小型龍三匹
フォルをいっぱいおやすみさせるって言ってたのに、遊んでるの。楽しそうなの。ちなみにリリフィン帰ったの。
「アディ、エレのお相手するの。エレはみんなの事が知りたいから、エレにいっぱい教えるの」
「おぅ、いいぜぇ」
新しい卵を孵化するためにも、いっぱいみんなの事知るの。
「ゼムも。ゼロとオジュフォーレは、フォルのお相手よろしくなの」
フォルのお相手してくれる人は必要なの。だから、孵化してるゼロと、孵化してないけど、オジュフォーレは、フォルのお相手を頼んでおくの。
「二人のすきを知りたいの。すきな景色とか色々」
「オレは、寒いところが好き。氷の景色とかも」
「俺様は、逆だなぁ。暑い場所が好きだ」
真逆な二人なの。真逆でも、仲良さそうなの。
何か秘訣みたいなのがあるのかな。それは、もっと一緒にいれば分かる事だと思うの。
「エレは、ゼムとアディをすきになりたいの。もうすきだけど、えっと、愛したいの。家族愛なの」
「エレシェフィールはみんなの妹?」
「ふみゅ。エレはみんなの妹なの。妹だから、いっぱい甘えるの」
「うん。いっぱい甘えて良いよ」
甘える。妹。ゼムって、ゼロよりもおにぃちゃんって感じがして、甘えればいっぱい甘やかしてくれそうなの。
それに、エレの成長を秘めてくれそうなの。
アディは、エレの事を守ってくれる系おにぃちゃん。
「エレは、迷子になりやすいの。だから、エレが迷子になったら、みんなに見つけて欲しいの」
「当然だ」
「オレも、探す。見つける」
「俺も俺も」
「私も同じです」
みんな優しいの。ぽかぽかなの。なんだか、とってもぽかぽかなの。
「……」
これだけの事なのに、こんなにぽかぽかなの不思議。
「僕は、君が呼んでくれれば、どこにいても見つけてあげる」
フォルはなんだか恥ずかしいの。どきどきなの。ぽかぽか違うの。どうしてフォルだけなの?
「僕の事、信じてくれる?」
「ふ、ふみゅ。信じるの。エレはフォルを信じるの」
フォルはきっと、エレがどこにいたって気づいてくれるの。
「そ、そういえば、良くない魔法ってなんなの?魔法のお勉強のためにも教えて欲しいの」
秘技、お話逸らし。
「……今の君は小型龍を生み出すだけ。それ以上の何かを生み出す事はできない」
「ふみゅ。小型龍……りゅりゅみたいな子を生み出すくらいしかできないの。エレのその魔法は、そのくらいじゃないの?もしかしたら、魔物くらいは生み出すかもしれないけど」
龍じゃなくて小型龍だから、大きなものは生み出せないんだと思うの。でも、フォルの言い方だと、それだけじゃなさそう。
「……僕らのように、世界を簡単に滅ぼせるような存在も生み出すことができる。しかも、エレシェフィールの感情に影響を受けているから、僕らのように世界を滅ぼさないようにするなんて考えはない。それがどれだけ危険なのか。そのくらいは分かる?」
「ふみゅ」
エレには、世界を滅ぼせるような魔法はない。そんなふうに思ってた。そんなに危険な魔法を使ってるなんて思ってなかった。
「そんなに心配なさらずとも、私共が、そうさせません」
「俺らが、エレシェフィールが楽しく過ごせるようにしてやる。そうすれば、そんな感情を抱く事なんてねぇだろ」
「たのしぃ事なら、俺様に任せなぁ。俺様が、愛姫に楽しいとしか思わなくさせたる」
「オレも、エレシェフィールが安心して楽しめるようにする。困った事は気軽に相談できるようにする。だから、そんな不安そうな顔をしないで?」
みんな、優しいの。とっても優しいの。
ぽかぽか。とってもぽかぽか。エレはここがだいすきって思えるぽかさなの。
ぽかさになって、エレは眠くなってきた。
「ぽかぁ」
なんだか、ぴきぴき聞こえるけど、気にしないの。エレはねむぅってなって、ねむねむさんで、寝るの。
「また生まれた。しかも三匹……白銀と桔梗と深緋……ゼム、オジュフォーレ、アディか?」
ふにゃ⁉︎
孵化したの!
