謎な孵化
試飲会の食器選びをするエレなの。イヴィが候補を出してくれているから、エレがその中から選ぶ。とっても簡単なお手伝いなの。
まず一つ目は、真っ白いシンプルな食器。ちょっと味気ない気もするの。でも、今回の試飲会がどんな感じなのかっていうのがあると思う。それに合わせて、食器も選ぶの。
ここについてからそう決めたの。
「ゼロ、試飲会はどんな感じなの?」
「楽しく?柔らかく飲みやすいを重視した紅茶の試飲」
「ふみゅ」
次は会場の装飾とかを見るの。会場の雰囲気も大事だと思うから。
雰囲気は、ちょっぴり可愛らしい。でもシンプル。可愛らしいシンプル。白とピンクと空色。
なら、食器もそれで合わせるの。
という事で、食器選びに戻るの。
一つ目の、真っ白いシンプルな食器は、今回の雰囲気よりシンプルすぎるの。だから、またの機会にご参加くださいなの。
二つ目は、派手な花柄。黄色の食器。もっと派手な雰囲気だったら、これで良かったと思うけど、今回は雰囲気に合わないから、またの機会にご参加くださいなの。
三つ目は、薄い空色の食器。金色の線が入っている。底が薄いピンク。こ、これは、今回の雰囲気に良いと思うの。今回はこの子で決まりました。
他の子も、雰囲気に合わなかっただけなので、気を落とさず、またの機会にご参加ください。
「これなの」
「承知しました」
「エレシェフィール、次はお菓子選んでくれ」
紅茶のお供なら、エレはケーキ一択なの。ケーキの中でも、フルーツタルト。
「フルーツタルトなの」
「本当に好きだな」
「ゼロの手作りなの」
ゼロはお菓子作りが得意なの。お料理自体も得意なの。
だから、とっても楽しみ。
「これ以外にお手伝いがあるの?」
「エレシェフィールが手伝える事はこのくらいだな。ここまで距離あるから、少し休憩してけ。紅茶淹れるから」
「ふみゅ」
フォルを待たせてるから、早く帰りたいけど、途中で疲れて歩けなくならないように、休憩は大事なの。
エレは、ひと休憩してから、フォルのところへ帰るの。
**********
フォルのところ帰れたのは、夜なの。もう眠い。
「おかえり」
「ただいまなの。眠い。フォル、寝たい。おやすみ。でも、お風呂……フォル、入れて」
眠くて動きたくない。
「えっ……それは一人で」
「ゼロは呆れながらやってくれるの」
「……わ、分かった」
「フォル、無理なら断って良いぞ。本当に眠い時のエレシェフィールは、とことん何もせず甘えてくるから」
ゼロがなんだか、エレを悪く言ってる気がするの。でも、眠いから気にしない。眠い時って、何も考えたくないの。
「……やるよ。エレシェフィールの世話、いつもゼロに任せっきりだから。でも、ゼロ、一緒じゃだめ?」
「良いけど、俺いて何か変わんのか?俺に任せるなら、変わるが」
「できなかったら手伝ってもらうかもだけど、全部任せはしないよ。ゼロと一緒が良いのは、手伝ってもらえるとかじゃなくて、一人だと……その……」
「……昔の事か?」
昔?
