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140字小説まとめ24

作者:
掲載日:2026/02/06

クローゼットを開けたら、死体が倒れ込んできた。

「大きい音したけど、大丈夫?!」

同居人が駆け込んできた。床に転がる死体を見て、目を見開く。


「ごめん、出ちゃった。結構深く押し込んだんだけど……」

「も〜、気をつけてよ」

同居人に咎められながらも、死体を再度クローゼットに詰め込んだ。


『日常の些末なこと』







世界は、タダになった。食品を買うのも、服を買うのも、娯楽商品を買うのも、金はいらない。欲しい時に、欲しいモノを手に入れられるのだ。生活においてなくてはならない安寧も、ちょっとした刺激も、簡単に得られる。


けれど、俺以外に人はいない。世界が滅び、最後の人類は俺だけになったんだ。


『タダより欲しいもの』







この家は夜、誰もいない。女の一人暮らしで、仕事に出かけている。ちゃんと外から見張って、推測したおかげで、順調に侵入できた。後は金を——

「助けて! 誰か!」

押入れから声がして、驚きながらも慎重に開けた。

「ママが、お仕置きって……」


俺は、幼い頃の自分みたいな子供を、盗む事にした。


『盗っ人』







目覚めたら、誰もいなかった。この時間は、必ず両親がいるはずなのに。少し苛つきながら、飯を求めて鳴っている腹を摩った。冷蔵庫に、なんか入ってるだろ。


『いい大人なんですから、後は一人で生きてください。』

空っぽの冷蔵庫に、その紙切れだけがあった。両親は、ニートの俺を捨てたんだ……。


『捨て他人(びと)







段々と、身体がほどけていった。無理矢理引っ張って、右往左往に下半身から……一生懸命、編んでいたのにね。今や身体に涙が染みつく様になり、その部分もなくなっていく。いいんだよ、君がそれで泣き止むなら。


好きな人に贈る予定だった、マフラーを全部ほどいた。本当に少しだけど、スッキリした。


『あたたかさ』







雲で、せっせとお花を形作る。地上にいる彼女に、渡したいんだ。雲で作ったお花を持って、地上に降り立つ。彼女は、いつもと変わらず屋上にいた。


「僕と結婚して、天界で一緒に暮らそう!」


彼女は幸せそうに笑い、屋上から僕に飛びついてきた。天使の羽だけで支えるのは大変だったけど、幸せだ。


『天使のプロポーズ』








落とし穴にハマった。好きな人が作ったものだ。だから自ら、落とし穴を踏んだ。

「また、君か」

少々呆れながらも、好きな人が隣に舞い降りた。……あれ、いつも引っ張り上げてくれるのに。

「毎回引っかかってくれるから、作り甲斐があるよ」

穴の底へ落ちてきた、好きな人の笑顔は一段と輝いていた。


『おちてきてくれた』








あ、ダメだ、今日笑えない。いつも友達と遊ぶ時は楽しいのに、連勤のせいで疲れている。口角が片側だけ、不自然につり上がっている気がする。

「……私ちょっと疲れたから、あそこのカフェで休まない?」

ごめん、気を遣わせちゃったかな。そう溢すと、友達は微笑んだ。

「来てくれて、ありがとう」


『あたたかさ、ひとさじ』







ふとんのカイジューが、きた。ぼくがねないと、やってくる。

「がおー! はやく寝ろー!」

たのしくてにげるけれど、いつもつかまる。あたたかいふとんにつつまれて、カイジューがパパにかわっていく。

「……明日を楽しくすごすためにも、沢山寝ような」

パパといっしょにねれるの、たのしいな。 


『すやすや』







「雪だるま、とけちゃった……」

 娘が作った雪だるまが、一晩でなくなっていた。今日は晴れているけれど、まだ周りに雪は残っているのに、跡形もなく溶けるだろうか。

「雪だるまはちゃんとあるよ」

夫が笑顔で私達をキッチンへ連れ、冷凍庫を開ける。雪だるまは、綺麗姿で私達を見つめていた。


『綺麗な雪だるま』







キャンドルライトが、静かに揺らめいている。前まではその姿に癒されていたのに、今は見るだけで辛さが襲ってくる。

彼が、部屋の雰囲気と合うと勝手に……。別れるくらいなら、同棲なんてしなきゃ良かった。彼の新居に、送りつけてやる。

キャンドルライトは消えることなく、煌々と輝いていた。


『消えないあかり』








ベランダに、おそらく泥棒が立っていた。窓をハンマーで割り、家の中に侵入して来る。ちょうど、いいな。物陰から出て泥棒の腕を掴んだ。そのまま引きずって、妻と浮気相手が冷たくなった寝室へ連れていく。

「お前、罪被れよ。こいつらみたいに、なりたくないだろ?」

泥棒は、青い顔で頷いた。


『罪の上乗せ』







小さな部屋の片隅で、作品を編み出し続ける。自分が作り上げた物語を完成させる、達成感を得る為に。部屋を埋め尽くす量になったので、仕方なく外へ出した。

「わあ、素敵ですね!」

突然通りすがりの人が、作品を見て笑顔を向けてきた。

自分は、ただ下手な笑みを向けることしか、できなかった。


『拙い嬉しみ』







息子が、嬉しそうに連絡を取っている。……あれは、恋人ね。ただの勘だけれど……気になるわ。息子が席を立った際、携帯を覗き見る。

 

