魔法具
エレは、フォルと一緒に一晩設計図を書く練習をしたの。だから、エレはきっと設計図を描けるの。
でも、設計図は練習したからってすぐに描くのはできないの。ちゃんと目的を決めておかないと。良く分かんないになっちゃう。
だから、まずは、どんなものを作るのか考える。
「……ふみゅ。エレに頼まれたのは、連絡用の魔法の道具なの。だから、できるだけ小型で持ち運びがしやすいような形状にしないと。それでいて、処理能力を高くして、耐熱耐水耐風とかもつけないと。これは、みんなに協力してもらいながらなの」
今回は、頼まれているものだから、本来の目的を外れないように気をつけないとなの。でも、それだけだと、落っこちて壊れちゃったとか、すぐ壊れちゃうの、悲しくなっちゃう。という事で、まずは、その辺を対策する事も入れておくの。
耐熱はアディに、耐水はポギュリアンに、耐風はイヴィに頼むの。それ以外にも、極寒地域にも耐えられるように、ゼムに凍らせてもらって、ポルディッソに雷が落ちても安全か確かめてもらわないと。
それと、エレ達の指輪と同期させれば、失くしてもどこにあるか分かるようにできるかも。フーネレオの魔法で隠してもらって、場所が分かるか確かめてみるの。
壊れちゃったも悲しいけど、失くしちゃったも悲しいから、そっちも対策。これで、壊れちゃったも失くしちゃったもなく、悲しくならないでいられるの。
後は後は、連絡だけじゃつまらないから、簡単なゲームとか、予定表とか、写真とか、魔力計とか、メモとか、メッセージとか、機能をつけておくの。
せっかく処理能力が高いのに、連絡だけに使うのはもったいないの。だから、色々と機能をつけて、より便利にしてあげるの。それに、これは持ち物を減らすという目的もあるの。これ一個でなんでもできれば、持ち物は減ると思う。
作りたいものが決まったら、設計に入るの。エレの初作になるから、気合い入れて描かないと。
「ぷにゅにゅるー。ぷにゅにゅるー」
気合いは入れるけど、音がないとやだから、お歌を歌うの。
「音程の上げ下げはできるようになりましたね」
「ふにゅ。今日はリリフィンが朝食当番なの」
リリフィンが朝食を持ってきてくれたの。ちょっと休憩を兼ねて朝食なの。フィルも一緒にいるの。
今まで、お歌の事で褒めてくれた覚えないのに、褒めてくれた。嬉しい。
「フィル、どんな魔法の道具にするか決まったの」
「うん」
「休憩したら、設計図を描くから楽しみに待ってて」
「待ってる。エレシェフィール、失敗しても良いから。素材は大量にある。失敗しながら、成功させれば良い」
「ふみゅ。エレは楽しくやるだけなの」
フォルが寂しがるから、早めに終わらせたいけど、妥協はしたくないの。エレの最高傑作を作りたいの。
最高傑作は、楽しい時の方が作れる気がするから、エレは楽しく最高傑作を作るの。
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試作の設計図が完成したの。連絡Aさんって名付けるの。
早速フィルに連絡Aさんの設計図を渡すの。
「フィル、連絡Aさん設計図完成なの」
「連絡Aさん?」
「この連絡用の魔法の道具の名前なの。エレがつけた」
「……うん。とりあえず、ありがとう。今から作るから、ゼロ達と遊んで待ってて」
気に入らなかったのかな?
