表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お迎えまであと10分。働くママの足元には小さな奇跡がある  作者: オレンジ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/63

少しだけ、さみしい気持ち

 朝の支度をしながら、さちは少しだけはるの様子を気にしていた。


 いつもより、言葉が少ない。


 服を着替えるのも、靴を履くのも、ちゃんとしている。

 ただ、いつもの元気な声が少しだけ控えめだった。


「はる、準備できたよ」


「うん」


 返事はすぐに返ってくる。

 でも、その声はどこか静かだった。


 保育園までの道、はるはさちの手をいつもよりぎゅっと握っていた。


 その日、保育園でも、はるは少しだけ大人しかったらしい。

 お絵かきの時間も、外遊びの時間も、ちゃんと参加していた。

 でも、先生の目には、いつもと違う様子が映っていた。


「はるちゃん、なんだか今日は静かだね」


 そう声をかけると、はるは少し考えてから、ぽつりと言った。


「このまえね、どうぶつえん行ったの」


「楽しかった?」


「うん。すっごく楽しかった」


 そこで一度、言葉が止まる。


「……でもね」


 はるは、先生の顔を見上げた。


「ばいばい、さみしかった」


 先生は、はるの気持ちがそのまま出てきたことが嬉しくて、

 やさしく頷いた。


「そっか。楽しかった分、さみしくなっちゃったんだね」


 はるは、小さく頷いた。


「でもね、また来るって言ってた」


「うん。また会えるって思えると、少し元気になるね」


 はるは、少しだけ口元をゆるめた。


 夕方のお迎えのとき、先生はさちにそっと話してくれた。


「今日は少し元気が控えめでした。でも、おじいちゃんおばあちゃんとのお話をたくさんしてくれましたよ」


 さちは、その言葉を聞いて、胸の奥がすっと静かになるのを感じた。


 ああ、ちゃんと、心が動いてたんだな、と。


 帰り道、さちはいつもよりゆっくり歩いた。


「はる、今日はどうだった?」


「……たのしかったよ」


「そっか」


 少し間があって、はるが言う。


「でもね、ちょっとだけ、さみしかった」


 さちは、はるの手を握り直した。


「そっか。さみしくなったんだね」


「うん。でもね」


 はるは、前を見たまま言った。


「またね、って言えた」


 その言葉が、とてもはるらしくて、さちは思わず笑った。


「うん。ちゃんと、またね、って言えたね」


 夕方の空は、いつもと変わらない色をしていた。


 日常は、ちゃんと続いている。


 でもその中に、楽しかった時間と、少しのさみしさが一緒に混ざっている。


 それでいいんだと、さちは思った。


 はるは、今日もちゃんと、前に進んでいる。


 さちは、そう感じながら、はると並んで歩いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