お預かり
エレ、なんだかおかしいの。何がおかしいっていうのは分かんない。でも、おかしいって思うの。
「快適ー」
「なんで何も進展してないんですか。せっかく、二人っきりにしてあげたというのに。もっと積極的に行ってください。今から、フォーリレアシェルス様の部屋に突撃です」
とっても快適で、ゆっくり過ごしていたら、りゅりゅが出てきた。なんだか、ご機嫌斜めなの。理解不能なの。
というか、なんでエレがフォルのお部屋に潜入しないといけないの?
フォルは今おやすみ中なんだから、お休みさせておくべきなの。エレがお邪魔するのは悪いの。
だから、エレは寝る事にします。
「エレシェフィール様、行きますよ。拒否はだめです。強制です」
「フォルだっておやすみしたいの。だから、寝るの」
「そんなんじゃ何も進展しません。早く行きます」
これじゃあ、うるさくて寝れそうにない。ちょっと行って帰ってくればりゅりゅも満足すると思うから、仕方ないけど、フォルのお部屋に行ってくるの。
でも、フォルのお部屋にどうやっていくんだろう。迷子になりそう。
「りゅりゅが案内します」
「ふみゅ」
エレは、ちょっぴり眠いけど、フォルのお部屋に向かうの。
**********
フォルのお部屋の前に着いたら、どきどきなの。なんでこんなにどきどきなんだろう。分かんないの。
「お邪魔しますー」
りゅりゅがしっぽを器用に使って扉を開けたの。本当に強引なの。
「フォル⁉︎」
フォルが倒れてるの。走ってフォルの方へ行くの。
「……エレシェフィール?」
「エレシェフィール様、フィージェティンルゼア様を呼びに行く間様子を見ててください」
「だめ、フィルに伝えない、で。心配、かけたくない」
どうすれば良いんだろう。フィルに伝えるのが一番良いと思うけど、エレ、フォルの心配かけたくないって分かるから。
できれば、フォルのお願いも聞いてあげたい。でも、エレじゃ、どうにもできない。
「……エレシェフィール様、側にいてあげてください。しばらく安静にさせておけば良くなると思います」
「みゅ。フォル、ベッドまで行ける?」
「うん。ありがと。言わないで、くれて」
「りゅりゅは、お二人のしあわせを願ってるだけなので。お二人の良い雰囲気を壊すような事はしませんよ」
良い雰囲気ってなんだろう。りゅりゅって時々良く分かんない事を言うの。
フォルは、一人でベッドまで行けるみたいだから、エレは、扉を閉めてからベッドに行くの。
「りゅりゅ、フォルは……」
「昔から身体が弱いのに働きすぎなんです。加護の調整を毎日のように一人でやっていたからでしょう」
「……」
「みゅ。フォル、今日はエレが一緒に寝るの。エレは、ぎゅぅして寝ないと寝れないから。ぎゅぅして寝てあげる」
「うん。ありがと」
いつも、エレ達のためにがんばってるの。だから、エレも、フォルのためにがんばるの。恥ずかしいけど、ぴにゃぁって逃げたいけど、側にいるの。
エレが看病するの。
「エレがいるから、安心して寝て良いの」
ゼロは良く、エレのおでこにちゅってしてくれるの。それをやってくれると、安心して寝る事ができるから、エレも真似してみる。
ちゅっ
って。とっても恥ずかしいけど。
でも、がんばった。
「……っ⁉︎えっ?えっ?急に、どうしたの?」
「顔真っ赤なの。お熱」
「君が変な事、する、から!」
エレは、ゼロにしてもらうと安心する事しただけなのに。だめだったのかな。
「……ごめんなさい」
「謝んなくて、良いよ。驚いただけ、だから」
「ごちそうさまです」
「……エレシェフィール、あったかい」
「ふみゅ……ふぁぁぁ」
眠い。フォルの様子見ておきたいけど、眠い。
おやすみ。
**********
どこだろう。とってもきれいな場所。真っ白の中に、ぴかぴかといろんな色の光がある。なんだか、懐かしい。
「卵?」
二十二個の卵がある。これって、みんなと関係があるのかな。
