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話し合い


 今度の集まりの前に決めておきたい事があって、予定が空いている王達に、きてもらうように頼んだ。


「忙しい中集まってくれてありがと。今日は、エレシェフィールの守り手を決めたいんだ」


 エレシェフィールの安全のためにも、ほんとならもっと早くに決めておきたかったけど、色々あって、決められてないんだ。


 予定が合わないとか、加護の調整とかで。


 しかも、半数以上が予定の空いている日が、集まり前だと今日以外見つからなかったんだ。だから、今日決めないといけない。


 遅くなった上に、何日かに分けようと思っていものを全て今日一日でやらないといけない。


「守り手は、ゼムとフィルで良いのでは?誰も反対はしないでしょう」


「自分も、それが良いと思います。愛姫様も、その方が安心でしょう」


「ムもさんせ。一適任」


「ムームニルは、自分も賛成。一番適任と言ってる。ボクも賛成」


「俺様も賛成だ」


 反対はいないけど、これは、本人の意思も必要だと思うんだよね。一応聞いてみるか。無理とは言わないだろうけど。


「二人はそれで良い?」


「良い」


「オレも」


「なら、決定で良いか。なら、次」


 集まるまでに決めておかないといけないのは、五つ。全部決められれば、それが一番だけど、決められなかったら、集まりで決めるしかないかもしれない。でも、絶対に集まり前に決めておかないといけないのもある。


「集まりだというのに会場を決めてない。ついでに、準備を誰がやるかも。ほんと、これだけは、今決めないと」


 最近、連絡もあんまりとってなくて、決めてなかったんだ。普段は、もっと前に決めているのに。


「俺が準備する。会場の方も、俺が用意する」


「ありがと、ゼロ。それと、次の集まりで季節替えになる。そこで、季節に合う食材を仕入れて、エレシェフィールのために、食事会を開きたいんだ。秘密で。でも、おんなじのばかり仕入れるなんて事にならないように、誰が何を仕入れるか決めておきたい」


 エレシェフィールへのサプライズというのもある。でも、それ以上に、エレシェフィールに、みんなの事をもっと知ってもらう目的がある。


 最近、みんなエレシェフィールに会いに行っているけど、決まったペアで行くのが多いから。いつものペア以外にも、仲良しってとことか見せてあげないと。


 それに、みんなが一緒だと楽しいってもっと思ってもらいたい。


「被ったら罰ゲーム」


「それ良いね。それなら、誰が何を仕入れるか決める必要ないから次」


「今日は早いな」


「このくらいでいかないと。次は、ゼロの新作紅茶の試飲会。ゼロがどうしてもやりたいって言うけど、みんながどうしたいか聞きたい」


 というか、さっきから思ってるけど、話し合いになっていない気がする。


 まぁ、簡単に決まってくれるならそれで良いんだけど。


「カップなどの準備を任せて欲しいです」


「イヴィが用意してくれるなら、食器だけでも、楽しめそうだな」


「紅茶と言えば、お供のデザートだなぁ」


「自分が用意しましょう。ケーキで良いですか?」


「ああ」


 勝手に進んでく。


 反対がなくて、ゼロが嬉しそう。


「詳しい事は後で決めて。これで最後、この前の加護の調整で、他の場所まで影響が出ている。今は悪い方の影響じゃないけど、ほっとくと、どうなるか分からない。今のうちに対策をしておきたい」


「一番重要な事最後に持ってくなよ」


「重要?あの人がちゃんとみんなで考えろって言うから言ったけど、こんなの、こっちで、調整していけば良いだけだから。後で、頼めば良いだけだから」


 エレシェフィールのための食事会の方が重要な気がする。


 加護の話は、ほんとに、話し合う必要すらないから。


 そもそも、話し合って解決する事でもないから。


「言ったから、話し合い終わり。ゼロ、あの子はどうしてるの?」


「大人しくしてるだろ。昨日そう言ってたから」


「……終わったから会いに行こうかな」


「会いに行くんじゃなくて、しばらく預かってくれ。集まりと食事会と試飲会の準備は全部俺らでやっておくから。エレシェフィールが最近、俺といると一緒に寝ないと不貞腐れるんだ。だから、しばらく、離しておけば、一人で寝てくれるかも」