突然の孵化なの!
エレが知らないうちに孵化したの。名前決めないと。
「ゼムの子がみゅにゅ。アディの子はぴにゃなの。オジュフォーレの子は、ぽにゃるにゃ」
良い名前なの。みんなもきっと気にいるの。きっと喜んでるの。
「……みゅにゅ」
「よろしくなぁ!ぴにゃ」
「ぽにゃるにゃ、本日より、共に過ごす仲です。色々と話しましょう」
みんな気に入ってるみたいなの。
「……僕は?」
「みゅにゃ?」
「エレシェフィール、僕の事だけ、愛してくれないの?好きじゃないの?」
エレも謎なの。どうしてフォルだけ孵化しなかったんだろう。
ぽかぽか違ったからなのかな。
「分かんないの。フォルは、ぽかぽかじゃなくてどきどきだからかもなの」
「エレシェフィールって、いつになったら自覚するんだ?」
「この感情が何か分かってないだけじゃない?」
この感情が何かって、どきどきじゃないの?
それ以外に何かあるのかな。
「エレシェフィール、少し手伝って欲しい事があるんだ。手伝ってくれるか?」
「ふみゅ」
ゼロのお願いだから、なんでもお手伝いするの。いつもお世話してもらっているから。こういう時に恩返しするの。
ついでに褒めてくれれば嬉しい。
「エレシェフィール、またここきてくれる?寂しい」
「ふみゅ。ゼロのお手伝い終わったら来るの。一人でも来るの」
寂しそうなフォルのためにも、がんばって早くお手伝い終わらせるの。それで、フォルを笑顔にさせるの。
こんなにフォルの事考えるのに、孵化しないのはどうしてなんだろう。
理由が分かれば、どうにかできるかもしれない。
でも、理由は分かんないの。
今はとりあえず、他のみんなの小型龍を孵化させながら、フォルの小型龍も孵化できるようにがんばるの。
「ゼロ、ゼロの他に誰かいるの?」
「イヴィとリリフィンと一緒だ」
お手伝いしながら、二人の小型龍の孵化もがんばるの。
「……フォル、エレがいない間、寂しくないように、ゼム達に相手してもらうの。ゼム達は、フォルが寂しくないように相手しておくの。でも、無理させちゃだめなの。エレ、早めにお手伝い終わらすから待ってて」
「うん。寂しいけど、待ってる」
「……フォル、そこまでして、エレシェフィールに好きになって欲しいのか?」
「僕は好きになって欲しいなんて思ってない。僕はエレシェフィールが僕に恋して欲しいとしか思ってないから」
……これは、いつもフォルじゃないの。いつからか分かんないけど、いつものフォル違うの。
これはきっと、あれなの。前になったあれなの。魔力の影響でとかっていうあれなの。
エレは警戒した方が良いかもしれない。でも、今回は、そんなに警戒必要に思えない。
なんていうか、いつもは閉じ込めているのを、言っているだけって感じがするの。
「……エレシェフィール」
「みゅ。エレは、今日もここに泊まるの。フォルが、もっと元気になるまでは、ここに泊まるの。フォルに寂しい思いなんてさせない」
エレもちょっと寂しくなってきたけど、我慢なの。
「ゼロ、早く行くの。エレ、どんなお手伝いでもがんばるから」
「難しい事は頼まねぇよ。候補はあるんだが、エレシェフィールが一番気にいる食器が良いって事になって、選んで欲しいだけだ。ついでに、お菓子も用意しておこうと思うから、そっちも選んで欲しい」
エレは食器とかは、あまり意識してみた事ないの。でも、エレがすきって思ったので良いって言ってくれるから、これすきなのって思うのを選べば良いから、楽なのかも。
「ふみゅ。選ぶの」
「ああ」
「ところでどこなの?」
「本邸。俺らが普段いるのは別邸だから、少しだけ離れてるんだ」
エレが保護された時に少しだけいたの。とっても広い場所。
ここからだとちょっと離れてるけど、エレはがんばって歩くの。




