駅で待つ時間
改札前のベンチで、はるは落ち着きなく足をぶらぶらさせていた。
電車が来るたびに、ぴょこんと立ち上がる。
「まだかな」
「もうすぐだよ」
さちが言うと、はるはうん、と頷いて、今度はパパの手をぎゅっと握った。
人の流れの向こうに、見覚えのある姿が見えた瞬間、はるの顔がぱっと明るくなる。
「あっ!」
次の瞬間には、手を離して走り出していた。
「おじいちゃーん! おばあちゃーん!」
「はる!」
屈んだおばあちゃんに勢いよく抱きついて、おじいちゃんの足にもぎゅっとしがみつく。
その様子を見て、さちは思わず笑ってしまった。
「そんなに待ってた?」
「うん! ずっと!」
帰り道は、はるのおしゃべりが止まらない。
保育園のこと、最近覚えた歌のこと、昨日の夜に考えていたこと。
「そんなことまで覚えてるのか」
おじいちゃんが感心すると、はるは少し誇らしげに胸を張った。
家に着くと、自然と台所に人が集まる。
おばあちゃんはさちの横で手を洗いながら、「何か手伝おうか」と声をかけてくれる。
「大丈夫ですよ、今日はゆっくりしててください」
「そう? じゃあ、はると一緒に並べようか」
食卓には、いつもより少しにぎやかな音が並んだ。
「これ、はるが好きなやつだ」
「ほんとだ!」
箸を持つ手が忙しく動いて、笑い声が重なる。
「おかわりある?」
「あるよ」
「じゃあ、ぼくも!」
誰かが立ち上がるたびに、「座ってていいよ」と声が飛ぶ。
そんなやりとりが、妙にうれしかった。
食後、はるはおばあちゃんの隣にぴったりくっついて座っている。
眠くなる前の、甘えたい時間。
さちはその光景を眺めながら、胸の奥がじんわり温かくなるのを感じていた。
――ああ、来てくれたんだな。
特別なことは何もしていないのに、
家の中が、少しだけ広くなったような気がした。




