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お迎えまであと10分。働くママの足元には小さな奇跡がある  作者: オレンジ


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夕やけの音

保育園から帰ってきて、靴をそろえて、手を洗って。

いつもの流れを終えると、さちはリビングの窓を少しだけ開けた。


ふわっと、夕方の風が入ってくる。

空はオレンジ色で、雲のはしっこがほんのり赤い。


「ママ、そら、あかいね」


はるが窓のそばに来て、背伸びをしながら外をのぞく。


「ほんとだね。きれいだね」


遠くで電車の音が聞こえた。

ガタン、ゴトン、と低くひびく音。


「でんしゃ、かえってるのかな」


「お仕事終わった人が乗ってるのかもね」


はるはしばらく黙って、外を見ている。

道路を歩く人、自転車をこぐ人、並んで走るたくさんの車。


「みんな、いそいでる?」


「そうだね。おうちに帰るところかな」


「はるは、もうかえってきたよ」


ちょっと誇らしそうに言って、はるはさちの方を見る。

さちは笑ってうなずいた。


また、電車の音。

今度はさっきより少し近い。


「おと、すき」


「この時間の音、いいよね」


はるは窓の下に座りこんで、足をぶらぶらさせる。

さちはその横で、何も言わず一緒に外を眺めた。


夕やけは、ゆっくり色を薄くしていく。

街の音だけが、変わらずそこにあった。


「ママ」


「なあに」


「きょう、いいひだったね」


その一言に、さちは胸の奥があたたかくなる。


「うん。いい日だったね」


窓から入る風が、少しだけ冷たくなった。

さちは静かに窓を閉めて、はるの手を取った。


夕方の音は、もう心の中に残っていた。



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