


 キングゴブリンの肉片が瘴気に変わって、跡形もなく消え去った。それを合図に、正面に巨大な扉が現れる。次に進めるようだ。扉を開けて進むと、そこには三叉路が伸びていた。


「分かれ道にゃ、どっちに行くにゃ?」

「分かれ道、じゃないんですよ、タニア様。ここは合流地点です。右奥が、ゲヘナホール観光地の縦穴から入った者が辿り着く魔族の巣で、左奥が、第九の試練手前から飛ばされる転送魔法陣の出口があります。正面が、次の試練に進む唯一の道です」

「正面が正解、と言うことか?」


 迷わずに正面の通路を進み出すレイリィンに、マユミが質問を投げる。そうです、と素直に頷いたので全員疑わずにそのまま進んで行った。

 そうしてほどなく歩けば、再び巨大な扉が現れた。そこからも強力な魔力が放たれていた。今度は地響きのような唸り声が聞こえていた。


「次の魔族はどんな奴だ? 今度は群れだったりするのか?」

「サーベラスロード辺りかな? 第五の試練までは、現れる魔族は単独の仕様だったはず、だよ」


 マユミの質問に答えつつ、無警戒に扉を開いた。

 扉の中に広がっていたのは、先ほどと同様の闘技場じみた空間で、現れた門番は、双頭の巨大な狼だった。あれが、サーベラスロード、というのだろうか。

 その巨大な狼は、脚が計六本あり、刃物のような鋭い牙を持ち、漆黒の鎧を纏っていた。


「いいねぇ、アレは【ツインヘッドウーフ】じゃないか――これも私が頂くが、文句はないか?」


 マユミが満面の笑みを浮かべて、愉しそうな声で問い掛ける。その質問に誰も回答しなかったが、無言のまま肯定していた。マユミの邪魔をしないよう、全員が一歩後ろに下がっていた。

 一方で、双頭の狼はマユミの戦意を読み取って、凄まじい咆哮と共に威嚇してきていた。強烈な威圧を受けたマユミは、いっそう笑顔になって、刹那、大きく踏み込んでいた。

 そこから始まったのは戦闘ではなく、弱い者イジメを思わせる肉弾戦だった。


「アイツ、馬鹿にゃ」


 マユミの闘う様を見ながら、タニアが呆れ声で呟いていた。その感想は等しく全員同じだった。何がしたいのか、マユミは素手でツインヘッドウーフを殴り続けている。

 体長3メートルを超える巨躯のツインヘッドウーフに単身、拳で立ち向かっている。一見すれば、じゃれ合っているようにも思えるが、実際はマユミの一方的な暴力だ。

 ツインヘッドウーフが凄まじい速度で牙を振るう。それを余裕で避けつつ、ツインヘッドウーフの腹部に拳を叩きつけている。前脚の蹴りや体当たり、同時に襲い掛かる炎の塊を意に介さず、マユミはひたすらグーパンチで胴体だけを執拗に殴り続けていた。あまりにも実力差があり過ぎて、完全にイジメにしか見えなかった。


「マユミ・ヨウリュウ様は何がしたいのです?」

「知らにゃいにゃ。恐らく、アホにゃだけにゃ。無駄時間にゃ」


 感想を呟き合うタニアとレイリィンたちを無視して、嬉しそうな声を上げながらマユミはそんなイジメをしばらく続けていた。

 それが十五分程度続いた時、限界に達したツインヘッドウーフが、弱々しい叫びと共に紫色の血と内臓を吐き出した。その瞬間、マユミは血を吐いた側の頭部を掴むと強引に捩じり切った。残ったもう片方の頭部が、絶叫を放ちながら悶絶する。その両眼を抉り抜く。


「――トドメだ。剣技裂空」


 ツインヘッドウーフが激痛から地面に倒れ込んだ。その巨体を思い切り蹴飛ばして、マユミは腹部を上向きにする。刹那、ツインヘッドウーフの腹部がスッと切り裂かれて、内側の臓物が飛び散り、血の雨が降り注いだ。