数が同じだから、気になる。
何個かちょっと孵化しそう。でも、まだ孵化できない。これって、りゅりゅが言っていた、小型龍の卵なのかな。
エレの力って言っていたけど、こんな感じで生み出されるんだ。
「これ、ゼロみたい」
孵化しそうな卵の一個が、ゼロみたいなの。どうしてそう思ったのかは、エレも分かんないけど。
「やっと、繋がれた」
きれいで可愛い女の子なの。会った記憶はないけど、知ってるの。ずっと、守ってくれていたから。
「世界様」
「うん。あなた達が、世界と呼ぶ存在。シュメア。あなたがつけてくれた、わたしを表す名前」
「シュメア」
「うん。久しぶり。ずっと繋がれなくて、心配だった。でも、杞憂だったみたい。ちゃんと、出会えたのだから」
「ふみゅ?」
「それに、愛を育んでいる。恋心まで、今は無自覚でも、覚えてきてる。この子達はまだ、生まれてないけど、生まれそうな子がいる。それは、世界に必要な事。きっと、エレシェフィールにも」
エレに必要な事は良く分かんないの。
そんな事より、この子達は、どんな性格なんだろう。早く生まれてきて欲しい。
「わたし達が、世界に人の子を産んだ時の話。人の子は愛を持たず、争い続けていた。二度目に産んだ人の子には、特別な力が宿った。その人の子達が大事にしていたのが、愛。愛は、その人の子達を選んだ。その人の子達が愛を選んだ。それは、わたし達も知り得ない事」
創世記に出てくるお話なの。エレは、良く知らないけど。
「エレシェフィール、あなたなら、世界に愛が必要という理由を知り、愛を与えられると信じてる」
「みゅ。良く分かんないけど、エレは、愛姫としていれば良いの。きっとそうなの」
「そうだね。エレシェフィールは、愛姫であるという自覚だけしていれば良いよ」
「みゅにゃ。愛姫として、フォルが良くなるように、いっぱい面倒見るの」
ぴかぴかが消えてるの。これなんなんだろう。とっても眩しい光に包まれるの。
**********
ふみゅ。夢だったみたい。でも、もしかしたら、ただの夢じゃないかもしれないの。もしかしたらではないかも。
「朝なの」
「だめ。側に、いないと」
寝言なのかな。エレに離れて欲しくないのかな。
これは、エレが側にいないと。
「そろそろかとは思ってたけど……ありがとう」
フィルなの。フォルが隠したがってたのに。寝てるだけって誤魔化せばいけるかな。
「おれが休めって言っても、中々休んでくれなくて。いつもこうなるんだ」
初めから全部気づかれてたの。エレが誤魔化すのはできないの。
「ぷみゅぅ」
「……フィルに隠し事なんてできるわけなかったか」
「常に共有状態でなんで隠し事できると思ったのかの方が知りたい」
共有?魔法なのかな。フォルが良くなってから聞こ。
「……エレはお邪魔だから、帰るの」
「帰んないでよ。側、いてくれるんじゃないの?」
か、可愛いの。これが、可愛いって言うんだって感じなの。
兄弟水入らずっていうの方が良いと思うけど、フォルのお願いは断れないの。こんなに可愛いと断るのは罪悪感がとってもすごいの。
「います。エレが側にいるの」
「嬉しい」
フォルの笑顔を見ると恥ずかしい。逃げたいけど、フォルが寂しくなっちゃう。
エレは、逃げたくても、逃げずにフォルの側にいるの。
「今日はこっちにいるから休め」
「加護の調整」
「エレがやるの。フィルに教わって」
「おれがやる。エレシェフィールは、フォルの様子を見といて。エレシェフィールが側にいるだけで安心すると思うから」
エレがいるだけでそんなに安心するものなのかな。フィルが一緒の方が安心すると思うの。エレがいても何もできないから。
「安心する」
「みゅ」
「手、繋ぎたい」
「……みゅ」
どきどきなの。エレ、フォルが良くなるまで看病できないかもしれない。
「……あったかい。エレの手、安心する」
「ぴにゃぁ」




