眠くなるまで、あともう一冊
寝る前の時間は、はるにとって一日のいちばんのお楽しみ。
パジャマに着替えて、歯みがきをして、布団に入ると、すぐに本棚のほうを見る。
「ママ、えほん、よんで」
そう言って、すでに一冊目を手に持っている。
さちは隣に腰を下ろして、本を開く。
今日のお話は、動物がたくさん出てくる絵本。
はるはページをめくるたびに、指をさして名前を呼ぶ。
「ぞうさん!」
「これ、きりん!」
声は元気だけど、だんだんまばたきが増えていく。
読み終わると、はるはすぐ次の本を差し出す。
「つぎ、これも!」
「もう一冊だけね」
そう言うと、はるは大きくうなずく。
二冊目。
はるはさっきより静かで、声も少し小さくなっている。
ページをめくる音が、部屋にゆっくり響く。
途中で、はるの手から力が抜けて、本が少し傾いた。
それでも目は閉じない。
「……まだ、よむ?」
さちが小さく聞くと、はるは目をこすりながら答える。
「うん……あと、いっこ……」
でも、三冊目を開いたころには、返事がなくなった。
呼吸がすっかり寝息に変わっている。
さちはそっと本を閉じて、はるの髪をなでる。
さっきまで「まだ!」と言っていたのが、少し前のことみたい。
「おやすみ、はる」
そう声をかけると、はるは小さく体を動かして、
安心したように、また静かになった。
今日も、眠くなるまで絵本を読んだ夜。
それだけで、なんだかいい一日だったな、とさちは思う。