 マユミ以外の全員が慌てて、血の雨に触れないよう部屋の端へと退避する。


「気持ち悪いにゃぁ、臭いし……」

「――マユミよ。何をしておるのじゃ?」


 恍惚の表情で血を浴びたマユミは、ツインヘッドウーフだった肉片を一瞥する。すると、身体に掛かった血も含めて、肉片全てが瘴気になって煙と消えた。しかし、ツインヘッドウーフの全てが消えるかと思われたが、どうしてかそこには、纏っていた漆黒の鎧だけが残っていた。

 マユミが会心の笑みを浮かべながら、残った鎧に触れながら喜びを表現している。


「ツインヘッドウーフの纏ってる外殻は、鍛冶素材として非常に優秀でね。これ一つあるだけで、だいぶ良質な剣が造れるのさ。だから私は極力、この外殻を傷つけたくなかった」

「だからって、にゃにも素手で殴る必要もにゃいにゃ?」

「嗚呼、そこは少し身体を動かしたかっただけさ――タニア、悪いがこれ、仕舞っておいて欲しい」

 

 ほくほく顔で鎧を拾い上げて、タニアに放り投げていた。重そうなそれを軽々と受け取ると、タニアは面倒くさそうに道具鞄に収納する。

 そんなやり取りは尻目に、レイリィンとヤンフィは次の扉を通り抜けた。またもや同じような通路が伸びており、しばらく進むと、先ほどまでと同じ形状の扉が現れた。

 ヤンフィは扉を前に立ち止まり、遅れて駆けてきたマユミに視線を向けて、先を行くよう促す。


「マユミよ。汝が露払いをしておけ」

「嗚呼、感謝する――次はどんな魔族だろうか?」


 マユミはウキウキしながら扉を開けて、部屋の中に居る魔族を単独で攻略する。

 ちなみに、第三の試練はサーベラスロードが相手だったが、今度は一瞬のうちに斬り払われて終わった。ツインヘッドウーフの時のように、痛めつけることもせず、あっけなく殺して次に進む。

 そのまま、第四の試練、第五の試練と、順調にマユミ独りで攻略されていき、何の苦労も問題も起きないまま、あっという間に第六の試練まで辿り着いた。

 第六の試練は、闘技場のような空間を埋め尽くさんばかりに、大量のゴブリンが現れた。

 レイリィンの解説では、ここから先の部屋が全て魔族の巣と化している、とのことだ。ヤンフィとタニアはその夥しい数を前に辟易したが、攻略が困難になることはなかった。正直、どれだけの数が現れようとも、マユミ独り居れば、お釣りで出るほど充分すぎた。

 ヤンフィたちは、ただただマユミが魔族を蹂躙する様を眺めて、殲滅し終わったら次の部屋に向かう、というルーティンを繰り返した。

 そうして、心配になるほど順調に、攻略は進んで行った。


「あ、次はこっちだよ。そっちに進むと、また入口付近に戻っちゃう――」

「――のぅ、レイリィンよ。この迷宮は本当に未踏破なのかのぅ?」

「うん? そうだよ? まだ誰も攻略は出来てない」


 ふと、第八の試練を攻略して、正しい道順で歩いていたレイリィンに、ヤンフィが問い掛けた。その問いは、ここまで順調に進んできた過程を振り返ると、いっそう強い疑問になっていた。

 未踏破と呼ばれているにも関わらず、何一つ問題も起きずに順調に攻略している。

 確かに、ここにいるメンバーがかなりの戦力であることは事実だ。だが、それにしても攻略が簡単すぎるのではないだろうか。しかも実質、攻略しているのはマユミ単独である。こんな簡単に進める迷宮が、とても未踏破とは思えない。


「いったい、どこが未踏破なのじゃ? 破滅の魔女が封印されとる部屋に往くには、最低三名が必要と云うておったが、人数制限があったとしても、攻略が困難とは思えぬ構造じゃ。むしろ、人数が居れば攻略し易いようにも思えるがのぅ? よもや封印の存在が先を塞いでおる、とでも云うのかのぅ?」