「そういう事なら。僕は加護の調整をしておかないとだから、任せるよ」


 エレシェフィールは今何をしているんだろう。終わったから、早く会いに行こ。


      **********


「エレシェフィール」


「エレなの!……みゃ⁉︎なんでもないの」


 エレシェフィールが、寂しそうに、布団にくるまってる。


「フォル……みゅぅ。ゼロまだなの?」


「うん。ゼロは、しばらく忙しいから、しばらく預かってくれって頼まれたんだ」


「ふぇ⁉︎ふ、ふみゅ。よ、よろしく、お願いします」


 もじもじしてるエレシェフィールが可愛い。こんなに可愛いと、いたずらしたくなる。それで、離れられたくないからしないけど。


「よろしく」


「……恥ずかしいの。だから、エレのお部屋欲しいの。フォルとは一緒に寝るの恥ずかしい」


 ゼロとは良いんだ。これは、喜ぶべき事なのかな。少しは意識してくれているって事だから。


 エレシェフィールが、頬を赤く染めている。


「……これ」


 僕、だよね?


 絵が、額縁に入れて飾られてる。


「ふぴゃにゃ⁉︎こ、これは、ち、違うの!ゼロに描けって言われて、上手に描けたから記念なの!」


 慌てて否定するなんて。それだと疑われるって思わないのかな。


「そうなんだね。上手だよ」


「ふみゅ。ありがとなの。お花畑のためにいっぱいがんばってるの」


「うん。楽しみにしてる」


 エレシェフィールが、他の理由で飾っているかもしれないけど、そこを聞くのはしない。あんまりそういう事ばかり言ってると逃げられるかもしれないから。


 それにしても、想像力も記憶力もあるのに、なんで成功しなかったんだろう。魔法の方も問題なかったのに。


「……フォルのお家って事はフィル一緒だから、安全」


「安全じゃない事があるの?君にとって何が安全じゃないの?」


「……分かんないの。じゃなくて、秘密なの。エレは、安全性の高い場所でゆっくりしているの」


「残念だけど、フィルは忙しくて、僕一人だよ?」


 フィルは、集まりの前にやる事があるってこの前言っていたんだ。だから、しばらく帰れないかもって。


 ゼロがエレシェフィールを預かって欲しいと言わなかったら、僕はしばらく一人になっていたんだ。フィルはかなり心配していたけど。


 仕方がない事なんだけど、過保護なんだよね。


「……ぴゅにゃ。が、がんばるの。これはきっと、お嫁さんになる前に、どれだけ生活力あるか試されるの」


 思い込み激しいというか、それ望んでるのかな。いつからこんなふうに思ってくれるようになってたんだろ。


 というか、エレシェフィールに生活力なんて求めてない。一人で可愛らしく、がんばろうと意気込んでいるけど。ゼロに聞いているから。エレシェフィールが、いまだに何もできないとか。


 それがあるから、ゼロがわざわざ僕に頼んできたんだろうけど。


「……りゅりゅ防御なの。なんだか、恥ずかしくなってきたから、りゅりゅ防御なの……りゅりゅ?」


 僕が来た時に、りゅりゅが帰ったの気づいてなかったみたい。エレシェフィールが、りゅりゅを探している。


 でも、りゅりゅならエレシェフィールが呼べばどこにいても来れるはずなんだけど。なんで来ないんだろう。

 りゅりゅがいればエレシェフィールが安心するのに。


「……ふぇ?おしあわせに?みゅ?分かんないけど、エレの味方言ってたのに裏切ったのー!裏切り者ー!」


 えっ⁉︎


「……フォル、顔赤いの。お熱あるかも」


「大丈夫だよ。それより早く行こ。夜になると冷えるから」


 りゅりゅが余計な事言っていたのをエレシェフィールが全部漏らすから。意識してまともに顔見れない。


 普段は、守らないといけない可愛い女の子くらいにしか思わないようにしてるのに。


 僕は、エレシェフィールと手を繋いで、帰路についた。


 その間ずっと、互いに顔を見れなかった。これ、この後大丈夫なんだろうか。

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