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お迎えまであと10分。働くママの足元には小さな奇跡がある  作者: オレンジ


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ね、パパ。きょうのこと

玄関のドアを開けた瞬間、

「パパー!」

という声が飛んできた。


靴を脱ぐのもそこそこに、はるが駆け寄ってくる。

目がきらきらしていて、今日はそれだけで何かあったってわかる。


「ね、きょうね、はやめにいったの!」

「うん、聞いてるよ。遠足だったんでしょ」


そう言うと、はるは首をぶんぶん振る。


「ちがうの、もっとあるの!」

「えーとね、バスにのってね、きょうごくんとね――」


話はあっちへ行ったり、こっちへ戻ったりする。

それでも、どれも大事な出来事なんだって伝わってくる。


ソファに腰を下ろすと、はるも隣にぴったりくっついてきた。

さちは少し離れたところから、その様子を見て微笑んでいる。


「これ、みて」


さちがスマホを差し出す。

そこには、遠足の写真。


友だちと並んで歩く後ろ姿。

お弁当を前に、今にも飛び上がりそうな顔。

先生の話を聞いている、少しだけお姉さんな表情。


「これね、おべんとうのとき!」

「いっぱいたべたの」

「あとね、せんせいがね、ここにすわっていいよって」


写真を指差しながら、はるは一枚一枚説明してくれる。


その声を聞きながら、

知らないうちに、こんな顔を外でしてるんだなと思う。


家では見せない表情。

家とは違う場所で、ちゃんと自分の居場所を持っている姿。


「たのしかった?」と聞くと、

はるは少し考えてから、にっこり笑う。


「うん。すっごく!」


その一言で、胸の奥がじんわりあたたかくなる。


さちと目が合って、

お互い何も言わずに、同じ気持ちだとわかる。


今日一日、はるはちゃんと外の世界で過ごして、

いっぱい感じて、いっぱい話したくなるほどの時間を持って帰ってきた。


「パパ、またね、こんどはいっしょにいこうね」


その言葉に、思わず笑ってしまう。


「そうだね。今度は一緒に行こう」


はるは満足そうにうなずいて、

そのまま少しずつ声が小さくなっていく。


写真を見ながら、

はるの頭をそっと撫でる。


今日の余韻は、

この家の中にも、ちゃんと届いている。



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