ろく
「いち!!明日から冬休みあーんど!!クリスマスだ!!
どっかでかけよーよ!!」
「どっかってスキーかなんかか?」
「ばかか!!私がスキーなんかできるか!!
相変わらずお前は私をわかってないな!」
「わかってて言ってるんだよ。」
「ぐぎぎ…相変わらずお前はムカつくやつだ!」
「ししし、かずなりくん、あんま薮坂さんをからかっちゃだめだよ。」
「またお前か、山中さん。
私らになんか用か?」
「うん、薮坂さんは相変わらず薮坂さんだね。
用もなにも私、かずなりくんの席の隣だもん。
会話に入ったっていーじゃーん。
ねぇ、かずなりくん?」
「やめろ、おれに話をふるな。」
「いち!!お前まさか私に内緒でこの女とおしゃべりしてるな?!」
「おれはあんたにいちいち話した相手を報告しなきゃいけないのか?!」
「いちは女たらしだからな!!
まさか…あんなことやこんなことしてないだろうな?!」
「どんなことだよ?!
あんた意味わかって使ってんのか?」
「そうだよー、薮坂さん。
私とかずなりくんは授業中あんなことやこんなことしてるんだよー。」
「うわわわん!!
いちの浮気者!!浮気者!!浮気者!!」
「……山中、あんたわかっててやなめをからかうな。」
「ししし、やっぱり面白いね、薮坂さんは。
さあてと!
学校も終わりだし薮坂さんをいじったしクリスマスプレゼントでも買いに行こうかな。」
「え?山中さん、か、彼氏でもいるの?」
「…嬉しそうだな、あんた。」
「ん?いないよ。
自分へのプレゼントだよ。
あとかずなりくんにね。」
「帰れ!!お前もういますぐ帰れ!!
いちは私のだぞ!!」
「ししし、言われなくても帰るよ。
じゃーねー!!」
「はぁはぁ、なんだあいつ!性格悪いぞ!!いち!!」
「そればっかりは同意だな…。
よし、おれらも帰るか。」
「あ!!今日はね!!
私にプランがあるのよ!!」
「ん?プランって?」
「決まってるでしょ!
で、デートのよ!だから今日は黙って私についてきなさい!」
「お、おう。」
「ふふふーん。」
「おお、あんまこっちのほう来ないから知らなかったけどイルミネーションきれいだな。」
「でしょでしょ!
……まぁ…山中さんが教えてくれたんだけどね…。デートでもしてきなよって。」
「……そっか。
あんた、なんか最近いろんなやつと普通に話すようになったな。」
「んー、そうかも。
遊びにいくような友達ができたわけじゃないけど、なんか壁が一つなくなったような感じがするわ。」
「…それはあんたにとっていいことか?」
「もちのろんよ。
いますごく学校楽しいもん。」
「そうか、ならよかったな。」
「いちのおかげよ。」
「おれは何もしてないよ。」
「そうなのか?
1人でいたときは何年たっても上手くいかなかったのにいちといたらあっという間にこうなったぞ。
てか褒めてるんだから素直に喜んどきなさいよ、ばか。」
「そうだな。
でもまぁおたがいさまだ。」
「はぁ?なにがなんでどうなっておたがいさまなのよ?」
「おたがいさまだよ。
感謝してんだから素直に喜んどけよ。」
「ぬ?そっか。そうよね。そうだったわね。
いちがそういうならそうしとくわ。」
「ああ。
そろそろ買い物して帰るか。」
「ふひひ、それにはおよばないわよ、いち。
せっかくのクリスマスイブなんだから外で食べていきましょ。」
「え?料理作らないで片付けもしなくていいなんてばちが当たりそうだ…」
「いいじゃない。
たまにはお前も休みなさい。」
「……あんたがそういうならそうするか。」
「ならここにしましょうか。」
「えらい適当に決めるな、あんた。」
「う、うるさいわね!
文句あんの?」
「あってもなくても関係ないだろ。
行こうぜ。」
「ふひひ、相変わらずうるさいやつね、お前はー
「いらっしゃいませ。」
「あんたに言われたくないよ。」
「……なんで……」
「やなめ?」
「………こうすけ…」
「お客様はー…ってのぞみじゃん。
お前がこんなとこ来るなんて珍しいな。」
「あ?知り合いか?」
「……なんでこんなところに…」
「……どうしたんだよ、やなめ。」
「なんでって…お前は知らないだろうけど半年くらいまえからここで働いてんだよ、おれ。とりあえず空いてる席に座りなよ。」
「……ごめん、いち。
やっぱりここやめる。」
「……わかった、でよう。」
「……なんだよ、帰んのかよ。
またのお越しを。」
「やなめ、大丈夫か?」
「……うん。
ごめん…ごめんね、いち。
せっかく…クリスマスイブなのに…」
「いいよ、そんなの。
これから何回だってあるだろ。
そんなことよりあんたが心配だ。
とりあえずおれんちで休もう。」
「…うん…ありがとう。」
「………お茶飲むか?」
「……いらない。」
「……なんか食べるか?」
「……大丈夫。」
「……布団ひくか?
ソファで寝てるよりは楽だぞ?」
「……うん…。」
「よし、わかった。」
「ありがとう、いち。」
「…………なぁ、やなめ……。」
「なに?」
「……さっきのやつが誰かって聞いたらやなめは困るか……?」
「……………」
「……やっぱりなんでもない。」
「弟よ。」
「…え?」
「何回言わすのよ。弟だってば。」
「そ、そっか、そうなのか。」
「なんで嬉しそうなのよ。
お前ってほんとガキだな。」
「う、うるせーな……。
そりゃ気になるよ…」
「ふひひ、大丈夫よ。
後にも先にも私にはいちしかいないんだから。」
「……だとおれは嬉しいな。」
「そうね…そうだといいな。
これからもずっと私の隣にはいちがいて、一緒にごはんを食べて一緒にばかなことして一緒にぐだぐだして…たまにケンカなんかしちゃったりして…
あ…布団ありがとう。」
「いいよ。」
「ねぇ、いち…私が寝るまで一緒に布団に入ってて。」
「……いいよ。」
「ふひひ、いちは体温高くて暑いな。」
「悪かったな…。」
「ううん、落ち着く。
ずっと…ずっといちとこんな風にいれたらいいのにな…そうすれば私はずっと幸せなのに……他になんもいらないのに……」
「……あんたが望んでくれるなら…望んでなくても一緒にいるよ、おれは。」
「………幸せ。
この先、いちに捨てられてもこの気持ちはなくならないよ。
ありがとう……いち。」
「どうしたんだよ!?
どうしてそんなこと言うんだよ!やなめ!!
さっきからおかしいぞ、あんた!」
「じゃぁ聞くけど、これから何があっても私と一緒にいれるの?なにがあってもよ。」
「いるよ。」
「ふふ、予想通りの、期待した通りの言葉をくれるな、お前は。ありがとう。少し元気でたよ。」
「………なんかあんたらしくないよ。」
「…………」
「………やなめ?」
「……くー…くー…」
「……寝てんのか…。
………買い物行かなきゃな…。」
「……くー……」
「やなめ……ごめん…。」




