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子羊と獣
霧の中に迷い込んだ子羊さ
僕らはみんな獣に怯えて暮らしてる
どこを向けばいいのか どこへ行けばいいのか分からぬままに
声だけを道しるべに進むしかない
僕らは何も知らない
生まれたての子羊だから
獣に囲まれて暮らすしかないのさ
牙を持たぬ子羊は 牙を兼ね備えた獣には勝てぬ
世界はそういう風にできている
子羊の力なんか微々たるものだ
何匹集まったところで風穴すら開けられない
僕らの声なんか誰にも届かない
獣は聞いちゃなんかくれないさ
格下の僕らの声なんて
自分だけが正しいと思っている獣には決して届かない
子羊の叫びも嘆きも怒りも
きっとそよ風程度にしか思ってないよ
獣だって間違うことはあるのに
やつらは正しい道を進んでいると信じてる
その傲慢さに 僕らは傷ついている
子羊が正しいことだってあるのに
はなから間違っていると決めつけている獣はなんて滑稽なんだろう
だけど子羊もいつかは獣になる
滑稽で傲慢な獣になってしまう
子羊のままじゃいられない
染まってしまうのが怖い
恐ろしくてたまらない
僕らも結局愚かな生き物なのさ




