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2015年/短編まとめ

無秩序女子高生

作者: 文崎 美生

「胸かお尻か」


ずいっ、とマイクを持つような形にした手が、押し付けられて首を傾ける。

現在の時刻お昼休み後半。

場所は体育館。


高校に来てから驚いたのは、この体育館の狭さとグラウンドの無駄な広さだった。

体育館は中学の半分位の広さに、グラウンドは倍以上ある気がする。

田舎だよなぁ、なんて思いながらステージの上に座って足を揺らした。


ぼんやりしているボクに向かって、ステージ横に立つ彼女はもう一度「胸かお尻か」と問い掛ける。

ボクに向けた腕とは逆の手で、隣の子の胸とお尻をぱふぱふしているけれど、セクハラじゃないだろうか。


「……ボクは胸がいいなぁ」


軽く首を傾けながら言えば「やっぱり」なんて声が返ってきて、何がだ、と思う。

思ってしまっても仕方がない気がする。

だって何がやっぱりなのか分からないし。

少しだけ眉を寄せるボク。


「そもそも、何でその話になったの」


「……分かんないけど」


五時間目が体育ということで、お昼ご飯を食べて、少しだらけてから、体育館へやって来た。

更衣室は体育館の隅っこの階段を上がった所にあって、いつも通りダサダサな学校指定ジャージに袖を通したわけだが。


そこまではいつも通りで、体育が始まるまでお喋りをしていたのもいつも通り。

そうして何故か、少し下世話で、女子高校生がするのか?と疑問に思う話題になっていたのだ。

いや、本当に何でだろう。


テーマは『女の子は胸かお尻か』だ。

因みにボクは胸派。


「何で胸なの!何で何で」


ステージの上に座るボクを引きずり落とそうとするように、彼女が足を引っ張って来る。

駄々っ子のような彼女は、背も小さいし高校生には見えない子で、妹と同じ名前ということで名前を呼ぶ時に、いつも少しだけ違和感を感じる子。


「何々、サキちゃんはお尻が好きなの?」


ぐっ、と腕を突っ張って落ちないようにしながら言えば、彼女――サキちゃんは手を離してきょとん、とボクを見上げた。

「いや、おっぱいが好き」と言い放つ。

きょとん、とした顔のままでだ。


そうしてボクの方へと手を伸ばして来るから、その手を払い除けて、ぱふぱふされていた子を見る。

ぱふぱふされるだけの胸は持っているようだが、本人は大して気にした様子もなく「どっちでもいいよ」とのこと。

それが胸かお尻かについてなのか、触れることに関してなのかは分からない。


「お尻に関しては、尻枕で確認してこそだから」


「うわ、それ真面目?」


「真面目真面目」


ケタケタと笑えば、何とも言えない視線を向けられて、笑い声が大きくなる。

胸もお尻も足も腕も顔も心も、基本的には譲れない要所要所は存在するから、どっちかに全てを絞れるかと言われれば難しいと思う。


「だけど胸って言っても貧乳が好き、とか堂々と宣言されてもロリコンっぽいし変態っぽいよね」


ガンガン、と音を立てて踵でステージの側面を蹴る。

ボクの発言に、まぁ、確かに、みたいな空気を出す二人に、またしても笑い声を漏らす。

育てるのが好き、とかある意味変態だ。


だからと言って巨乳と答えても、女子のほぼ半数以上の反感を買うだろう。

男子諸君、ご愁傷様だ。

そっと心の中で手を合わせておく。


「サクもあるもんね」


「何が……」


ふに、とダサダサジャージに包まれた胸元に、私より小さめの手が触れる。

胸というのは脂肪の固まりで、これで性的興奮を得るのか男子諸君、とか思っていたけれど、自分が触られるとなると色々話が変わる気がする。


一瞬だけ固まって、直ぐにその手を払い落とす。

それとほぼ同時に昼休み終了のチャイムが鳴って、人の胸を触ったサキちゃんは笑顔で走り出した。


胸元を押さえ付けて「触られるのが好きなんて言ってねぇよ!!」と叫ぶボク。

昼休み終了のチャイムがかき消されたけれど、そんなことはどうでもいいこと。


どっちを推してもいいけれど、セクハラは駄目だと思う。

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