「確かに先を塞いでいるのは破滅の魔女の封印だけど、それを無視して最奥には向かうことができるよ? このダンジョンが未踏破なのは、単純に、最奥の部屋に誰も入ったことがないからだよ。だから攻略しきれていないんだ」


 第九の試練に入って、マユミがまた獅子奮迅の働きを見せているのを眺めながら、レイリィンは意味の分からない説明をする。タニアが首を傾げた。


「どういうことにゃ? 最奥の部屋には入ったことがにゃい? にゃのに、最奥に向かうことが出来るって、意味不明にゃ」

「最奥の部屋に入る鍵がないんですよ、タニア様。破滅の魔女が封じられている第十四の試練は、唯一、門番が居ない部屋なんです。破滅の魔女自体が門番かも、と考えても、奥に進む扉は常時開いていて、奥にある部屋の入口だけが開かないんです」


 そうこうしているうちに、マユミが第九の試練の門番を殲滅した。すると、次の部屋への扉が開いている。ヤンフィは、なるほど、と納得する。

 ここまでは順調だが、言うほど簡単な構造はしていないということか。いまだに未踏破であることを考えると、特殊な仕掛けか、何らかの特殊条件でもあるのだろう。


「ふむ――まぁ、今回は攻略が目的ではないしのぅ。そうなると、コウヤの弟妹が居るのは、その第十四の試練がある部屋かのぅ?」

「恐らくそうだよ。想定外のことが起きてなければ、まだ調査中だよ」

「入れ違いに街に戻っておることはないか?」

「うん。ないよ。実はこのダンジョン、外部より時間の進み方が物凄く遅くてね。ダンジョン内の一時間が、外部ではおよそ一日ほどもするんだ。事前情報では、サラたちが入ってからまだ二日程度、内部では半日も経っていないはず――ボクたちの攻略ペースを考えると、第十四の試練を前に、引き返したりしていなければ調査中なはずだよ」

「……ほぉ? この迷宮内は、時間の進みが遅い、のか……」


 第十の試練に現れた牛鬼の姿をした魔貴族を前に、マユミが愉しそうな笑い声を上げながら飛び掛かっていく。それを横目に、ヤンフィが神妙な顔で呟いていた。


(……時間の進みが遅い、ってことは……ここで数日過ごしても、外の世界じゃ、数分とか、ってこと?)


 精神と時の部屋みたいなもんか、と煌夜が考えた時、ヤンフィが即座に否定した。


(逆じゃ。この迷宮で数日過ごそうものなら、外では倍以上の時間が経過する――典型的な、玉座の特徴じゃのぅ)

(……玉座?)

(魔王領域――簡単に云えば、妾と同格の魔王属が眠っておる可能性がある、と云うことじゃ)


 ヤンフィの回答に、煌夜は驚愕した。それは【破滅の魔女】レーヌ・ラガム・フレスベランとは別の存在で、という意味であることを理解したからだ。

 マユミが聴いたら逆に喜びそうだが、もしそんな存在が現れて敵対してきたら、かなり危険である。


「のぅ、レイリィンよ。ちなみにじゃが、この【ゲヘナホール】に何故、レーヌが封印されたのじゃろぅか? 封印する際に、この迷宮が出来た訳ではあるまい?」

「理由は知らないよ。けど伝承では、破滅の魔女はこのダンジョンの最奥に挑もうとして、失敗したらしい。そこで疲弊していたとこを、希望の勇者が倒した、って伝承だね」


 レイリィンの回答に、悩まし気な表情を浮かべた。この迷宮の特性がいまいち分からない。


「にゃあ、マユミ。お前、もうちょっと効率よく倒せにゃいのか? 途中、手を抜いてたにゃ?」

「……おいおい、タニア。せっかくの強者を相手に、そんなあっけないことは出来ないだろ? 少しくらい愉しませてくれよ」


 満足気な笑みを浮かべるマユミを見て、タニアが呆れ顔を見せる。とりあえず、門番が居なくなったことで次の扉が開いた。


「さて。ここからが、分かれ道だよ。三つの部屋を同時攻略しないと、最後の部屋に辿り着けない試練――ボクは、魔王属ヤンフィと行動するから、タニア様とマユミ・ヨウリュウ様は、単独で攻略をお願いします」


