はるの宝物
朝の支度の時間。
はるは、昨日のお祭りのくじ引きでもらったおもちゃを、しっかり握ったまま立っていた。
「これね、きのうのやつなんだよ」
もう何度目かわからない説明をしながら、にこにこしている。
パジャマのまま、靴下も片方だけで、それでも楽しそう。
「うん、知ってるよ。かわいいね」
さちはそう返しながら、時計を見る。
時間は、いつも通り足りない。
「はる、そろそろ着替えよう。急ぐよー」
声をかけても、はるはおもちゃをじっと見つめたまま。
「これ、きらきらだったんだよ。はなびも、ドーンって」
言葉が、昨日と今日を行ったり来たりしている。
さちは思わず笑ってしまう。
「あとでね。帰ってきたら、また見せて」
そう言うと、はるは少し考えてから、うん、と小さくうなずいた。
その様子を見ていたパパが、そっと声をかける。
「じゃあ、今日はここに置いておこうか。はるの宝物だから」
「うん!」
はるは名残惜しそうにおもちゃを棚に置いて、着替えに向かう。
バタバタしながらの朝だけど、
はるの中には、まだお祭りの続きがちゃんと残っている。
パパはその後ろ姿を見ながら、微笑ましそうに言った。
「まだ、楽しいままなんだな」
「うん。いいことだよね」
そう返しながら、さちはもう一度時計を見る。
急がなきゃ、と思いながらも、
この朝は、どこかやさしい気持ちで始まっていた。