ちょっと気になるの。
「ううん。普通に恥ずかしい。だって、初恋で、今もずっと好きな相手だよ?この年齢になっても、まだ平気なわけないから」
「ああ。そっちか。エレシェフィールを相手にするなら、そういうのは慣れねぇとだろうな」
「えぇ。ちょっと無理かも」
「ぴゅにゃ⁉︎ふぇぇぇん」
フォルにきらわれたかも。フォルがエレをむりって言うの。きらわれたかも。
「……毎日でも一緒に入って良いです。エレシェフィールがそうしたいなら、そうさせてください」
「みゅ?なんか、エレが言わせてる感があるの」
「……そんな事ないよ。ほら、眠いなら、早く入って寝ようよ」
「今日は人肌が恋しい気分だから、ゼロとフォルとフィルと寝るの」
「フィルは今日帰って来れないって」
それは仕方ないの。エレは、フィルは諦めることにするの。ゼロとフォルで我慢するの。
「じゃあ、ゼロとフォルで我慢するの」
「そうしてくれ。フォル、エレシェフィールを風呂入れよう」
「うん……」
エレはお風呂入ってきてから、明日の朝までお休みなの。エレのお風呂は内緒なの。
**********
おはよ。エレは元気な朝なの。お隣にゼロとフォル。エレ何してこうなったんだろう。眠すぎて覚えてないの。
「おはよ……エレシェフィール」
「ふ、ふみゅ。お、おはよ。なの」
エレ、きっと、眠くてここで寝ちゃっただけなんだと思うの。それ以外は何もないと思うの。きっとそうなの。そうだと信じたいの。
「ぷみゅ?なんだか生あったかいの」
「……なんで?」
「ふぇ?ふぇにゃぁ⁉︎にゃんで⁉︎」
何もしてなかったのに。何もしてないのに生まれたの。二匹も生まれたの。
深緑の小型龍は、きっとイヴィなの。桃色の小型龍はきっとリリフィンなの。今回本当に意味不明。エレは楽しく食器選びをしていただけなの。その後、フォルが寂しがっているって思って、エレも疲れてるって思って、すぐに帰ったの。
帰った?フォルに会いに行った?
なのに、朝起きたら、生まれてるの。本人いないのに生まれてるの。
謎なの。とっても謎なの。この謎はどうやって解決すれば良いのか分かんないの。
「……また僕じゃない」
フォルが拗ねそうなの。で、でも、エレは、エレにはどうする事もできないの。エレが、誰もを産みたいって言ってそうなるものでもないから。
だから、そんな、残念そうな顔をされても、拗ねようとしていても、エレがどうする事もできないの。
エレはどうすれば良いんだろう。どうすれば、フォルが笑顔になってくれるんだろう。
「エレシェフィール、次は名前どうするんだ?」
ふにゃ⁉︎
考えてなかったの。どうするか考えないと。生んだからには、大事にするの。可愛がるの。そのためにも、名前考えるの。
「ぴにぃときゅりゅ。二人とも、ご主人様に会いたいでしょ?会いに行って良いよ」
きっとご主人様の側にいたいと思うの。だから、イヴィとリリフィンのところへ行かせてあげるの。その方が、人格形成だっけ?にも良い気がするの。
「フォル、今日も魔法研究するの。ゼロは忙しそうだから、二人で……ぷみゅぅ……三人の方が……」
エレが安心するの。でも、フォルは、二人だけの方が良いかもしれないの。
「ゼロ、暇?」
「そうだな。俺が準備する分は終わってるから、エレシェフィールの相手してても大丈夫だ」
「……帰る?」
「今日まではいる。その方が良いだろ?」
「うん。その方が良い。なんならずっとでも良いよ。というか、この際みんなで一緒に暮らさない?その方がエレシェフィールも安心するんじゃないかな?」
エレは……みんなと一緒の方が楽しいとは思うけど、安心は良く分かんない。でも、フォルと一緒にいるのは安心かも。
フォルは、きっと見ていないとまた無理するから。だから、この際、誰かが必ず面倒見れるように、一緒に暮らすのもありなんじゃないかなって思うの。
……みゅ。良い事思いついちゃったの。
「ゼロ、エレが、みんなで一緒に暮らせるように言ってくるの。お家とお部屋の準備は、任せるの。ふっふっふ」
エレが一人で言いに行けば、フォルに知らせずに、フォルの面倒見る隊を結成できるの。
「でも、迷子にならない?」
「みゅ⁉︎ふにゃぁ」
「りゅりゅに頼めば良いだろ。それなら迷子になる心配はないから」
「ふみゅ。りゅりゅにお願いするの。それで、みんなに言いに行くの。早速お出かけしてくるの。フォル、エレは遅くなっちゃうかもだけど、良い子でいるの」
「……うん」
ちょっと寂しそうだけど、ゼロがいるから大丈夫だと思うの。
という事で、エレはフォルのためにも、面倒見る隊を結成しに行くの。
いってきます。




