転 4
結論から言うと、千秋に間違いはなかった。
扉の先にあったのは、見渡す限り1面に花が咲き乱れ、地平線までそれが続く、とんでもなく開けた場所だった。
「さすが、千秋。ここが最終地点だろう」
5メートルくらい先にいる千秋に声をかけた。
千秋は笑顔で俺の方を振り返ったあと、急に顔を曇らせて突如叫んだ。
「正太郎、後ろ!」
今まで聞いたことがないほど千秋の声は焦燥感一杯だった。俺は思わず硬直してしまい、一瞬の間があってから後ろを振り向くと、俺に向かって弓矢を絞るよく見知った男の姿。
「冬木?」
改心して俺たちの頼もしい仲間であったはずの冬木慶吾が、明確な殺意を持って、俺を睨みつけていた。
「もう、お前に用はない。死んでしまえ!」
そう言って、冬木は矢を放つ。
「危ない!」
千秋が後ろから俺に向かって飛びついて、俺の頭を地面に叩きつけた。そのおかげで矢は辛くも俺の頭上を通り過ぎたが、千秋の肩をかすめてしまった。
「大丈夫か!」
起き上がって、横で倒れている千秋に声をかけた。
「僕は大丈夫だ。だから、正太郎はあいつを止めて」
「くそ!」
残念ながら、千秋は痛みに動けそうにない。俺は地団太を踏むと、冬木に立ち向かっていた。
「ふん。馬鹿め」
そう言って千秋の方に照準を合わせ、矢を向ける冬木。しかし、お前のやりたいようにはさせない。
「何!?」
冬木の矢を剣で切り捨てる。
僅かに動揺している冬木との距離を、俺は怒涛の勢いで縮めていく。
しかし、これも冬木の罠だった。
「ハッハッハ。この距離なら避けられるわけがない」
冬木は俺の瞬きする間に矢をつがえ、放った。俺に向かって。
全力疾走の俺は避けようとするが、慣性の法則で急な方向転換はできない。もうだめだ。
そう思ったとき、千秋が苦し紛れにこの迷宮で使ったことのない新しい究極の魔法を行使した。
次の瞬間、俺は凍りついた。
わざと短くしました。




