少し遠くの、大きな公園へ
車に乗る前から、はるは落ち着かなかった。
靴を履きながら、もう外を見ている。
「きょうね、すべりだいある?」
「あるよ。いっぱいある公園だよ」
そう答えると、はるは嬉しそうに何度も頷いた。
後部座席に座ってからも、窓の外を眺めては小さく体を揺らしている。
「まだかなぁ」
「もうちょっとだよ」
パパの声に、「はーい」と返事をして、また窓に顔を近づける。
楽しみが体からあふれている感じがして、さちは思わず笑ってしまった。
公園の駐車場に着くと、すでにたくさんの家族でにぎわっていた。
ベビーカーを押す人、ボールを抱えた子どもたち。
においも、音も、休日そのものだった。
「ついたよ」
そう言った瞬間、はるはぱっと顔を上げた。
「わあ……!」
手をつないで歩き出すと、足取りが軽い。
大きな遊具が見えた途端、はるは小さく跳ねた。
「ママ!パパ!みて!」
すべり台に向かって走っていく背中を、二人で目で追う。
気に入ったらしく、はるは何度もすべり台を上っては、すべって降りてきた。
途中でこちらを振り返って、
「ママー!パパー!」
と手を振る。
そのたびに、さちとパパも手を振り返した。
少し遊んでから、木陰にレジャーシートを広げる。
外の空気はあたたかくて、風がやさしい。
「おべんとう!」
はるは待ちきれない様子で座った。
「これ、なに?」
「はるが好きって言ってたやつだよ」
お弁当箱を開けると、はるの目がまるくなる。
「やったー!」
小さな声でそう言って、嬉しそうに食べ始めた。
途中で、
「ねえ、つぎはあっちでもあそびたい」
と、もう午後の予定を考えている。
「いっぱい遊べるね」
「うん!」
お腹がいっぱいになると、また元気に立ち上がっていった。
帰りの車では、さっきまでの元気が嘘みたいに、はるは静かだった。
後部座席を見ると、いつの間にか眠っている。
少し開いた口。
揺れに身を任せて、すっかり夢の中だ。
「いっぱい遊んだね」
パパが小さな声で言う。
「ほんとだね」
さちは、はるの寝顔を見ながら頷いた。
楽しかったんだろうな、と思うと、それだけで胸があたたかくなる。
車はゆっくり走り続ける。
静かな時間の中で、三人分の一日が、やさしく終わっていった。




