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お迎えまであと10分。働くママの足元には小さな奇跡がある  作者: オレンジ


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今日のことを話しながら

お風呂あがりの洗面所に、ドライヤーの音が響く。


 パパが、はるの小さな頭に風を当てていた。

 湯気の残る空気の中で、はるは洗面台の前でにこにこしていた。


「きょうね、ブロックでおうちつくったの」


「へえ。何色のおうち?」


「きいろ! あとね、あおもつかった!」


 ドライヤーの音に負けないように、はるは少し大きな声で話す。

 パパは「そうなんだ」と相づちを打ちながら、丁寧に乾かしている。


 キッチンでは、さちが食器を洗っていた。

 会話を全部聞こうとしているわけじゃない。

 でも、自然と耳に入ってくる。


「きょうのきゅうしょくもね、おいしかったよ」


「なにが一番おいしかった?」


「スープ!」


 即答だった。


「そっか。スープおいしいと、うれしいよね」


「うん!」


 はるの声は、少し誇らしげだ。


 さちは、洗い終えたお皿を拭きながら、その様子を横目で見る。

 なんでもない会話なのに、胸の奥がじんわり温かくなる。


「今日さ」


 ドライヤーを切って、パパが言った。


「帰り道、夕やけがきれいだったんだって?」


 はるが、ぱっと顔を上げる。


「うん! オレンジでね、ピンクもあった!」


「ママと一緒に見たの?」


「うん! て、つないだ!」


 その言葉に、さちは思わず笑ってしまった。


「ちゃんと覚えてるんだね」


「うん!」


 パパが、はるの髪をそっと撫でる。


「よし、乾いた。寝る準備しよっか」


「はーい」


 はるは嬉しそうに返事をして、寝室へ向かっていった。


 キッチンに残ったのは、さちとパパだけ。


「今日もおつかれさま」


 パパが、さちに向かって言う。


「ありがとう。そっちも……じゃなくて」


 さちは少し照れながら、言い直した。


「さちもおつかれさま、だね」


「うん」


 それだけで、十分だった。


 寝室から、はるの声が聞こえる。

 パパが呼ばれて、また笑い声がする。


 さちは、キッチンの明かりを少し落とした。


 今日も、特別なことは何もない。

 でも、こうやって1日が終わっていくのは、悪くない。


 ――明日も、きっと大丈夫。


 そう思いながら、さちはゆっくりと深呼吸をした。



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