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お迎えまであと10分。働くママの足元には小さな奇跡がある  作者: オレンジ


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はやめにいくの!

朝から、はるは少し落ち着きがなかった。

いつもより早く起きて、リュックを背負っては鏡の前に立ち、また玄関に戻ってくる。


「まだ時間あるよ」


そう声をかけると、

「だいじょうぶ! はやめにいくの!」

と、はるはにこっと笑った。


集合場所に着くと、すでに友達の姿が見える。

はるは私の手を離して、すぐに駆け出した。


「りんちゃん!」

「はるちゃん!」

「きょう、いっぱいあそぶよねー!」


名前を呼び合って、それだけで嬉しそうだ。

先生の声が聞こえると、はるはさっと振り返り、また私を見つけて手を振った。


「ママー! みててねー!」


その声は、すぐに友達との笑い声に溶けていった。


現地では、走って、止まって、また走って。

遊具の順番を待ちながら、


「つぎ、はるだよ」

「おさないでね」

「いっしょにやろ!」


そんな会話が、あちこちから聞こえてくる。

はるは家にいるときより、少し大きな声で話していた。


「ママ、みて! ここ、たかいよ!」

「せんせー、もう1かいいい?」


私は少し離れたところから、その様子を眺めていた。

手を出すことはないけれど、目が合うと、はるは安心したように笑う。


お弁当の時間になると、はるのウキウキは最高潮だった。

シートを敷くのも待ちきれず、座った瞬間にリュックを開ける。


「みて! これ、だいすきなの!」

「りんちゃんのおべんとう、かわいいね」

「はるのね、ハンバーグはいってるよ!」


ふたを開けた瞬間、ぱっと顔が明るくなる。

ひと口食べて、また話して、また食べて。


「ママ、おいしい!」

「これね、パパもすきなの」


友達とおかずを見せ合いながら、はるはずっと楽しそうだった。

その様子を見ているだけで、胸の奥がじんわり温かくなる。


帰り道、はるは少し疲れた様子で、でもまだ話したいことがあるみたいだった。


「あのね、すべりだい、たのしかった」

「また、いきたいね」


手をつなぐと、いつもより少しだけ体が重い。

たくさん動いて、たくさん笑った1日だったんだなと思う。


家とはちがう場所で、

家とはちがう表情をしていたはる。


今日、私は

保育園で過ごすはるの時間を、

そして、少し成長した姿を、

ちゃんと見せてもらった気がした。



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