4歳だから!
朝、はるはいつもより少し早く目を覚ました。
「ママ、はるね、もう4歳なんだよ」
布団の中で、さちの顔をのぞき込んで言う。
まだ寝起きで、声は少し掠れているのに、その言い方だけは誇らしげだった。
「そうだね、4歳だね」
そう答えると、はるは満足そうにうなずく。
着替えも、いつもより自分でやろうとする。
靴下は左右が少し違うけれど、「だいじょうぶ!」と言い切った。
朝ごはんを食べながらも、何度も言う。
「はる、4歳だからね」
さちはそのたびに笑ってしまう。
保育園までの道。
はるはいつもより歩くのが早い。
「きのうね、ケーキたべたの」
「ろうそく、ふーってしたの」
「パパもね、かえってきたよ」
話したいことが、次から次へと出てくる。
門の前で靴を脱ぎながら、先生を見つけると、はるは少し胸を張った。
「きのう、たんじょうびだったんだよ。4歳!」
先生は目を細めて言った。
「そうなの? おめでとう」
「ケーキね、あまかったよ」
はるはうれしそうに続ける。
さちはその横で、少しだけ立ち止まってその様子を見ていた。
たった1日で、何かが大きく変わるわけじゃない。
でも、本人にとっては、ちゃんと特別な1日だったんだなと思う。
「じゃあね、ママ」
そう言って、はるは振り返る。
「ママも、いってきてね」
4歳の言葉だ。
さちは手を振りながら、胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。
昨日のろうそくも、ケーキの甘さも、
今朝の少し誇らしげな背中も。
全部つながって、今日になっている。
さちは深く息を吸って、門をあとにした。
今日も、いい1日になりそうだった。




