集会
優しいと思ってたのに。やっぱ強引なの。
むりやりドレス着せられた。ぴぇ。
王達の集まりに参加できるのは嬉しいの。そこで知り合う事で、今後関係を深められるかもだから。でも、ドレスなんてやなの。
なんだか動きにくくて、やなの。
「似合ってる。とても可愛いよ」
そんな言葉で喜ぶほど安くないの。何が安いのか分からないけど。
「しゃぁー」
「怒った?でも、これでも一応ちゃんとした集まりだから。ドレスアップは基本だよ?」
「……ぶしゅ」
「何その、納得しきれないけど、間違ってないって言いたげな顔」
……笑うと一段と可愛いの。元々、女の子かって間違うほど可愛いけど。
「どうしたの?」
「なんでもないです。会えるなら、我慢します」
「うん。あっ、そういえば、他の王達は多分、君を愛姫だと認識してないと思うんだ。会った事ないなら尚更。だから、僕の側を離れないで。僕が紹介するから。君に傷を作りたくないんだ。だから、聞いてくれる?」
傷って言えば、アザがないの。どうして。あんなに、肌を見せたくなくなるようなアザがあったのに。
「アザ。魔法で治らなかったのにどうして」
「治しておいた。ドレスを着せてる間に」
「あ、ありがとうございます」
どうしてなんだろう。ゼーシェミロアールの兄に頼んで、治してもらっていたんだけど、全然治らなかったのに。
これが、生命の王。
「エレシェフィール、笑顔」
「ふぇ」
「笑ってる方が可愛いよ。っていうのは良いとして、印象。例えばだけど、怖い顔してる人と笑顔の人。どっちと一緒にいたい?」
「笑顔」
「うん。それだけってわけじゃないけど、第一印象なら、それだけだ。だから、初めて会うなら、笑顔を意識していた方が、好印象を持たれるんじゃないかな?」
それは分かったけど、ずっと笑顔でいるなんて難しいよ。
「……ゼロがさっき、一人で着替えてたんだけど、後ろ見ると、寝癖が酷かったんだ。本人気づいてないから、笑った後に、こっそり直してあげたんだ。ゼロの寝癖って、かなり頑固で直すの時間かかってバレたけど」
「ふぇ⁉︎ゼーシェミロアール様がそんな事が⁉︎ぷみゅ。意外と可愛いところあるの」
初めて会うから、緊張してた。ドレスいたとかそういうのもあったけど。
それで、笑顔なんて、できなかった私を笑顔にしてくれたのは、ちょっとした可愛い情報だった。
いつも朝身支度済ませてから私を起こしにきてくれる。私がベッド以外のところで寝ていると、ベッドに移動させてくれる。
頼りになる。それしか知らなかったゼーシェミロアール様の以外だったの。
「笑顔になった。さっき、笑顔の方がって言っていたけど、作られた笑顔じゃない。自然の笑顔が一番だよ。まぁ、これ全部、僕が思っているだけの話だけど」
「そうかもしれませんが、私も、そうだと思います」
「……ありがと。それじゃあ、行こうか」
「はい」
私は、フォーリレアシェルス様と手を繋いだ。不安なのが、手に伝わってると思う。フォーリレアシェルス様は、笑顔を見せて安心させてくれる。
**********
二十人弱の集まりだから、人数的には少ないけど、なんだろう。なんだか、いたくない。
「あー、みんなー、魔法禁止ー!愛姫が怖がってる!」
フォーリレアシェルス様が、みんなに聞こえるように言ったの。これで、隣にいるのが愛姫なんだって、みんなに伝わる。
どうしよう。認められなかったら。こんなの愛姫じゃないとか言われたら。
「エレシェフィール、フィルって珍味好きなんだ。だから、後で一緒にって誘われてるんだけど、行ってみる?」
「いやです。私甘いものが好きなので」
「へぇ、変わってないね」
「ふぇ⁉︎」
ふにゅぅ。このほんのりとくる甘さは、大好きなグミなの。
甘いものはご褒美。あまり食べちゃだめって言われているから、嬉しいの。
「これ一個だけだけどね。君のその体質があるから。でも、また今度あげる」
「ありがとうございます」
「おい!女の子を口説くのに餌付けは無しだ!」
えっと、ジョドゥボンゴ様。茶髪で高身長なの。
ところで餌付けってなに?