 扉の先には、ふたたびの三叉路があった。そのうち、真ん中の道を指差しながら、レイリィンがヤンフィに視線を向けている。

 タニアたちと別行動になっても、困ることはない。戦力的に見ても、タニア、マユミには何の心配もないだろう。しかし、懸念点はヤンフィにある。レイリィンと二人きりという状況は、正直なところ避けたいシチュエーションだ。レイリィンが裏切った場合など、予期せぬ展開があった際、煌夜の身体を危険に晒す可能性があるからだ。

 ヤンフィは悩まし気に押し黙った。すると、それを察したタニアが抗議の声を上げる。


「にゃんで、お前がボスと一緒にゃ? あちしがボスと行くにゃ。レイリィンは独りでも大丈夫にゃ?」


 レイリィンが信頼に足る存在でないことは、タニアも理解している。だから強制的に主張して、煌夜の腕を掴んで進もうとした。けれど、そんなタニアに反論しながら、レイリィンが行く手を阻んだ。


「――タニア様。申し訳ないけど、ボクは、サラにアマミコウヤを引き合わせることを最優先したいんだよ。だから、万が一にも、ここで逃げられるのは避けたいんだ」

「妾が逃げるはずがなかろう? いや、そもそもこの迷宮、時空魔術を阻害する魔力で覆われておるからのぅ。逃げること自体、妾でさえ無理じゃしのぅ? じゃからこそ、汝の持つ鍵がなければ、出ることも出来ないはずじゃろぅ?」


 鎌かけのつもりで放ったヤンフィの問いに、レイリィンは沈黙で返した。その沈黙に、思わずニヤリとほくそ笑む。沈黙するということはつまり、鍵がなくてもこのダンジョンから出られる方法が存在しているのだろう。

 それがどのような方法かは分からないが、別行動すれば逃げることができることを考えると、恐らく来た道を戻ることで脱出出来るはずだ。

 とはいえ、そこまで察したところで、逃げる気自体は本当に微塵もない。だからこそ、ヤンフィはタニアと行動すべく、そのまま先に足を踏み出す。


「逃げない、ってのは信じるよ。でも、ボクはアマミコウヤと一緒に行動した方が良いと思うんだ。だから例えば、魔王属ヤンフィだけが単独で別の道を行くのはどう?」


 レイリィンは透明な魔力の壁も展開して、ヤンフィたちの往く手を塞いだ。さして苦労もなく壊せるが、とりあえず説得すべく言葉を続ける。


「妾が単独で道を攻略して、タニアと汝、そしてコウヤで道を進むと云うことかのぅ?」

「そうだよ? それならどう、タニア様?」

「……あちしは、ボクが良いにゃら良いけど……どうにゃ?」


 タニアが遠慮がちにヤンフィに問い掛ける。その判断が最善でないことは理解しているようだ。

 ヤンフィはしばし考える。ここで揉める意味はない。とはいえ、レイリィンと二人きりというのもリスクがある。

 沈黙のなか、そんな葛藤で時間が過ぎる。マユミは成り行きを黙って見ていた。


「――致し方あるまい」


 やがて、諦観の吐息を漏らして、ヤンフィは頷いて見せた。タニアの腕を引き剥がして、レイリィンに向き直る。


「タニアよ。汝は独りで其方を攻略せよ。妾はレイリィンと共に進む――じゃが、レイリィンよ。門番は汝が倒せよ?」

「いいよ? 別にそんな強敵でもないし……獣化しても良い?」

「駄目じゃ」


 残念、と肩と耳を落としてから、レイリィンはスタスタと先を進み出す。付き従うようにヤンフィも煌夜の身体で歩き出した。

 ヤンフィのその決断に、タニアはなんとも言えない不思議な表情をしていたが、すぐに納得した。


「分かったにゃ――くれぐれも裏切るにゃよ、レイリィン!」

「裏切るなんて、そんなことしませんよ」

「そうすると、また後で合流だな――ところで、次の扉のギミックはどんなモノなんだ?」

「第十二の試練の門番を倒した後、扉手前に水晶が現れます。それに魔力を注いでください。別々で存在する三つの水晶に、同時に魔力が注がれれば、合流する部屋への扉が開く仕様です」

