本音
桜木さんが欠席して一週間がたった。同じ班で帰宅部の私、白川沙織は担任に授業のノートを届けるようにたのまれた。
桜木さんの家は学校から徒歩3分くらいで、西洋風の綺麗な家だった。呼び鈴を押してみると、桜木さん本人が出てきた。私が
「授業のノートを届けに来たんだけど・・・。」
と言うと、桜木さんは
「どうぞはいって。」
と言って、部屋まで案内してくれた。
桜木さんの部屋はきちんと整頓されていて、清潔感があった。桜木さんはオレンジジュースを入れて持ってきてくれた。
「あの・・・。この前は、なんかごめん。」
私は言った。すると桜木さんは
「え?」
と、疑問を浮かべた。私が言った。
「いや、あの、病弱だとかいったこと。」
桜木さんは少し驚いたようにこう言った。
「ずっと気にしてくれてたの?」
私は
「いや・・なんか気に障ったみたいだし・・。怒ってたみたいだったし・・。」
と答えた。すると
「え?別に怒ってないけど?」
と桜木さんが答えた。怒ってない?じゃあ・・・
「じゃあどうして機嫌がわるくなったの?」
私が言うと桜木さんは
「別にあの時は機嫌が悪かったわけじゃなくて、ちょっと熱っぽかったからそう見えただけかも。」
と答えた。
「そっか・・・。」
私が言うと
「なんか気を遣わせちゃったみたいでごめんね。」
と桜木さんが言った。
「ねえ、桜木さんはさ・・。」
と言ったら
「冷でいいよ。」
と言われた。
「じゃあ冷ちゃんは・・・。」
と言ったら、また
「・・・できれば呼び捨てで。」
と言われた。
「じゃあ冷は・・・。お母さんは何してるの?働いてるの?」
と私は言った。家に入ったとき、他に人はいなかったみたいだった。
「うん・・・。まあね。うち、母子家庭だから。」
「そっか・・・。」
私はそれ以上聞かなかった。
「ねえ、明日はこれる?学校。」
「うん。もう熱も下がったし。」
私はオレンジジュースを飲んだ。全部飲んで今度はこう言った。
「今日はもう帰るね。」
「うん。わかった。」
私は階段を下りて玄関へ向かった。私はドアを開けて帰ろうとした。そのとき冷が私を呼び止めて聞いてきた。
「青春ってなんで青い春って書くんだと思う?」
「えっと・・・私たちがケツの青いガキだからかな?」
こう答えた途端、冷は笑い出した。
「そうね。そうかもしれない。呼び止めてごめんね。」
「?うん・・・じゃあね。」
なんだったんだろう。私はそのまま家に帰った。