「ちょっと美味しいグミで笑顔にさせてあげただけだよ。餌付けなんてしてない」
「……フォーリレアシェルス様、今度はいつもらえるの?……もらえますか?」
「うーん、その敬語を止めない限りはあげないかな?様もなしで」
「フォーリレアシェルス、今度はいつくれるの?」
「君の体質からして、一日一個かな。今はそれで様子見」
甘いものは、魔力吸収量をあげる。魔力吸収量が多い私は、これ以上上げないようにって食べてないの。
でも、少しなら良いの。その調整は、ゼーシェミロアール様がやってくれてる。
「ふみゅぅ。嬉しいの」
「……」
「みゅ?」
「エレシェフィールは、一度に全員と話すと大変だと思うから、誰と話す機会を設けようか」
「アディとイヴィはどうだ?」
「良いかも」
アディ様は、ちょっと怖いの。でも、フォーリレアシェルスとゼーシェミロアール様が、勧めるなら、大丈夫だと思う……思いたい。
「先日は、気づかずに申し訳ありません。エレシェフィール様」
「こん前は、寒い中来てくれてあんがとなぁ。俺様が気付けなかったばかりに、もてなせなかった。今度は、必ずもてなしてやるから、期待しとけよぉ」
「……良い人なの⁉︎じゃなくて、その、会ってくれないから、ちょっと不安で」
失礼のないようにって思っていたのに。これじゃあ、仲を深めるなんてできないかも。大失敗。
「不安?なら、それを感じさせちまった俺様達は、それを忘れさせねぇとだなぁ」
「そうですね。ですが、このような、愛らしく、守りたくなるような方とは縁なく、どうすれば良いか知りません。教えていただけないでしょうか?」
そんなの分かんないの。でも、こんなに申し訳なさそうにしている相手に対して、分かんないって言って、仲良し作戦できなくなっちゃうかもなの。
「次来てくれた時にもてなすとかしてあげたら?エレシェフィールもそれで良いよね?」
「ふ、ふみゅ!そ、それで、いいでしゅ!……でちゅ……です」
は、恥ずかしい。こんな事やらかすなんて。今の、聞かなかった事にしてくれないかな。
……ゼーシェミロアール様は、素直すぎなの。笑うの隠そうとしてない。でも、その方が、変に気を遣われるより良いの。
「では、今度来てくださった際には、魔力吸収を抑えたケーキをご馳走しましょう」
「けーき……みゃっ⁉︎」
だ、だめなの。そんな、目を輝かせて、物欲しそうにしちゃ。で、でも、魔力吸収を抑えているなら、食べ放題……
こんなに嬉しいお話はないの。
「なら、俺様は温泉でもてなそう」
怨船?
そんな怖いのやなの。なんでそれがおもてなしになるの。理解不能なの。
「怨船なんて、やなの」
「そ、それなら」
「待って。エレシェフィール、温泉ってなんだと思ってる?」
「怨ねんいっぱいのお船さんじゃないの?そんな怖いのやなの」
なんで、そんな変な顔するんだろう。違うのかな?
怨船って、言ってたのに。
「温泉は……大地の恵み。自然に湧き出るお湯とでも覚えておけば良いかな」
「みゅ。なんだか、むずかしい説明してもむだだからとか思ってる気がするけど、気にしないの」
教えてくれればそれで良いの。それに、怖いの違うから。
フォーリレアシェルスに教わってると、アディ様とイヴィ様が、顔を見合わせてるの。
「……あの、こんなの、初対面で頼む事ではないと思いますが、我々も、彼と同じように接して欲しいです」
「俺も、そろそろ様取れ」
「……みゅ。ゼロ。アディ……様、イヴィ……様」
「なんか俺だけ要望以上の事が起きてんだが」
ゼーシェミロアールって言いずらい。なんなら、フォーリレアシェルスも言いずらい。
「……フォル」
「俺らだけ愛称」
「この子の事だから、言いやすいのくらいにしか思ってなさそうだけど。それでも、嬉しいよ」
ゼロは、嬉しそうなの分かるの。嬉しいが出てるの。フォルはちょっと分かりずらい。
「……おれも」
「フィル」
同じく言いずらいの。フィージェティンルゼアって言いずらいの。
「それと、エレシェフィール様。エレシェフィール様は、我々に気に入られたいと思っておいでのようですが、それは逆です。我々が、エレシェフィール様に気に入られなければならないのです」
「ふぇ?」
「エレシェフィール様は、ずっと、我々の大切な存在です。覚えてないかもしれませんが」
また、昔のお話。覚えてないお話。
覚えてないお話やなの。どうしてか分からないけど、やって思うの。
どうしてなんだろう。
「……エレシェフィール、疲れてない?普段こんな大人数と会う事ないから、疲れてるんじゃないかな。向こうで休憩しようよ」
「う、うん」
どうして急に。分からないの。でも、助かっちゃったかも。
これで、昔のお話聞かなくて良いから。