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お迎えまであと10分。働くママの足元には小さな奇跡がある  作者: オレンジ


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動物園の日

 朝から、はるのテンションは高かった。


「はやく行こ。どうぶつ、いっぱいいるんでしょ?」


 玄関で靴を履きながら、何度もそう言う。

 おじいちゃんとおばあちゃんは顔を見合わせて笑った。


「そんなに急がなくても、動物は逃げないよ」


「でも、はるに会うのを楽しみにしてるかもね」


 その言葉に、はるはぱっと顔を輝かせた。


「じゃあ、いそがなきゃ!」


 動物園に着くと、にぎやかな声と匂いが広がっていた。

 はるは手をつないだまま、きょろきょろと周りを見る。


「みて! きりん、でっかい!」


「ほんとだね、首が長いなあ」


 おじいちゃんがそう言うと、はるは自分の首を伸ばして真似をした。

 それを見て、みんなが笑う。


 サル山では、はるが身を乗り出した。


「あ、ジャンプした!すごい!」


「元気いっぱいだね」


「はるみたいだ」


 パパの言葉に、はるは胸を張る。


「はるも、いっぱいジャンプできるよ!」


 ゾウの前では、しばらく立ち止まった。

 大きな体がゆっくり動くのを、はるはじっと見ている。


「おおきいねぇ……」


「強そうだけど、やさしい目してるね」


 おばあちゃんの声に、はるはうなずいた。


「うん。やさしそう」


 お昼は、みんなでベンチに座ってお弁当を食べた。

 はるは動物の話を止めない。


「さっきのライオンね、ねてたよ」


「ほんとだね、気持ちよさそうだった」


「はるも、あとでねる?」


「ねない! まだあそぶ!」


 そう言い切ったはるだったけれど、

 帰りの車に乗る頃には、声がだんだん小さくなっていた。


 チャイルドシートに座って、動物園でもらったパンフレットを握りしめたまま、

 はるのまぶたがゆっくり閉じていく。


 ――すう、すう。


 寝息が聞こえてきて、さちは思わず微笑んだ。


「たくさん遊んだもんね」


「楽しかったんだな」


 パパがバックミラー越しにはるを見る。

 後部座席では、おじいちゃんとおばあちゃんも、静かに目を細めていた。


 車はゆっくり走り続ける。


 楽しかった一日が、そのまま眠りに溶けていくみたいだった。



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