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第五十四話

後半の構成を考え直すため、二週間ほどお休みさせて頂きました!

本日より更新再開いたします!


「――と、いうわけでございまして」


「ちょ……ちょっと待って下さいよっ!? 私が婚約なんて初耳なんですけど!?」


「こ、婚約……! リゼットに婚約者が!?」


「ねーねー、コンヤクってなにー? おいしいのー?」


 いつもと変わらぬレジェール外れのルカの家。


虚空の騎士団(ヴォイドオーダー)による襲撃から二週間。

 市街地にはまだ襲撃の爪痕がちらほらと残っていたが、街から遠く離れたルカの家は当たり前のようにノータッチ。


 だがその日、ルカの家にはあの事件以来すっかり打ち解けた宰相のバロアがやってきており、ボロボロの屋根が吹き飛びそうなほどの衝撃をルカとリゼットに与えていた。


 ちなみに、アズレルは一晩寝たらいつものハラペコドラゴンに戻っていた。


「お、落ち着きたまえルカ君! それに姫様も。今回の話はあくまで〝婚約の申し込み〟でございます。陛下もこの私も、姫様のお気持ちを無視してそのような約束事を決めるつもりは一切ございません!」


「で、ですよねー!」


「たしかに、それなら一安心といったところだが……ではリゼットに婚約を申し込んできた相手とは一体?」


「うむ……今回姫様に婚約を申し込まれたのは、オルランド同盟議長の息子、テオバルト・フォン・ネザーリンク将軍です。彼ほどの要人が、我々のような小国に縁談を持ち掛けるのは、正直なところ不自然でして……」


「それはそれは……誰かと思えばテオバルト将軍ですか。彼のことなら私も知っていますよ。連合との戦いでは連敗続きですが、いざ戦うとそれなりに厄介な相手だと聞いています。フフフ……」


「そうなのか! さすがフィン殿は何でも知っているな!」


「フフ……それほどでもありますよ。フフフ……!」


「というか、どうしてしれーっとフィンさんまでここにいるんです? ゼファーさんと一緒に連合に帰ったんじゃなかったんでしたっけ?」


 そこに何食わぬ顔で口を挟んだのはフィン・ロックウェルこと、ハイパーマッドサイエンティストのフィンケル・クロウ。

 なぜここにいるのかとリゼットから問われたフィンは、眼鏡を中指でクイっと押し上げて薄く笑った。


「フフ……実は総統から直々に、お二人に協力するように言われたのです。先日は私どものせいで、ルカさんとリゼットさんにも色々とご迷惑をおかけしてしまいましたからね」


「すでに、フィンケル博士には〝レディスカーレットの改修作業〟に携わっていただいております。虚空の騎士団などという無法の輩が現れた今、こちらもそれなりの準備をと思いましてな!」


「ではもしや……レディスカーレットもゼファーのように、羽で敵を斬ったりピカピカ光る弾を撃てるようになるのか!?」


「さすがにレヴナントと同等の性能は難しいですが……とりあえず、現在はリゼットさんの天才的な操縦に追従できるよう手を加えているところです」


「ありがとうございますっ。でもあの子をいじってる時に変な計算とか、絶対外れる予想とか……そういうのはしないでくださいね?」


「変な計算に外れる予想……ですか? ふむ、私にはよくわかりませんが、気をつけておきましょう。フフ……」


 すでにフィンのジンクスに気付きつつあるリゼットの言葉に、しかし当のフィンはさっぱり心当たりがないという様子で肩をすくめた。


「おほん、うほん……! では婚約の件に話を戻しますが、そのテオバルト将軍が、姫様をどうしても妻として迎えたいと申しておりまして……」


「なーにが妻ですかっ! 破棄っ! 破棄しますっ! そんなお願い、ゴミ箱にぽいーしておいてくださいっ!」


「そーだそーだ! 俺も誇り高き竜騎士として、断固として反対させてもらうッ!」


「わーい! ボクもボクもー!」


「それはもちろん、私も陛下もそうするつもりです! なのですが……」


 ルカとリゼットどころか、楽しそうに同調するアズレルにまで徹底抗戦されたバロアは、なんとも心苦しそうに額の汗をハンカチで拭う。


「私にも話が読めてきましたよ。初めから縁談を受けるつもりはないが、とはいえ相手は我々連合と世界を二分する大国の主要人物。礼も形式もなしにただ断わってしまえば、国家間の外交問題になりかねない。つまり――」


「そ、それってもしかして……私が直接行ってそのナントカって将軍にお断わりしてこいってことですか!?」


「さ、左様でございます……! とはいえ、このバロアも姫様のオルランド外遊については可能な限りバックアップさせていただきます! なんなら、近衛と共にお供する覚悟でございます!」


「だとしてもだ……! さすがにそれはリゼット一人の責任が重すぎるだろう!? なんなら、今すぐ俺がレジェール名物の菓子折を持って断わってきてもいいぞ!」


「フフ、これはなかなか面白いことに……あ、いや。難儀なことになってきましたねぇ。フフフ……」


 断わるのは良いとして、当然礼を尽くす必要はある。


 レジェールが小国ゆえの難しい問題に、リゼットはむむむ……と腕を組んで呻き、やがてふぅとため息をついて頷いた。


「むぅ……わかりました。私だって、いつもお父様やバロアには自由にさせてもらってますし。たまには姫らしいところを見せてやりますっ!」


「……待ってくれ! ならば、その席に俺も同行させてもらいたいのだが!」


「え?」


 やれやれとため息をつくリゼットに、彼女よりずっと真剣な表情のルカがその両目に激しい嫉妬の炎を燃やして詰め寄る。


「ちょ、え……ルカ? そ、そんなに心配しなくても……まだ婚約するって決まったわけじゃないですし……っていうか、私はちゃんとお断りするつもりですからね!?」


「関係あるかー! 婚約はもちろん全力阻止だが、他にも虚空の騎士団なんてわけのわからん奴らがうろうろしている時に、リゼットを一人にできるわけないだろ! ぜったいに、俺も一緒に行かせてもらう!」


 まるで駄々をこねる子供のように訴えるルカに、リゼットは一瞬驚き、やがて心の底から嬉しそうに微笑んだ。


「ふふ、ありがとうございますっ! じゃあ一緒に行きましょう!」


「わーい! それならボクも、またおいしいお肉がいっぱい食べられるねー!」


「でしたら、今回は私もお二人に同行するとしましょうか。最近の同盟の動きには気になるところもありますのでね。フフフ……」


「では、旅程の計画と先方への連絡はこのバロアめにお任せを! 姫様のことを頼んだぞ……ルカ君!」



 Ninth flight

 ――

 婚約破棄?するお姫様



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