「……にゃるほど。ところで、もし扉が開かにゃかったらどうするにゃ?」


 タニアの質問に対して、レイリィンはそんなことはあり得ない、と首を振りながら、ここに戻ってきてください、と続けた。

 何らかの問題が誰かに発生した場合には、来た道を戻れば大丈夫、らしい。


「――ここに現れる魔貴族如きで、タニア様たちがどうにかなるとは、絶対に思えませんけど……」

「何が起こるか分からんが、兎に角、汝らも気を付けよ」


 ヤンフィの言葉に返事をしつつ、タニアとマユミは、三叉路を進んで行った。同時に、ヤンフィたちも先を進む。


「レイリィンよ。汝は【救国の五人】とやらの中で、どれほどの強さなのじゃ?」

「んー、ボク? 最弱だと思うよ。ジョウウェイみたいに極大魔術も使えないし――けど、逃げ足だけは一番かな?」

「サラ、リュウヤ、コタロウの三人では、誰が一番強いのじゃ?」


 何気なく問い掛けると、レイリィンが足を止めて振り返った。


「肩書のうえじゃ、最強は【隻眼の天騎士】コタロウだよ。けど、本当の実力のことを言うんなら、間違いなく【隻腕の魔術師】リュウヤ、だね。ボクの主観も影響してるけど」

「本当の実力、とはどう云う意味じゃ?」

「……ボクから教えるか、悩みどころだけど……そっか、知らないんだもんね? アマミコウヤは、弟妹思いって聴いてたけど、そうなの?」


 レイリィンの意図の分からない質問に、煌夜は首を傾げた。弟妹思いなのが、一体なんだ、というのだろうか。

 煌夜は虎太朗に殺されかけたいまでも、虎太朗を含めた弟妹たちに、憎しみも怒りも一切ない。むしろ、助けに来るのが遅いことに対して、ひたすらな罪悪感があるだけだった。


「そうじゃ。己の命さえ賭して、弟妹を捜してここまで来ておる。それがどうしたのじゃ?」

「なら、そーだね。知っておいた方が良いかな……」


 とりあえず進もうか、と立ち止まったレイリィンがまた歩き出す。自分勝手だ、とヤンフィは眉根を寄せたが、次の部屋に入って、今度は鼻を突く異臭に顔を顰める。


「……なんじゃ、この部屋は……」

「ここは毒吐き竜の部屋だね。ちょっとだけ待ってて」


 大空洞と思しき高い天井をしたその部屋には、凄まじい腐臭が漂っており、見るからに毒と思われる瘴気が地面から立ち昇っていた。

 レイリィンは軽やかな歩調で、毒の立ち昇る地面へと向かう。すると、地面から首だけのどす黒い色をした竜が現れる。それは頭部だけで3メートルを超える巨体で、地面に埋まった全身はどれほど巨躯になるのか恐怖を感じるほどだった。

