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承 12

 廊下にいるのは、俺と冬木の2人だけ。上司がいなくなったからだろう、冬木は偉そうな口をきいてきた。

「てめぇ、何デタラメ言ってるんだ。俺より頭が良いやつなんて、この世に存在するわけがない」

「ああ、いない」

 俺は即答する。その通りだからだ。

 あっさりと認めたことに、冬木は腹を立てたようで、

「この嘘つきめが」

 と殴ってきた。

 俺は半身になって避けると、そのまま手首を掴んで投げた。

「痛てぇ」

 とわめく冬木を無理矢理立たせると、俺は腕を十字に固めながら、

「ちょつと来やがれ」

 と頑なに拒む食堂へ連行した。

 その間、千秋に電話する。

「おい、千秋出てくれよ」

 声には出さなかったが、何度も心の中で祈った。

「やあ、正太郎。僕は今、作業が終わってくつろいでいる所なんだけど」

 何の作業だし……とは思いつつも、千秋のことだから、未来人に頼まれて何かの発明でもしているのだろう。

 それよりも……。

「千秋! お前の貴重な時間を俺のために使ってくれ!」

「えー」

 千秋の反応はいまいちだ。

「お前のことを馬鹿にしてるやつに一泡吹かせたいんだ」

 別に冬木は千秋のことを知らないし、馬鹿にしているわけでもない。そもそも千秋のことすら知らない。

 しかし、プライドの高い千秋は餌に食いついてきた。

「それは看過できないね。軽くお仕置きをしよう」

 そう言って昔ケンカ番長を病院送りにしてしまったのはどこのどいつだ。……お前が馬鹿みたいに挑発するから、あの時番長はマジで切れて、俺たちを本気で殺す気だった……から俺が正当防衛の名の下にフルボッコにしちまったんだが、もとの原因はお前だ。発言はくれぐれも気をつけてくれ。俺はお前の用心棒だが、人を傷つけるのは好きじゃないからしたくない。俺は平和主義なんだ。

 一瞬の間に過去の事件を思い出したが、それもたちまちのうちに消し去る。

「食堂に来てくれよ」

 それだけ言って電話を切る。

 腕十字で思うように動けない冬木に凄みを効かせて言ってやる。

「これからお前のプライドをズタズタにしてやる。覚悟するんだな」

 冬木はほんの一時顔を曇らせるが、やがていつもの顔に戻って、

「ふん、そんなハッタリには引っかからない」

 俺は無言で腕にかけた十字固めを強くする。激痛に顔をしかめる冬木。

「残念だが、今回はブラフじゃないんだな」

 それ以降俺たちの間に会話はなく、しばらくして食堂に着くと、千秋と藤原さんが談笑しているのが目に入った。千秋は野菜ジュース、藤原さんはハンバーガーを食べている。千秋は学校でもいつもそうだったし、藤原さん

「……それでな、春風君がな」

 藤原さんは俺の話をしているらしい。しかも、どうやら2人はなかなか馬が合うようだ。笑いが絶え間なく続いている。

「あのー、食事中に失礼なのですが」

 と言った俺を、2人は無視している。

「千秋、こいつがお前を馬鹿にしてみればクズだ」

 その一声で千秋が目覚めた。

「キミか。僕に勝てると本当に思ってますか? 自惚れるのもいい加減にしたらどうです?」

 俺は、冬木にかけていた拘束を解きながら説明してやる。

「こいつがあの世で天才と呼ばれた男だ」

「ふーん、お前が天才か……全然そう見えないんだが」

 値踏みするような目つきの冬木に、ふてぶてしい笑みを湛えた千秋が、

「なら、勝負してみる?」

 宣戦布告。

「望むところだ」 

 それに冬木が応え、2人は勝負することとなった。





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