はやめにいくの!
朝から、はるは少し落ち着きがなかった。
いつもより早く起きて、リュックを背負っては鏡の前に立ち、また玄関に戻ってくる。
「まだ時間あるよ」
そう声をかけると、
「だいじょうぶ! はやめにいくの!」
と、はるはにこっと笑った。
集合場所に着くと、すでに友達の姿が見える。
はるは私の手を離して、すぐに駆け出した。
「りんちゃん!」
「はるちゃん!」
「きょう、いっぱいあそぶよねー!」
名前を呼び合って、それだけで嬉しそうだ。
先生の声が聞こえると、はるはさっと振り返り、また私を見つけて手を振った。
「ママー! みててねー!」
その声は、すぐに友達との笑い声に溶けていった。
現地では、走って、止まって、また走って。
遊具の順番を待ちながら、
「つぎ、はるだよ」
「おさないでね」
「いっしょにやろ!」
そんな会話が、あちこちから聞こえてくる。
はるは家にいるときより、少し大きな声で話していた。
「ママ、みて! ここ、たかいよ!」
「せんせー、もう1かいいい?」
私は少し離れたところから、その様子を眺めていた。
手を出すことはないけれど、目が合うと、はるは安心したように笑う。
お弁当の時間になると、はるのウキウキは最高潮だった。
シートを敷くのも待ちきれず、座った瞬間にリュックを開ける。
「みて! これ、だいすきなの!」
「りんちゃんのおべんとう、かわいいね」
「はるのね、ハンバーグはいってるよ!」
ふたを開けた瞬間、ぱっと顔が明るくなる。
ひと口食べて、また話して、また食べて。
「ママ、おいしい!」
「これね、パパもすきなの」
友達とおかずを見せ合いながら、はるはずっと楽しそうだった。
その様子を見ているだけで、胸の奥がじんわり温かくなる。
帰り道、はるは少し疲れた様子で、でもまだ話したいことがあるみたいだった。
「あのね、すべりだい、たのしかった」
「また、いきたいね」
手をつなぐと、いつもより少しだけ体が重い。
たくさん動いて、たくさん笑った1日だったんだなと思う。
家とはちがう場所で、
家とはちがう表情をしていたはる。
今日、私は
保育園で過ごすはるの時間を、
そして、少し成長した姿を、
ちゃんと見せてもらった気がした。