 しかし、そんな凶悪そうな竜を前にして、レイリィンは涼し気な顔だった。それはヤンフィも同様だ。


「……魔貴族(アール)のようじゃが、それほど脅威では――」


 ヤンフィが腕を組んで扉に背を持たれる。

 さて、レイリィンの闘いっぷりを観察しようか、と思ったところ、次の瞬間、戦いさえ起きずに敵は瞬殺されていた。長い首が、気付けば骨だけになって溶けていた。


「――脅威では、ないのじゃが、魔力だけであれほど容易に倒せる存在でもないぞ?」


 少しだけ呆れた声を出して、ヤンフィが苦笑いを浮かべていた。煌夜からすると、何をどうやったのかさえ分からなかった。

 ただハッキリと分かったことは、間違いなく圧倒的な強さをレイリィンが持っていることだ。そして同時に、首だけ現れたあの竜は、見た目より雑魚だったということである。


「さあ、行こう?」


 手招きするレイリィンに頷き、ヤンフィは歩き出す。奥にある扉は、門番を倒した瞬間にこれまで同様すぐさま開いていた。


「……水晶があるのではなかったのか?」

「ここはまだ、第十一の試練だよ? 水晶は、次の試練の門番が護ってるんだよ」


 扉を通り抜けると、一本通行ではなく、二又の通路が現れた。右手側からは強力な瘴気が漂ってきているが、左手側からは清涼な風が吹き付けている。


「次の試練はどっちなのじゃ?」

「どっちに進んでも、同じ結果に辿り着くよ――けど、どうやらこっちにサラが来てたみたいだ」


 清涼な風が吹き付けてくる方の通路を指差しながら、レイリィンはそっちに歩き出す。どういうことか、煌夜もヤンフィも同時に疑問を持った。


「おい、それはどういう――」

「――さっきの話の続きだけど。リュウヤが隻腕になった原因は、コタロウなんだよ」


 ピタリ、と煌夜は足を止めた。ヤンフィの身体の支配を強制的に奪い返して、レイリィンの肩を掴んで引き留める。


「コタが原因ってどういうことだよ!?」

「ん? ああ、アマミコウヤ? うん、そう興奮しなくても、ちゃんと説明するよ? とりあえず歩きながらでいい? こっちの通路はたぶん、サラが魔貴族を処理してくれたみたいだから、当分の間は、門番が復活しないと思うからさ」


 パッと煌夜の腕を払いのけて、スタスタと前に歩き出す。クソ、と毒づきながら足を踏み出そうとして、再びヤンフィに身体の主導権を奪われた。


「コウヤよ。レイリィンの云う通りじゃ。興奮するな……傷が癒えにくくなるじゃろぅ?」

「そーそー。あ、それでね。詳しく簡単に説明するけど、ボクたちが【救国の五人】と呼ばれることになった事件、世界蛇の幹部【騎士王】グレイヴとの闘い。その時に、コタロウが興奮して突っ走っちゃってさ。リュウヤがコタロウを庇って右腕を切断されたんだよ。さらにコタロウもそこで左目を失ったんだ」

「……それは、コタロウのせいではないじゃろぅ? 単純に、グレイヴとやらが強かっただけではないのか?」

「違うんだよ。そもそも最初、サラが自らを囮にして世界蛇の内部に忍び込んで、グレイヴを誘き寄せる作戦を実行したんだ。それは無事に成功して、単独で誘き出されたグレイヴを全員で強襲する予定だったのに、コタロウはどうしてか作戦通りに動かず、いきなり独りでグレイヴに挑んだんだよ。しかもそのせいで、世界蛇も他の幹部が集結する事態になっちゃって……リュウヤが駆け付けた時には、コタロウは満身創痍だったんだ」

「何故、コタロウはそんなことをしたのじゃ?」

「なんかね、リュウヤと喧嘩したらしいよ? しかも喧嘩の内容は、サラが原因らしいし……くだらないことで、全員の命を危険に晒したんだ……それで、リュウヤが凄く怒っちゃってさ」


 レイリィンは話しながら、試練の間へと足を踏み入れた。

 そこは見渡す限りに何もない円形の空間で、清らかな風がそこかしこから吹いている。何か、清涼な魔力で満たされているようだった。


「今思うと、もしかしたらあの時点で、コタロウはレーヌの魂の欠片に惑わされてたのかも知れない」


 次の扉は開いておらず、手前に水晶が置かれている。水晶は淡く明滅しており、ここから清涼な魔力が漏れていた。随分と強力な魔力残滓である。

 レイリィンは水晶に手を当てたまま、魔力を流し込むことはせず、話を続けた。


「あ、少し脱線したけどさ。結局、リュウヤの実力って話だと、隻腕の状態で、コタロウと互角だったかな? と言うか、コタロウ相手には、常に手を抜いてるみたいなところがあったね。ちなみに、グレイヴを討伐した後、ボクたちが【救国の五人】って呼ばれるようになった時、よく分からないけど、二人が本気で殺し合いじみた喧嘩をしたよ。そん時は、ウィズ様とキリア様に止められて、そこからサラとリュウヤ、コタロウは完全に仲違いし始めた、かな」

