残念系かもしれない伯爵令嬢の独白
ノリと勢いでやってみた貴族モノ。
はい、どーもー!!
私はウィリア・シトロン・エーデル! 現在15歳!!
そしてエーデル伯爵家の1人娘でっす!!
現在、私と一緒に人生を歩んでくれるお婿さん探していますっ!!
……本当はね、こんな風にのりのりで挨拶したい。けれどね、私は一応伯爵家の娘だからおしとやかにしなくてはならないのよね。というのも、社交界で変な噂が立つと家に迷惑をかけるから。そんな事になったらお婿さん来てくれないから。となったら大問題だからね!
ごめんなさい、お父様お母様。こんな娘に育ってしまいました。
因みに影響を受けたのは護衛についてくれた騎士のおっちゃん……ごほんごほん、凛々しいオジ様たち。微妙にノリがよくて、大抵は貴族の三男だったり、平民上がりだったりとフレンドリーで気兼ねなく接してくださった素敵な方々。その上私が悪い事をしたらきっちりしかってくれたので、両親同様尊敬しています。
あぁ、脳裏に浮かぶのは顔傷があったり、髭が立派だったり、眼鏡が似合っていたりとナイスミドルな騎士の皆様。どういった理由で私の周りにオジ様な騎士が護衛についていたのかは不明だけど……。
そんな私が今現在いるのは、とある方が開いたパーティー。うぅ、私が苦手としている物……。社交って気合入れないとボロが出るから、猫被って「おしとやかなお嬢さん」を演じているのですよ。
(だーけーどー、こういう雰囲気苦手なのよね……)
お嬢様方ってさ。妙に気取ってる子が多い気がするし。だからといって私と気が合いそうな気質の子は大抵大きなパーティーとか出ない。妙に爵位が高いのも考え物だと思う。それ言っちゃいけないけど。
おまけに女の子同士でも火花散ってたりするし妙に怖いんだよ。恋愛なんて遠くで見ていたほうが面白いじゃない。私自身の事なんてどーもこーも。ほぼ政略結婚で決まりだろうし、結婚した後ででも相手に惚れていけたら儲けとしか考えていないわ。エーデル家が欲しいのは領の皆の為と王国の為に共にがんばれる婿殿なのよ。それでいて猫被らずプライベートだけは気楽に付き合える相手……っていうのは我が儘だろうなぁ……。
いっそ異能力とか持って冒険者になれたのならば……とか思うのだけど、そうもいかないのが人生なのよね。
とまぁ、1人たそがれていたら若い伯爵家の次男坊に話しかけられた。この金髪金眼の青年、婿入り先探していたけど微妙に浮気性って噂聞いてるのよね……。今も私に挨拶して早々甘いマスク(お嬢様方談)で微笑みかけてきてる。
「ウィリア嬢、ご趣味は何ですか?」
「詩を読むことと、刺繍ですわ」
これ、建前ね、建前。本当は「闘技観戦」と「賭け事(の真似事)」なのよ。
こっそり闘技場を観戦しにいってほんのちょっぴり……そうね。お金を賭けたつもりで、勝利を予想する事! 賭けって楽しいのよね。まぁ、節度を持ってやらないと家つぶしちゃうし。だから怖くてお金賭けられないし。
相手はいい笑顔で「実に貴女らしい」とか言っているけど猫被ってる事気付いてないなこりゃ。
「そのドレス、とてもお似合いですよ」
「有難うございます」
……ごめん、ドレスってすごーく窮屈で苦手なのよ。もっとラフな普段着の方が好き。下町の若い娘さんたちが着る衣服をこっそり入手し、それ纏って街をぶらつくの楽しい! ぶちまけてしまうと殿方の衣服の方が動きやすそうで一度着てみたい……。兄か弟がいれば絶対着たのに!!
そう言っている間から、この次男坊瓜二つの妹君(そりゃ、双子の妹だもの!)がやってきた。彼女ってば凄く押しが強いから苦手なのよね。香水もちょっとキツいし。若いのにどうしてそんなに化粧が濃いのかと……。噂じゃ年上好みの皇太子さまの側室狙ってるみたいだけど、どーよ。
「今度、お茶会を開きますの。是非いらしてくださいまし。美味しいお菓子が手に入りましたの」
「有難うございます。伺わせていただきますわ」
……うん、がんばる。実は私、甘いお菓子って苦手なの。果物なら大好きなんだけれども……。あと、蛇足だけどお酒に弱いの。特にワインは身体と相性が悪くて悪酔いしちゃう……。
うーん、とにかく普段は猫被ってるの。猫被らないと……厳しい社交界は生きていけない!!
そう、これは戦い。私の戦い。戦わなければ生き残れない!!