連絡Aさん。何か言いたそうなの。気にしないけど。
フォルは今、別の魔法具の製作で忙しいの。だから、ゼロで我慢するの。
「ぷにゅ。ゼロで遊んでくるの」
最近のエレの趣味はゼロで遊ぶ事。ゼロで遊ぶのは楽しいの。
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早速ゼロのお部屋。今日は何して遊ぼう。
「エレのかまってこーげきー」
「設計図はどうなったんだ?」
「描けたの。だから暇になって、ゼロで遊びにきた」
ゼロって、魔法の影響でちょっぴりひんやり空気を纏っているからすきなの。
「暇になったか。なら、抱き枕にしてやろうか?」
「ふみゅ。抱き枕になるの。ゼロの抱き枕として、エレは、涼しいを堪能しておくの」
ゼロの抱き枕になるのは、とっても良いの。ゼロは優しくぎゅぅしてくれるから、エレは、ゆっくり寝れるの。
……寝ないの。今は寝る時間違うの。エレは、今寝ると、夜に寝れなくなるから、今は寝るの我慢。
でも、何もしていないと寝たくなるから、何かして眠気を誤魔化さないと。
「……ゼロ、エレをらぶするの。じゃないと寝そう。今にも寝そうなの。もう眠すぎるの」
「少し寝れば良いだろ。夜寝れなくなるのが心配なら、夜寝れなくならないくらいの時間で寝れば問題ねぇから」
「……その手があったの。さすがはゼロなの。じゃあ、エレは、満足する……夜寝れるくらいでお昼寝を堪能するの」
ゼロは天才だと思うの。こんな方法を思いつくなんて。エレはこれでゆっくりと寝る事ができる。
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ねむねむさんは、エレなの。寝起きのエレは、ちょっぴりご機嫌斜め。それでも、お世話をしてくれるのが、ゼロなの。
って事で、寝起きで、起こされたのもあってご機嫌斜めのエレを、ゼロがお世話してくれているの。エレは寝ているだけで、寝癖がついちゃうから。ゼロが髪をきれいにしてくれてる。
寝起きでこんなに髪を触られるのはちょっぴりむすぅなんだけど、ゼロだから、我慢できるの。
「……なぁ、少し寝ただけでなんでこんだけ寝癖できるんだ?」
「しりゃないの。早くなおちゅの。ぷにゅぅ」
「寝んな。起きろ。これ以上寝ると夜寝れなくなるだろ」
「エレはフォルをお望みなの。フォル……らぶ……らぶして」
夢ではらぶってしてもらっていた気がするのに、起きるとフォルがいないのは、ちょっぴり、やなの。
エレはフォルが一緒にいてくれるのが良いのに、どうしてフォルがいないんだろうってなっちゃう。ゼロがいてくれるから、それで我慢って思ってはいるのに。
もしかして、この寂しいが……こ……って事はないという事にしておくの。これはエレのわがままなだけなの。
「エレシェフィール、魔法の道具の試作品ができたから一緒に見ない?今から起動確認だから」
魔法具の起動確認?
良く分かんないけど、エレのがんばりの成果だと思うの。だから、エレが行かないっていう選択肢は存在しないの。
「ふみゅ。見に行く。フィルのお部屋でやるの?どこでやるの?エレはどこでも行くの」
「初めての魔法の道具だから、みんなで一緒に確認しようと思うから、リビングに」
「みゅ。魔法具の起動確認?楽しみなの?」
「魔法具?」
「みゅ?魔法具なの。魔法の道具長いから魔法具に決まったの」
魔法の道具は、長くて言いにくいけど、魔法具は短くて言いやすいの。それになんだかしっくりくる。だから、魔法具なの。
エレが勝手に決めたけど、これを作ったフィルはいやなのかな。魔法具。
「うん。魔法具の起動確認するから、リビング行こ」
「みゅ!」
気に入ってくれたみたいなの。魔法具。
「ゼロも行くの」
「ああ。エレシェフィールが初めて設計した魔法具。どんなのか楽しみだな」
「……うん。楽しみにしておいた方が良いと思う。楽しみの段階から出ない方が」
「……ん?やばいもんでも作ったのか?」
やばいもんなんて作ってないの。エレはちょっぴり、自分の欲に素直になったものを設計しただけなんだから。それがやばいもんなわけないの。
ゼロがエレに疑いの眼差しを向けてくる。エレを疑ってくる。
やばくないのに。
エレは疑われる要素なんて存在しないのに。
「行けば分かるの!エレを疑うななの!」
ゼロを強引にリビング連行。エレが、証明してあげるの。何もやばいもんなんてないんだって。