「……何を隠しておるのじゃ? コウヤが知っておいた方が好いこと、とは何じゃ? それが、リュウヤの本当の実力に関わることかのぅ?」


 簡単に説明すると言いつつも、遠回しな言い方をするレイリィンにヤンフィが焦れた。探るような視線で睨み付けると、レイリィンは耳をペタンと垂らす。


「隠せないね――リュウヤは、【勇者】なんだよ。だから、本気を出したらコタロウより確実に強いはずさ」


 勇者、という単語自体はよく耳にする称号だが、それがどんな意味を持つのか、煌夜は理解出来なかった。しかし、ヤンフィはその単語に目を見開いて、驚愕に言葉を失っていた。


「ちなみに、言い難いんだけどさ。もし万が一、コタロウが世界蛇に与していて、レーヌに魅入られているとしたら――分かるだろ? リュウヤはコタロウを殺さざるを得ない」

「よもや、異世界人が、【勇者】に、選ばれた、と云うのか?」

「いや、正確には違うよ。選ばれた【勇者】は、別で存在してるからね。リュウヤの異能が【勇者】なんだよ」


 ヤンフィが息を呑んでいる。しかし、煌夜は理解が追い付かなかった。勇者とはそもそも何ぞや、である。


「リュウヤはずっと、その異能を隠してたから、それもコタロウは気に喰わなかったみたいだね……」


 レイリィンの手元の水晶が赤い光で明滅し始めた。それを見て、レイリィンが水晶に魔力を流し始めた。今度は色が青白く変わり、足元から魔法陣が浮かび上がる。


「転送陣、か――」

「――タニア様も、マユミ・ヨウリュウ様も、無事に攻略出来たみたいだね。移動した先では、すぐに第十三の試練が始まるから警戒しておいてね」


 言うが否や、魔法陣の輝きに包まれて景色が変わる。

 飛ばされたそこは、天井が見えないほど高く、奥行きがだいぶ広い巨大な空洞であり、正面奥には、崩れかけた遺跡があった。遺跡の入口には、閉ざされた巨大な金色の扉で塞がれており、入口を護るようにして、空洞の中央に金色の鱗を持つ巨大な竜が寝そべっていた。

 辺りを見渡すと、少し離れたところに、タニアとマユミが立っていた。二人とも転送陣で無事にここまで辿り着けたようだった。


「嗚呼、素晴らしい! アレは、竜種の魔貴族か?」


 マユミが巨大な竜を前にして、歓喜の声を上げていた。だが、飛び掛かるのをグッと堪えて、ヤンフィに近寄ってきた。


「図体がデカイだけにゃ? アレが、ここの門番にゃ?」


 タニアはそんなマユミに呆れた顔を向けながら、巨大な竜を指差した。二人の姿を認めたレイリィンは、力強く頷きながら説明する。


「お疲れ様です。タニア様、マユミ・ヨウリュウ様。アレは、不死竜ゴールドアーク。ここの最終門番であり、このダンジョンに魂を囚われた亡霊です」


 ヤンフィの近くに集まってきたタニア、マユミに、レイリィンが指差しながら解説する。一方で、不死竜ゴールドアークは、現れたヤンフィたち侵入者に一瞥だけしたが、すぐに視線を逸らしてまた眠り始めた。舐められているのか、気にも留めていない様子だ。

 その様を見ながら、ふむ、とヤンフィが腕を組んで思案顔になる。

 目の前に横たわる不死竜ゴールドアークの格は、控えめに見ても、魔王属に匹敵する実力を思わせた。しかし、ヤンフィの知識を総動員しても不死竜ゴールドアークなどという竜種は知らない。


「レイリィンよ。こんな竜を妾は知らんが、若い竜か? それにしては、明らかにここに至るまでの魔族とは一線を画す実力を感じるのじゃが……かなりの強敵じゃろぅ?」

「不死竜ゴールドアークは齢千五百年を超える古龍だよ? 鑑定の魔眼で視れば分かると思うけど? 確かに、かなりの強敵、なのかな? まともに闘えれば、結構シンドイかも知れないね――でも、そんな苦戦には絶対にならないよ?」