……AIチャットツールだった。すでに、結婚まで話が進んでいる。……私への挨拶もなしに、息子を取るな。私は早速、息子の携帯を手に取り、AIをいびり始めた。


『姑のAI(嫁)いびり』







姉が、生涯を終えた。ずっと、生きてて欲しかった。

『何でアンタがここにいんのよ』

『お互い死後だからね』

『……マジ?』

『この先幽霊として生き続けるよ』

『そんな……セカンドライフじゃん、おもろ! ちょっと案内しなさいよ!』

手を、乱暴に引っ張られる……本当に、永遠に生きてて欲しい。


『あの世でも一緒』







「つらい、やめたい……」

泣いている姿を見て、たまらず抱きしめる。頑張って、いたんだよね……。ごめんね、今まで貴方の声聞けなくて……もう、遅いよなぁ。


突然身体がびくりと震え、視界が急に開ける。カッターを持った手と、裂かれた手首が目に入る。まだ、弱さを抱えて、生きていいんだ。


『うけいれる』








「女の人が、いる」

……息子が、霊感に目覚めたみたい。個人的には嬉しいけど、あまり良くないことよね? だって入れ込みすぎると取り込まれる?って聞くし……よく分からないけど。


「……何にもないだろ」

あら、パパは呆れてるのね。


ちゃんといるのよ、幽霊になったママもとい、貴方の妻がね。


『子供の成長』







足が、時々持っていかれそうになる。それくらい、走らないと。やることは、終わらない……。そんな事を繰り返しているうちに、派手に転んだ。固い道に、大の字で投げ出された私は、ボーっと上を見る。

触ったら、手に馴染みそうなくらいの薄い空色が広がっている。

……その日、私は初めて休んだ。


『思いがけない休息』








とうとう身内は、飼い猫だけとなった。……仕方ないか。膝の上で丸くなった背を力なく撫でると、尻尾が揺らめいた。


尻尾、が二つに割れている……。思わず驚くと、飼い猫は気怠そうに口を開いた。

『不死身なお前が、寂しそうにしている様子がいけすかない。だから、俺が合わせてやった。感謝しろ』


「横柄な人外」







 私の庭に、沢山のぬいぐるみが並べられている……なに、これ。

「こんにちは!」

 塀の上から、近所に住む女の子が顔を出した。……あ、そうだ、このぬいぐるみ達は全部、あの子が持ち歩いていた記憶が……。


「お花、生えてきた? 無事生えるように、私のぬいぐるみに見張らせといたの!」


『もふもふ見張り』







テレビの中から、幽霊が出てきた。ただのホラー映画を見ていたら、急に。これは3D映画ではないから、単なる心霊現象か。幽霊は強く私の肩を掴み、テレビの中へ引き摺り込もうとする。


運が悪いなぁ……。


その腕に札を貼り、素早く呪文を唱えた。

霊媒師のところに来るなんて、本当に運が悪い。


『運が悪い』








日照りが続き、地はひび割れていた。空を漂う雲の僕は、お天道さんを隠そうとした。けれども、僅かな隙間から、光が漏れ出てしまう。

「みんなを、照らさないと」

ますます、光を強くしていく。照らす必要はない……僕も、この輝き続ける姿を、隠す必要もないんだ。それでも、この方のそばにいたい。


『雲の片思い』







曇天が広がった思考に、太陽が差すことはない。何処から湧いてきたのか、わからないから。対処のしようもない、暗い空にはただ放置するしかなかった。無理矢理離散できる程、没頭する何かもなく、その事自体を気にすることも出来ない。

翳った空が何処までも続いている様子を、見つめていたい。


「停滞」







天使が羽ばたいて、空へと帰っていく。誤って地上に落ちた日から世話をしていた、綺麗な子。行かないで、と、手を伸ばす。すると、天使は柔らかな笑顔で振り返った。

「優しい貴女が、大好きだよ」

純粋な笑顔を向けられ、自然と手が降りる。澄み渡った空へ潜り込んだ姿が、一番綺麗なんだ……。


「飛んでいく」





赤ちゃんが歩いている。あぜ道のど真ん中で……なんで?! 慌てて抱っこして、助け出す。すると、赤ちゃんがしわがれた声で泣き出した。


「……何で、お主潰れないんじゃ?!」

泣いた影響なのか、皺が増えた赤ちゃんが、目を見開いた。

「まあ、鍛えてますんで」

とりあえず、筋肉を見せといた。


『子泣き爺vsマッスル』







道は、合っているのだろうか。草を掻き分けながら、歩を進める。デートの待ち合わせがこの道の先にあると、地図アプリは示しているが……

「あ、こっちだよ!」

良かった、彼女に会え——


……クマ、シカ、イノシシ等々、数多の野生動物が彼女を囲んでいた。

「可愛いペット達を、紹介したかったの!」


『野生ペット』


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