承 4
更新がついにとまりそうです。
頑張りますので、応援してやってください。
――がdashになっていたので訂正しました。
俺はすぐさまリッカさんの手からピストルを奪おうとした。しかし、何者かに腕をつかまれる。
「千秋?」
俺の腕をつかんでいるのは、他でもない千秋だった。よく見ると、間違いなく被弾舌いたはずの千秋は出血すらしていない。
「おい? どうなってるんだ」
という俺の疑問の声は、2度目の発砲音によってかき消される。
もちろんリッカさんは俺に向かって撃っていた。しかし、俺はチクリと針が刺さったような感覚がしただけ。別段痛みを感じることはなく、まして赤い体液を見ることもなかった。
「ごめんなさい。ちょっと驚かしました」
テヘへ、と笑うリッカさん。今のはおもちゃのピストルだったのか。
「これはピストルと言えばピストルですが、医療用です。主に注射する時に使います」
「毎回毎回そんなでかい音がするのにか?」
「ちょっと改造して本物っぽくしただけです」
リッカさん恐るべし。医療器具を手品道具にしてしまったぞ。
「まあ、騙される正太郎も、正太郎だよね」
何、千秋は見破っていたのか。
「そもそも、50年後の世界で僕らの知っている銃が使われると、考える頭がおかしいんだよ」
と言いながら、千秋は俺の頭を差していた。
「確かに1960年ごろの警官が使っていたのは、ニューナンブM60という拳銃で、それは21世紀でも使われている。だけども考えてみなよ、21世紀なってはH&K P2000など新しいものに替わってきている。ならば、時代とともに新しい高性能な銃があってもおかしくないでしょ? 僕なら、レーザー銃程度ならあっても全然不思議ではないと思うけどね。きっとピストルなんて忘却の淵で独り泣いているんじゃないかな。人間という生き物は、古くなったものはポイとゴミ箱に投げるからね」
まるで自分は人間でなくて、第3者の立場から人間に対して皮肉を言っているようだった。
「ですが」
そう言ってリッカさんと対峙した千秋は、
「ただのおもちゃではないと推理します。僕らの頭の中に何かを埋め込んだのでは?」
するとリッカさんは、もう俺たちの察しの良さには馴れたのか、驚くことなく、
「そこまでは正解です。では、その後も当ててみてください」
「うーん、それはお手上げですね」
両手を挙げて降参のアピールの千秋に、リッカさんが種明かしをしようとする。
しかし、その時、俺の頭の中に解が見つかりかかった。今、リッカさんが必要性があって発砲したとするならば、その必然性とはなんだ……。
とりあえず、種明かしはまだにしてもらわねば。
「待った! 俺が解いてみせるぅ!」
2人とも顔を見合わせたが、俺の推理を聞いてくれるようだ。
「まず、脅かすのはオマケで、実は頭に何か入れるのが本当の目的だった、と俺は思う」
「さあ、どうでしょう?」
とぼけるリッカさんに俺はビシッと言う。
「なぜなら、ケータイもスマフォも過去の物。すると、どうやって連絡する? あと3日間あるんだろう? ということで、脳内型通信器具というのが俺の読みだ。きっとそんな技術があってもおかしくはないはずだが、どうだ?」
リッカさんの顔を見つめて返答を待つ。
「半分正解、半分不正解ですね」
残念でした、と笑顔で言うリッカさんは、実に魅力的であった。
「何だと」
俺は悔しかったが、リッカさんの笑顔が見られたからそれも帳消し。彼女の笑みには癒しの効果がついているのではないかと、俺は本気で疑いたい。
「確かに通信器具はついています。しかし、それはおまけに過ぎません。本当は個人識別チップを頭に入れるのが狙いです」
「個人識別チップ?」
「ええ。身分証明や財産、経歴などの情報を、脳内に入れた超極小型情報記録端末に登録することができます」
運転免許証、預金通帳、履歴書などの役割を1つで担ってしまうのか。
「それで、通信機能はどう使うのですか?」
千秋はどうやら個人識別チップにはさして興味を持たなかったらしく、通信器具としての使い方を訊いた。
「脳内で話したい人をイメージしてコールすれば――あ、もちろ知り合いの方のみですよ、赤の他人にはかかりません――ええと、その人に電話のようなものがかかります。あとは相手が出てくれるかですね」
「出るときはどうすりゃいいんだ?」
「イメージすれば良いのです。ほら」
その時、脳内に機械音声が流れて、
『柳リッカさんより着信です』
俺は受話器を取る自分の姿を想像する。
『もしもし、ほらちゃんと電話できたでしょ?』
『ああ、確かに』
『僕もです』
千秋、なんだおまえも電話かけられてたんだな。……俺は自分だけかかってきたと思ってたのに。
『柳さんが電話を切りました』 もう切っちゃったか。まあ、目的は達成したわけだし、当然だわな。
「通信方法は良くわかりました。では、僕はちょっとその辺をうろつきますので」
「はい。わかりました」
え、なんでそんな簡単に頷けるのと思いつつも、
「さて、飯でも食うか」
「ええ。そうしましょう」
俺はリッカさんに案内されて食堂へと向かった。
それと、作者は銃などミリタリー系は全然わからないので適当ですので、お気を付け下さい。