「どういう意味じゃ?」


 マユミがウキウキとした表情で不死竜ゴールドアークに飛び掛からんとすると、それをレイリィンが手で制止した。


「不死竜――アレは、その二つ名の通りに、決して死なない呪いを受けた竜でさ。死にたくても死ねないから、もはや最初から闘う気がない、って言うか、何をされても無抵抗なんだよ。いままでも、ウィズ様が魂を消滅させても、次の侵入者が現れれば復活するし――」


 言いながら、レイリィンが魔力の一閃を不死竜ゴールドアークにぶつけた。その一撃は畳んでいた翼を貫き、背中の一部を抉り取った。紫色の出血と、凄まじい爆発音が響いた。即死こそしないが、かなりのダメージを与えたはずだ。

 けれど、不死竜ゴールドアークは身動ぎ一つせず、レイリィンを一瞥しただけでまた眠り始める。


「…………何だ、アレは」

「ね? マユミ・ヨウリュウ様の期待にも応えられないよ? 殺せば、次の部屋に進める。殺すのは、とっても簡単」

「痛覚がにゃいのかにゃ?」


 タニアは、自分もやってみたい、と軽い所作で魔槍窮を放った。それは不死竜ゴールドアークの頭部に直撃して、一撃で首から上を弾き飛ばした。直撃する寸前、チラとその魔槍窮を見たようだったが、避ける素振りも防御する素振りもなく、本当に無抵抗に受けていた。

 頭部を失った不死竜ゴールドアークは、そのままぐったりと動かなくなる。


「――まさか、これで終わったのか? それとも、不死竜の名通りに、まだ生きておるのか?」

「もう終わりだね。これで第十三の試練は完了だよ」


 ヤンフィが恐る恐ると問うと、レイリィンが遺跡に向けて歩き出す。途端、頭部のない不死竜ゴールドアークの巨躯が瘴気となって消え去り、遺跡の入口を塞いでいた扉が音を立てて開いた。


「――この先に、リュウヤとサラが居るのかのぅ?」


 遺跡の入口に足を踏み出すレイリィンに、ヤンフィが問い掛けた。


「うん。居ると思うよ――行かないの?」

「往くさ。じゃが、心の準備をさせよ」


 オーラドーンでの谷地虎太朗との邂逅を思い返した。

 果たして、竜也やサラは、煌夜と逢ったらどんな反応を見せるのだろうか。どんな展開が起きるのか、正直なところ不安でしかなかった。


(――コウヤよ。安全が確認出来るまでは、くれぐれも動くでないぞ?)

(……ああ、分かってるよ。分かってるけど……二人がいま、どんな風になってるか……ちょっと正直、気が気じゃないって言うか……)

(兎も角、心を落ち着かせておけ)


 煌夜とそんなことを言い合いながら、ヤンフィはタニアとマユミに目配せした。それだけでタニアは察して、レイリィンの後ろに続いて先行する。


「タニアはコウヤを護るように、少し後ろを歩いたらどうだ? 私が先行しよう――【救国の五人】と相まみえる機会自体、そうそうないからな」

「……分かったにゃ」


 マユミがニンマリと笑顔を見せながら、タニアを押し退けて先行した。そんなタニアたちを見てから、レイリィンがスタスタと遺跡の中に姿を消す。

 遺跡の中は長い一本通路になっており、少し進んだところで行き止まりに到達した。


「また、転送陣か――先に行くぞ」


 行き止まりの床には、巨大な魔法陣が描かれており、レイリィンは躊躇なく魔法陣を踏んでその姿を掻き消した。

 どこかに転送されたようだ。続いてすぐマユミが転送した。


「ボス、一緒に行くにゃ」

「うむ。警戒しておけよ?」


 ヤンフィはタニアと頷き合いながら、同時に魔法陣を踏む。瞬間、青白い光と共に転送が発動して、次の瞬間には景色が変わっていた。

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