いや、だって、エーデル家の世継ぎだし。……婿取らないといけないし。
『優秀な婿を娶って男の子を産んで頂戴……私のウィリア!』
とまぁ、母上が厳しいの……。あ、因みに私の母が当主で父は入り婿です。これでも父の働きは優秀で国王とか色んな人たちに評価されて近々公爵家にランクアップするんじゃないかとか囁かれてるらしいんだけどちょっと怖いわぁ……。ねたまれたりしていたら怖いわぁ……。がくがくぶるぶる。
など色々考えていたら近づく影。オーラ半端無いイケメンが来ている。そして、そのクールな水色の目で私を見ている……。
「これはウィリア嬢。今日も緑色の瞳が美しいね」
そんな事を言ってくるのは、アッサム・レダ・コーネリアス公爵。社交界の花形ともいえる人で、私にとってはどうも苦手意識のある幼馴染。いや、私、こういう人苦手なんです。子供の頃はこうじゃなかったんだけどな。なんでかなぁ。
「あ、ありがとうございます、コーネリアス公爵」
「ウィリア、僕たちは幼馴染だ。昔のようにアッサムと呼んでおくれ」
私が笑顔を作って(ここ重要)対応していると、アッサム様は自然な仕草で耳打ちしてきた。おい、人が見てるのに耳元で囁くな。てか、色んな令嬢が釘付けだろうが! 私は貴方のオーラが苦手なんだよつか人の話を聞いてくれ頼む!
内心とはいえ、男言葉がでてしまった……。表に出したらもうアウトだわ!
気を引き締めて、私は身分の事を出してみる事にした。親しき仲にも礼儀あり、でしょう?
「あの、アッサム様。貴方さまはもう公爵となられたのですから身分とか……」
「つれないな。昔は一緒によく遊んだというのに」
自然な仕草で手を取るアッサム様。ごめん、周りの女性の視線が怖い。ほら、あっちのナイスバディでツリ眼ぎみな公爵令嬢が私にらんでるから! あぁもう、婚約者とかなんでいないんだよ私ら!!
私は苛々を押し隠して辺りをそっと見渡し……見つけた。眼鏡をかけた紫の目をした地味ぃな青年! あ、因みに爵位は侯爵で次男のカルサイト・クルム・カルラ殿! ……下町で身分隠して子供たちに文字教えてたから覚えてるんだよね。因みに向こうも私の猫かぶってない姿知ってるの。あ、そんな彼が父上と話してる。そして父がこっちを見た! ちゃーんす!
「申し訳ありません。父が呼んでおりますので」
「そうか……。では、また後で」
私は一礼し、キラキラとしたアッサム様から離れたよ。足早にね!! そして、父上の元へ。ナイスタイミングで目が合ってくれたわ。
で、今現在。私とカルサイト(2人っきりの時はそう呼んでいる)はこっそりパーティー会場の壁によっていた。
「兄が世継ぎだし、別にいいかなぁって思うけどお嫁さん探しのために連れていかれるんだよね」
「……私は私が世継ぎだし、婿探しがんばれって言われるのよね」
「いいトコに婿入りしろって両親が言うけどさ。家柄がつりあう所のほうがいいと思うんだよねぇ。あとは相性かなー」
「うーん、我が家が絶賛婿募集中。まぁ、私は貴方が夫だったら気楽だしいいかな、と思うのだけどね」
「確かに僕も、ウィリアがお嫁さんなら気楽。やりたい事も出来そうだからね。でも、あれだよ。僕の家はぎりっぎり侯爵ってトコだからねぇ……」
私たちは互いにこの世はままならない、と苦笑しつつ、パーティーを見る。こうして並んでいると、すっごく楽に呼吸ができる。ありのままの自分を見てくれるこの人がこの先もずっと一緒だったら、私はどんな事にでも立ち向かっていけるかもね。
「でもさ。君も有能と聞くよ。その事も含めていっちゃうけどさ……私の婿になる?」
そんな一言を小さな声で言ってみたら……あら? カルサイトの顔がうっすらと赤くなっていた。彼は眼鏡を正して、真面目な声でこう言った。
「その一言で目標が、できたよ……ウィリア」
なんだろ、妙に胸が騒がしい。そんな眼で見つめられると、期待しちゃうじゃない。お願いだから、無茶はしないで。でも……、残念な私を理解してくれる貴方を婿に願っていいのなら、本気にしちゃうわよ、私。
この時、私は知らなかった。
カルサイトへの想いが恋である事に。
そして、その後カルサイトとアッサムが恋の鞘当をする事に。
(つづかない)
チープにしてみたつもりです。
お気軽にさくっと。