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お迎えまであと10分。働くママの足元には小さな奇跡がある  作者: オレンジ


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夕ごはんの時間

夕方、キッチンから聞こえるフライパンの音。

今日は特別なことはない、いつもの平日。


テーブルの上には、湯気の立つお味噌汁と、焼き色のついたおかず。

さちは最後にお皿を並べながら、リビングの方を見る。


「はるー、ごはんできたよ」


「はーい!」


ぱたぱたと足音がして、はるが椅子によじ登る。

エプロンはしていないけれど、ちゃんと“お手伝いした気分”の顔。


「きょうね、ほいくえんでね、ぞうさんのえほんよんだの」


「そうなんだ。ぞうさん、大きかった?」


「うん!おおきかった!このくらい!」


はるは両手を思いきり広げる。

さちは思わず笑って、パパも箸を持ったままうなずく。


「この前、動物園で見たもんね」


その一言に、はるは少しだけ考える顔をしてから、にこっと笑う。


「うん。みたね」


それ以上は何も言わないけれど、

その笑顔はちゃんと前を向いている。


「いただきます」


三人で声をそろえると、部屋の空気がやわらかくなる。

はるは一口食べて、すぐに言う。


「おいしい!」


その一言で、今日一日の疲れがすっと抜ける気がする。


特別な出来事はないけれど、

こうして同じテーブルを囲んで、同じ時間を過ごす夜。


さちは、はるの小さな背中を見ながら思う。


日常は、ちゃんと続いている。

そしてきっと、これでいい。



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