表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/40

転 2

「じゃあ、職業ジョブを決めてさっさと行こう。早い者の方が有利なのは、自明の理だからね」

 笑いが収まった後、千秋が真っ先に言った。

 アナウンスは笑っている間に流れていたが、何とかだいたい聞きとっていた。

「僕は魔道士にするね」

「私は僧侶です」

「俺は後方支援が良いから、猟師が良いね」

 と千秋、リッカさん、冬木は宣言してしまったので、

「じゃあ、俺は何にしようかなあ」

 と悩んでいると、

「正太郎は剣士で全線で立ってくれると心強いな。動体視力良いし、きっと反応の早い人の方が、モンスターの攻撃を回避できそうだし」

 千秋が剣士を推した。

「でも、それって一番身が危険なんだよな」

 俺は心情を吐露した。普通に生きて帰れるなら、喜んで引き受ける。が、デス・ゲームである今回、それは軽率ではないかとも思える。

「正太郎さん、前衛を誰かがやってくれないと……」

 リッカさんが苦しそうな顔で言ってくる。これは心に痛いな。

「春風君。俺からも頼む」

「仕方ないな。ま、何とかなるだろう」

 楽天的であると自負する俺は、結局1番危ない役を引き受けたのだった。

 1度リッカさんによる説明を受けたのにも関わらず、ボタンを間違えたという前科があるため、今回は慎重に職業ジョブを選択した。

 すると、剣士の格好というのだろうか、突然俺の体が光に包まれたかと思うと、和風な衣装と刀を装備し、下駄を履いていた。

 もしかして俺だけなのか、と思い、周りを見渡すと、他の人も同様に変身している。

 たとえば、千秋は魔道士らしく黒のロープを着込んでいて、木の棒に蛇が巻き付いている禍々《まがまが》しい杖を持っていた。それが恐ろしく似合っていて、西洋の黒魔術師じゃないかと思わせそうな雰囲気を醸し出すのは、やはり千秋だけがなせる業だ。普通はそんな恰好が、自然に思えないはずなのに。

 ところで、リッカさんはシスターの衣装で、これがまた神々しく美しかった。いつもよりも清潔感が増したというか、より尊く清いものになった気がする。

 ただ、それとは対照的に、冬木は機能性重視の格好で、見栄えはたいして良くなかった。

「リッカさん、似合ってますね」

 リッカさんにそう声をかけてみた。素直な感想である。別に下心はない。

「そうですか。ありがとうございます。正太郎さんも、『和』がうまくマッチしてますよ」

 どうやら俺も似合っているらしい。それは良かった。そうなるとやっぱり、

「冬木君は意外と似合ってないね」

 千秋が時速160キロメートルの直球を放ってくれた。俺も激しく同意したいが、そんなことを言ったら、いきなりチームが崩壊だ。

「そうか? ちゃんと決まってると思うが。リッカさんもそう思いますよね?」

 リッカさんに目線で肯定するよう、サインを送った。

「ええ、そうです」

 とってつけたような棒読みだったが、何とかそう言葉にしてくれたおかげで、冬木は機嫌を悪くすることなく、

「じゃあ、準備もできましたので、行きましょう」

 いよいよ、迷宮探索が始まった。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