1人の時間、家族の時間
家に帰ると、洗濯物がきれいに畳まれて、ソファの端に置いてあった。
さちは、一瞬だけ足を止める。
――ああ、ちゃんとやってくれてたんだ。
午後のあいだ、はると二人で過ごして、
ごはんを食べて、お昼寝をして、
洗濯物まで畳んでくれていた時間を思い浮かべる。
自分がいなかった時間を、
誰かがちゃんと大事にしてくれていたことが、
胸の奥にじんわり残った。
その夜、はるを寝かしつけて、
小さな寝息が聞こえはじめたころ。
「ねえ」
パパが、少しだけ声を落として言う。
「はるね、ママ何してるかなって、何回か聞いてたよ」
さちは、思わず微笑んだ。
「ちょっとだけ寂しかったみたい。でもね、
すぐに『きれいになるんだよね』って言ってた」
「……かわいいね」
それだけで、胸があたたかくなる。
寂しかった、じゃなくて。
待っててくれた、でもなくて。
ちゃんと、家族の時間が流れていたことが、
嬉しかった。
「今日はありがとう」
そう言うと、パパは肩をすくめて笑った。
「さちも、少しは休めた?」
「うん。ちゃんと」
無理に言い聞かせるみたいじゃなく、
自然に、そう思えた。
ひとりの時間も、
家族に戻る時間も、
どっちも大事で、どっちもあっていい。
今日は、いいお休みだったな。
さちは、静かな部屋で、
そう思いながら、そっと灯りを消した。




