「できた!」
朝ごはんのあと、テーブルの上を片づけていると、はるがコップを両手で持って冷蔵庫の前に立っていた。
少し背伸びをして、牛乳パックに手を伸ばす。
「はる、自分でやるの?」
そう声をかけると、こくんとうなずいて、真剣な顔。
さちとパパは、何も言わずに少し離れて見守る。
牛乳パックは、はるの手にはまだ少し大きい。
傾ける角度を確かめるみたいに、ゆっくり、ゆっくり。
……とぽ、と白い牛乳がコップに落ちた。
こぼれないように、慎重に。
途中で一度止めて、また少しだけ傾けて。
全部注ぎ終えると、はるはコップをじっと見てから、顔を上げた。
「……できた!」
その声は小さいけれど、胸を張っていて、誇らしげだった。
「すごいね、はる」
「上手にできたね」
さちとパパがそう言うと、はるはにこっと笑って、コップをテーブルまで運ぶ。
こぼれないように歩く足取りも、なんだか慎重でかわいい。
席に着いて、牛乳を一口飲んでから、もう一度。
「できたね」
今度は、自分に言い聞かせるみたいに。
さちはその様子を見ながら、胸の奥がじんわり温かくなる。
昨日まで手伝っていたことが、今日は少しだけ一人でできるようになっている。
パパと目が合って、ふたりで小さく笑った。
「できた!」って言葉が、
今日は朝から、家の中をやさしく明るくしていた。




