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コード監査会、開廷

 王立魔導学院の議事堂に隣接する円形の大講堂――

 そこは学院の「魔法コード監査会」が定例的に開催される場だった。


 本来この会は、学院内で用いられる魔術式や術理の「安全性」「理論整合性」「体系準拠性」などを審査するために存在していた。

 だが今、その枠組みは大きく揺らぎ始めている。


「本日の審議対象は――篠宮蓮、提出コード群“関数魔法体系”」


 重々しい口調で、審議官長が宣言する。


 静まり返る空間に、篠宮蓮は一人、端末を携えて立っていた。

 その正面には、伝統派の代表格であるバルネ、術理派のセリア・ロッドル、そして実用主義の中立評議員たちが並ぶ。


「篠宮蓮、貴殿の“コード魔法”は、再現性と効率性を主張している。ならば問おう」


 バルネが立ち上がり、手を掲げる。


「本会は、貴殿の“術式の正統性”と“実戦運用性”を、コード対決という形で審査することを決定した」


「……コード対決?」


「貴殿と私、あるいは本会の代表者が、それぞれコードを構築し、同一目標に対し実行。

 “詠唱速度”“魔力効率”“出力精度”を評価項目とし、会場の解析装置で公正に測定する」


 蓮は端末を握りしめ、静かに頷いた。


「……受けます」



 ―― 第一ラウンド:火炎術式・中級 ――

 標的は、厚さ30cmの鉄板三枚を縦に並べた防壁。

 審査員が合図を出すと、まずはバルネが前へ出る。


「――《紅雷火葬陣式・第三詠唱》ッ!!」


 声とともに魔力が立ち上り、長大な詠唱が響く。

 その構文は百行を超え、精密かつ華麗。しかし――


 詠唱時間:27.2秒

 魔力消費:76MP

 貫通枚数:2.5枚


「……ふむ、標準よりやや高威力か」


 審査官がメモを取る。


「では次、篠宮蓮――」


 蓮は前に出て、端末を操作する。


――――――

def flameStrike(power: int = 9):

mana = adjust(power)

cast("FlameLance", mana)

――――――

 

「flameStrike(11)」


 光が集まり、一瞬ののち――轟音とともに、熱線が鉄板を貫いた。


 詠唱時間:1.8秒

 魔力消費:42MP

 貫通枚数:3枚(完全貫通)


 会場が静まり返る。


「……この差は……!」


 魔力の扱い、効率、速度、全てにおいて蓮が上回った。

 しかも蓮の詠唱は、たった一行だったのだ。


「馬鹿な……あれは“魔術”というより……“装置の作動”だ……!」


「そう思うなら、同じものを組めばいいんです。誰にでも扱える魔法を、僕は作ってる」


 コードが術式として正式に扱われるか否か――

 魔法とは魂の産物か、それとも技術か――


 その問いは、もう避けられなかった。



 ――鉄板三枚を完全に貫通し、詠唱時間・魔力効率・出力、全てで蓮が勝る結果となった。


会場には沈黙が落ちた。

やがて、審議官長が厳粛な声で言い放つ。


「確かに、その魔法体系は高効率かつ再現性に優れている……しかし!」


 その声に応じるように、反対派の魔導士・バルネが立ち上がる。


「これだけで貴殿の“魔術体系”が王国魔導に相応しいとは認められぬ。術理に優れるだけでは、魔導の本質は測れない!」


「では……何が必要だというのですか?」


 蓮の問いに、バルネは重々しく答える。


「“実戦”だ。術理を語る者が、王国最強の実力者にも通用するならば、我らは黙ろう。

 ――王国第三階位、【魔導皇子】リゼル=ヴァン=エルトリア。彼と剣を交えよ」


 その名が告げられた瞬間、会場がどよめく。

 彼は王族にして、数多の戦場を渡り歩いた天才魔導士。その実力は、王国における実戦魔法の到達点とも言われていた。


「リゼル殿にはすでに通達済みだ。三日後、“星環の間”にて決闘を許可する。準備しておけ、篠宮蓮」


 そうして、実戦試験としての魔導頂上決戦が幕を開ける――。

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