表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/40

承 7

更新が途絶えてすみませんでした!


実は一度途中まで書いていたのですが、

誤って保存しないまま消してしまい、

心が全治一日の骨折状態だったのです。


頼りない作者と拙い作品ですが、

どうか見捨ててやらないでください。


今回、クラシック音楽に関することが出てきます。

説明力の乏しい私の文では、意味不明の方が続出するでしょう。

しかし、ご安心ください。

物語としてピアノは大した意味を持たないので、

流して読んでもらっても大丈夫です。


それでは、本篇をお楽しみください!

 夕食後、建物内を軽くリッカさんに案内してもらったのだが、これがまた懇切丁寧なものだった。

 そして、俺は今、寝泊りする個室にいる。個室はホテルの上等なやつと遜色ないと思うほど快適、豪華であった。特にベッドはフカフカでよく眠れそうだった。

 ただ、現在9時。小学生でもないから、俺はまだ寝ない。

 どうせ暇だし、と思って消息不明の天才に電話する。

「千秋、お前どこにいるんだ?」

「正太郎、僕は今、とても忙しいから邪魔しないでくれ!」

 いきなり電話越しに罵倒され、以後電話自体繋がらなくなってしまった。

 未来に来た早々忙しいって、何をやってるんだ? とか、それに、どこにいるんだ? と思ったが、

「そうだ。何だったら探し出してやる」

 先ほどリッカさんが案内してない場所を虱潰しらみつぶしに当たっていけば、おそらく会えるはず。

 俺は個室を後にして、いよいよ独りで行動する。こっちの世界に来て初めてだ。

 まず、どこに行くか。

 リッカさんにさっきもらった建物内の地図をじっくり眺める。

 すると、ある部屋が目に留まった。

「音楽室? 学校じゃねえんだから」

 気になった俺は音楽室へと向かうことにした。

 幸運なことに同じ階だから、すぐ着くだろう。

 5分ほど歩いて、音楽室の前に立つと、ピアノの音が聞こえる。

 曲といい弾き方という、よく知った人物のだ。

 ドアを開けて入ると、俺は真っ先に叫ぶ。

「よお、千秋」

 俺の顔を見るや、すぐに顔をしかめる千秋だったが、それでも弾き続けている。

 リスト作曲の超絶技巧練習曲集の4番のマゼッパ。

 ピアノを弾いている人ならおわかりだろうし、そうでない人も「超絶技巧」と聞けば難しいことは理解できるだろう。

 実際問題、ピアノをそれなりにやってきた俺でも、まったく弾けない。しかし、それを容易く弾くのが千秋という男である。

 残念ながら千秋は大柄ではなく小柄な者だから、手の大きさや指の長さは一般人程度だ。それなのに、どんな難曲も涼しい顔でやってのける。

 何度でも言うぞ。千秋は天才だ。

 天才がやっとマゼッパを弾き終わる。難しすぎて、聴いただけではミスしたかどうかはわからないが、天才には愚問だな。

「相変わらず、クソ巧いな、お前は」

「そんなことはないよ。正太郎だってピアノ始めたの遅いのに、よく弾くじゃないか」

 なぜか謙遜する千秋。いつもならここで自慢するはずだが、そのま逆だ。俺はかすかな違和感を覚えた。

「それより、弾いてみなよ。このピアノは相当いいやつだよ」 やっぱりおかしい。普段の千秋は独占欲丸出しで、絶対に妥協はしないのに。

「なら、ありがたく弾かせてもらうぜ」

 俺は椅子の高さを調整すると、ピアノと正面から向きあった。技術力では千秋にまったく及ばない俺は、表現力で勝負するしかない。

 よし。弾く曲は決まった。

 ベートーヴェン作曲のピアノソナタ第8番「悲愴」の第2楽章。こちらはマゼッパと違って、ドラマやCMで使われる定番だ。そのため音楽に興味ない人でも、絶対に聞いたこととがあるはずだ。そして、その難易度は、技術的には相当易しく、表現的にはわりと難しめで、俺にうってつけだ。

 ……俺は心をこめて弾く。すると、どうしてだろう、両頬を液体が濡らしていた。

 弾き終わった後も、それは止まることを知らなかった。華厳の滝もかなわないほど、涙がこぼれる。

 その時、霞んだ視界の中に千秋の姿。そして、俺は驚いた。

「何で、お前も泣いているんだよ?」

 無意識のうちに問いを発していた。同時に、他人の涙を見た俺は少し冷静になって、俺が何故泣いたのか理解した。

 そうか、そういうことか、と独り合点する俺に、千秋がハキハキした様子で、

「ベートーヴェンのアダージョは本当に美しい!」

 なるほど。お前が泣いたのは、まさかのまさか、俺の弾いた悲愴に感動したのか。

 さすが、ベートーヴェン。あっぱれだ。

「正太郎は、どうして泣いているの?」

 だが、俺が泣いている理由は千秋のとは違った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